親中ズブズブではUSスチールを買収できない?日本製鉄が直面する経済安全保障の壁:平井宏冶氏対談 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 日本製鉄によるUSスチール買収は経済合理性からみれば米国にプラスのはずなのに、なぜ、トランプもバイデンも反対なのか…どうもその真相は、大統領選を睨んだ労組対策といった政治的動機だけではなさそうです。多くの人々が見逃している盲点は、実は中国。平井宏冶氏がぜひ、このことで警鐘を鳴らしたいということで、対談に及んだ次第です。

 そういえば、新日鉄といえば、日本以上の大製鉄所、宝山製鉄所を上海に造り、その後も一貫して親中を続けてきた会社。今般のUSスチール買収提案発表の翌月には、日本の経済人180人を連れての媚中の中国詣でも…

米国にとって敵性国家である中国とズブズブの会社で大丈夫?と、あのCFIUS(対米外国投資委員会(The Committee on Foreign Investments in the United States: シフィウス)なら、経済安全保障の観点から考えないはずがありません。

 ある政治評論家が、米国は同盟国である日本を信頼できないというのかと怒っていましたが、ことはそんなに単純なものではない。もはや日本の経済界は、米国など西側も、中国も…などという甘い幻想を捨てて、経済合理性を超えたデカップリングという現実を見据え、思考の転換を図らねばならない時代になったことに目覚めるべき。あなたはどっちを選ぶんですか?と。

 日本を代表する企業でもある日本製鉄の在り方は、老獪なる中国にまんまと乗せられて取られるものを取られ続けてきたお人好し国家、日本の在り方そのものを象徴しているかのようにも見えてしまいます。

 先日、某非営利団体が主催する呉江浩・駐日中国大使を講師とする昼食会に出席してみましたが、言葉巧みに「中日友好」を強調しながらも、結局は彼らの身勝手な論理に日本各界の指導者たちを嵌めこもうとする意図が私には強く感じられました。

 そんな風にしてかつて稲山さんも周恩来に乗せられたのか…。その根底にあったのは対中贖罪意識だったとか…だから、歴史認識の見直しが本当に必要なのです。

今回の平井宏冶氏の警告には傾聴すべきものがあります。

 

◆「平井宏冶氏に訊く!”中国の影!?”どう見る、日本製鉄のUSスティール買収劇」ゲスト:経済安全保障アナリスト 平井宏治氏

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日本製鉄が米国の名門、USスチールを買収しようとしていることには、トランプ氏は反対、バイデン大統領も消極的。なぜか。

去年の12月、買収を発表、当然CFIUSが審査。先月、ブルームバーグが、米国政府が日本製鉄の中国資産を審査し始めたと報道。あらら…。

 

JPモルガン、カーネギーらが合併させてできた会社、20世紀は米国の鉄鋼といえば、USスチール。次々と企業買収して多角化。米国の10の州以外は、海外はスロバキアだけで事業展開している。

世界では粗鋼生産量で一位は中国の宝武製鉄で、ダントツにデカい。日本製鉄は第四位。上位10社のうち6社が中国。

なぜ皆が北米市場を目指すのか。➀米国は人口が増加、成長市場。➁先進国として付加価値の高い鋼材の需要が大きい、③グローバル化の反省から国境ある経済に、現地生産しなければならない。

 

ではなぜ、トランプもバイデンも買収に反対?日本製鉄は親中政策をずっととってきた。いちばん米国が気にしているのはこれ。宝武製鉄は宝山製鉄と武漢製鉄が合併してできた会社。この両方に新日鉄が深く関与。

 

1972年に日中国交樹立、この時に新日鉄の稲山さん、かなりの親中社長で、周恩来と面談。この時に、武漢製鉄所への協力を求められて協力を約束。空港で新日鉄を出迎えたのは毛沢東語録、製鉄所にはいたるところに共産党のスローガン、布の靴と質素な帽子、ヘルメットも技術も設備もほとんどない。

稲山さんには中国ヘの贖罪意識。これが日本の鉄鋼産業を誤らせた。

 

1978年に異次元の話が始まる。鄧小平が来日、新日鉄の君津を訪問、斎藤英四郎社長に君津と同じ製鉄所をくれと。日本は先生、中国は生徒だと持ち上げられた。総力をあげて協力、これ以上のものを作りましょうと断言。

そして、上海宝山製鉄所の建設が開始。述べ1万人を中国に新日鉄は送り込んだ。山崎豊子の「大地の子」にも出てくる。中国に製鉄所をつくるのに、自分の製鉄所をつくるかのように心血をそそいでしまった。その宝山と武漢が合併した。

 

中国の安定がアジアの安定につながる、技術協力して日本は一歩先を歩めばよいと、それが日本の3倍の製鉄所になった。周恩来と、へりくだる稲山氏の写真、まさに先生と生徒のような写真に。

 

その後も関係が続き、07年の社内報では、宝山30周年、パートナーシップを深めると。30年の友好関係を未来につなげると。緊密成熟した関係構築をと三村社長。HPに出ている。

日本製鉄の製鉄所は中国に9社ある。米国からみると、9つもある。USスチールは中国ゼロ。まずこう見るだろう。鉄鋼産業とは軍事産業、第二次大戦のとき、USスチールは八面六臂の活躍したとされている。これに対し、日本製鉄は宝山と武漢を立ち上げて中国の鉄鋼産業を育成した会社だ、と。

 

さらに悪手を打った日本製鉄。今年1月に日中経済協会が180人の経済人で中国を訪問。昨年12月に買収発表した翌月に行った、その団長が日本製鉄の現会長。彼が中国投資を約束して、日中互恵関係を確認したと。ズブズブと見られる。

なんで180人も?その団長がUSスチールを買うといえば、経済安全保障の観点からは、USスチールがその子会社になる。選挙云々ではない。買い手がどんな会社か、敵対国中国とどんな付き合いをしているかを見ていると思う。これはハードルが高くなったと感じる。

最先端技術の共同開発が中国に流れるし、中国の製鉄所でつくったものが、日本製鉄に入り、それを使って米国が軍艦や戦車をつくつて、止められたらどうするのかと、当然考える。だから国内でもう一回、買い手を探せとなる。

 

経済合理性からは日本製鉄なのに異論が出るのは、単なる心理的反発だけではない。同盟国を信頼しろと言っても反論されてしまう。

本当にUSスチールを買いたいなら、中国とは縁を切るぐらいのことがなければ。日本製鉄にとっては大きな決断を要する踏み絵。中国とも米国とも商売したいという経団連で支配的な考え方は少なくともM&Aをやる上では通用しない。

 

日本の経済界全体が路線転換を迫られている、デカップリングの中で中国か西側か、「旗幟鮮明」の時代になった。