法定労働時間~労働時間シリーズその壱の巻~ | 労働法のポッケ~弁護士松崎基憲のゆるっと解説

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2016年に昇天した友達の犬 「ソラ」くん

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久々のブログ更新です!


今回から、何回かにわたって労働時間シリーズをお届けしたいと思います!


「労働時間」は、ちかごろマスメディアを通しても話題になっていますし、セミナーの講演依頼の多いテーマです。

労働時間に関する法改正の準備も進んでいます。




労働基準法第32条


労働者は、賃金をもらうかわりに自分の時間を切り売りして働いています。


その切り売りしている時間について、労働基準法は、第32条から第39条までの条文でルールを定めています。


働く者としても、働く者を雇う側としても、この労働時間のルールについて理解することが大切です。

 


今回は、そのトップバッター「法定労働時間」について説明します。
労働基準法第32条です。


労働基準法
第32条

1  使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2  使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。



上に書いてある通り、1週間で40時間、1日で8時間を超えて労働させてはいけません。


したがって、1日9時間働かせる(働く)ことは8時間を超えているので、原則として、できません。


8時間1分働かせることも、8時間を1分オーバーしているので、原則として、できません。



また、1日8時間の労働を繰り返して、週6日間働いたとします。

 

その場合、1週間で48時間働いたことになります。

 

したがって、1週間で40時間を超えているので、原則として、できません。


もちろん、40時間と1分働いた場合も、40時間を1分超えているので、原則として、できません。

※上の説明で「原則として」という言葉を多用していますが、それは、重要な例外があるからです。36協定による時間外労働です。36協定についてはあとで簡単に説明します。






犯罪行為

 


これらの超えてはいけない法定労働時間を超えて、労働者を働かせた場合には、原則として、その事業所の管理者や会社に犯罪が成立します。


刑罰は、6か月以下の懲役、または、30万円以下の罰金です(労働基準法119条1号)。



よくニュースで、違法な時間外労働で書類送検されたということを耳にします。


これは、上で説明した週40時間、1日8時間の法定労働時間のルールに違反した犯罪についてのニュースです。


書類送検とは、罪を犯した疑いのある者を裁くために、労働基準監督官が、事件を(事件の書類を)検察官に送る手続きです。


検察官は、受け取った事件について裁判に掛けて裁き(刑罰)を受けさるかどうかを決めます。


厚生労働省の発表資料によると、2016年10月~2017年4月までの7か月間の違法な時間外労働等による書類送検の件数は、全国で41件(公表された分)ありました。


話題になった電通の事件も、この件数に含まれています。





ソラくんその2


 

36協定


このように、週40時間、1日8時間の法定労働時間を超えて労働者を働かせると、原則として、犯罪が成立します(違法な時間外労働)。


しかし、例外的に、その事業所で36協定(サブロクキョウテイ)が締結されて労基署長に届出されている場合には、その36協定に従っている限り、40時間・8時間を超えても犯罪にはなりません。


36協定によって、本来違法な時間外労働が、適法化されるのです。

 


ただし、36協定があればすべての時間外労働が適法化されるわけではありません。


36協定による時間外労働は、「その協定で定めるところによって」行う場合に適法化されるだけです。

 


なので、36協定で定めた限度時間(時間外労働の上限値)を超えて時間外労働をさせた場合には、「その協定で定めるところによって」いないので、適法化されず、原則にもどって違法となります。

 


書類送検された多くの事件は、このような36協定の限度時間超過によって犯罪と認定されています。


※36協定の詳細については、別の回で説明します。





拘束時間、所定労働時間


・・・というわけで、法定労働時間について見てきましたが、せっかくなので、「拘束時間」と「所定労働時間」という用語についても、ここで説明しておきたいと思います。


労働時間についてより深い理解をするためには、役に立つ用語です。



「拘束時間」


拘束時間とは、就業規則等で定められた「始業」時刻から「終業」時刻までの時間です。


つまり、その日の仕事の始まりから終わりまでの時間です。


休憩時間も含まれています。


始業時刻が朝9時、終業時刻が18時、休憩が1時間の場合には、拘束時間は9時間ということになります。



「所定労働時間」


所定労働時間とは、就業規則等で定められた拘束時間から休憩時間を除いた時間です。


つまり、実際に働くことになっている時間です。


是非覚えたい重要な用語です。


始業時刻が朝9時、終業時刻が18時、休憩が1時間の場合には、所定労働時間は8時間ということになります。


この場合、もし終業時刻が17時とされていれば、所定労働時間は7時間です。





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ソラくんその3
 

 

 

さて、久々の更新でしたが、いかがでしたでしょうか。


読んでくれた人はいるのでしょうか?


良くわかりませんが、次回は、もっと大事なことを書く予定です。


今回は法定労働時間(40時間・8時間)を超えてはいけないということを書きましたが、超えているかどうかはどのように判断するのでしょうか。


つまり、労働時間のカウントはどのようにすればよいのでしょうか。


例えば、仕事が終わってタイムカードを切った後に、上司に言われて掃除を手伝った時間、

 

朝の始業のタイムカードを切る前に掃除をしなければいけないことになっている時間、

 

着替えの時間…

 

これらは、労働時間としてカウントする時間なのでしょうか?

 


もし、これらの時間を労働時間にカウントする必要があるならば、週40時間・1日8時間を超えているかどうかの判断にも影響してこないでしょうか。

 


ということを書く予定です!