ほめすぎたか… | 今日もひとこと、ほめてみた。

今日もひとこと、ほめてみた。

ほめるのは、ちょっぴりの勇気で、びっくりの展開。
日本ほめる達人協会 顧問 松本秀男

ちょうどこんな梅雨空の頃でございました。

 

 

私がさだまさしさんの事務所にいた時代に、妹の佐田玲子さんのマネージャーをさせてもらった時期もありました。

 

歌唱力も抜群で、兄譲りのトークも楽しい方。

 

 

当時、名古屋の東海ラジオで番組を持っていて、週に1度は名古屋に行っておりました。

 

 

泊まりの時には、栄あたりで食事をしておりましたが、ある晩一見で入った小料理屋さんでのこと。

 

 

三河地方ご出身の大将の作る料理はどれも美味しくて、

 

 

「美味しいですね」

 

「ん〜!うまい!!」

 

 

などと玲子さんと二人で盛り上がって食べておりました。

 

玲子さんもほめ達な方でした。

 

 

私たち二人がやけにほめるし、玲子さんは東海ラジオにも出ている歌手だと知ってか、

 

大将は頼んでもいない小皿まで出してくださいます。

 

 

そうなってくると、こちらもほめるに拍車がかかります。

 

 

「いや、最高ですね!」

 

「お店の造りもすてき!」

 

 

ほめられている大将も、ほめている私たちもご機嫌になっていきます。

 

 

で、私が、もうほめるところはないかしらとお店を見回したら、

 

棚の上に、キジの剥製が乗っておりまして。

 

 

「キジ?ですか、キレイなキジですねえ」

 

 

人生でキジに興味など持ったこともないのに、思わずほめてしまいまして。

 

 

「お!いいところ気づいてくれましたねえ。あれは私がしとめたキジで」

 

「え?猟もされるんですか?」

 

「たまに仲間と。獲れた時にはキジ料理もお出しできるんですけどね」

 

「そうなんですねえ!すごいですね大将」

 

 

大将はこだわっているところに興味をもたれたとさらにご機嫌になられて、

 

事件は起こります。

 

 

「よかったら、お持ち帰りください!」

 

 

ん?何を?キジを?

 

 

「…いやいや、こんな大切なもの!申し訳ないですから!」

 

 

玲子さんがあわてます。

 

 

「いーんですよ、また採ってくるし」

 

「いやいやいやいや!」

 

 

押し問答が続きましたが、結局成り行き上、持ち帰ることに。

 

 

で、さすが、猟とかされる方で、少し豪快で、

 

キジの剥製を何かに包むという訳でもなく、ヒョイと棚から下ろして、私に手渡し、

 

以上。

 

 

夜の栄の街を、小脇にキジを抱えてホテルに帰ります。

 

 

「あんた、それ、責任持ってね!(笑)」

 

 

玲子さんは爆笑しながら言います。

 

玲子さんは仕事の時は私を松本くんと呼びますが、私が高校生の頃からのお付き合いですので、飲んだ時など盛り上がった時には、家族のように「あんた!」と呼びます。

 

 

「いやいや、大将も佐田玲子が来たからってくれたんですよね?」

 

「違うわよ!あんたがほめすぎるからよ!(笑)」

 

「玲子さん、どうぞお部屋にお持ち帰りください」

 

「いやよ!うなされるわよ!笑)」

 

 

で、結局その夜は、ホテルの私の部屋にキジを泊めます。

 

 

翌朝、ロビーで集合。

 

私はキジを抱えて登場します。

 

 

「やっぱり、夢じゃなかったのね」

 

 

それを見て玲子さんはうなだれます。

 

 

当時まだ、宅配便でホイホイ荷物を送るとかいう習慣がなかった頃。

 

もしくは、それを思いつく脳が私になかった頃。

 

キジを抱えて名古屋駅へ向かいます。

 

 

「松本くん、あんた、近寄らないで!(笑)」

 

「いやいや、これ一人でキジ抱えて歩いてるなんてもっと変じゃないすか!巻き添えになってくださいよ」

 

「いやよ!なんでキジ抱えたマネージャーと歩かなきゃならないのよ(笑)」

 

「いいじゃないですか!なんなら、犬と猿も付けましょうか?」

 

「わたしゃ桃太郎か!(笑)」

 

 

で、新幹線に乗ります。

 

膝にキジを抱えるのもどうか、ということで、棚の上に乗せます。

 

新幹線の棚にキジ。

 

昭和の時代はいろいろ変なこともありましたが、まあ、新幹線史上でも、おそらく他になかった風景かと思います。

 

 

で、千葉の市川の佐田家へ。

 

当時の佐田家は、長崎からお父さんお母さんも出てきており、

 

さだまさしさんの名曲「秋桜」の縁側そのもののような、古い立派な家を借りて住んでいらっしゃいました。蔵まであるような立派なおうちです。

 

 

「僕のワンルームマンションにキジも似合わないし、どう考えても佐田家に飾るべきですよね」

 

「だめよ!うちのお母さんとか、こういうの苦手だから!(笑)」

 

「試しにそっと、茶の間のお母さんのピアノの上にでも置いておきましょうよ」

 

「私知らんけんね〜(笑)」

 

 

玲子さんも面白がりな方でございます。

 

 

で、茶の間のピアノの上のキジを見たお母さん(佐田喜代子さん)。どんな反応するのかドキドキして見ていたら、

 

 

「まあ、立派なキジ」

 

 

と言っただけで、それがどこから来たのか、なぜあるのかも聞かずに終了。

 

器も大きい、佐田一族でした。

 

 

 

今日もイイ日に。