学級崩壊の世界と日本に迫られる脱炭素原理主義からの脱却…政府の硬直性こそ最大の危機~対談:藤和彦 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 生徒たちが米国という先生の言うことを聞かなくなった「学級崩壊」状態が現在の世界だと喝破する藤和彦氏のこのたとえは、実にわかりやすいです。日本は名誉白人として褒められたい、先生の言うことを忠実にきく6人の優等生の中の模範生でいたいでは、もう通りません。新興国の台頭で中ロという「不良」?を中心に出来上がりつつあるBRICs秩序が、世界をコントロール不能状態へと導いています。

 さらに、世界屈指の産油国となった米国が中東から手を引き、この地域はカオスになる。今回、パレスチナが中東全体で大義を得て、第二のアラブの春すら起こりかねない。

そんな時、中東に原油のほとんどを依存する日本は、堺屋太一氏の「油断」を上回る深刻な事態に陥りかねません。ルールはそれを守らせるパワーあってこその「法の支配」。そのパワーなき多極化の世界に突入するなか、トランプ再選は日本が自立へと目覚める貴重なチャンスでしょう。

もはや世界ではオワコンになりつつある脱炭素原理主義を信仰し続け、石油などの化石燃料をオワコンとしてGXにしか関心が向いていない日本政府の硬直性にこそ、日本の危機がある。これを突破して、国益中心に日本の戦略を組み立て直す役割を政治に期待しないと、日本は存続できないかもしれません。これに真っすぐに応えようとしている国政政党が参政党なのだと、その使命を再認識させてくれます。

いまや米国という国家を使って世界を統治しようとしてきたグローバリズム勢力が衰退しようとするとき、新しい国際秩序に日本はいかに向き合い、総合安全保障を組み立てるか、事態はかなり緊迫していることに警鐘を鳴らす対談となりました。この藤氏の「大油断」、私も思わず引き込まれて読み通した見識高き書です。ご一読をお勧めします。

 

◆「藤和彦氏が警鐘! ”大油断”ー日本が陥る史上最悪のエネルギー危機ー」ゲスト:経済産業研究所主席研究員 藤 和彦氏

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 堺屋太一の「油断」を意識した「大油断」という本を出版した。石油が来なくなる「油断」を50年前と比べると、石油安定供給の意識がものすくごく低い。原油や天然ガスはCOPの中でオワコン?になっている。

 

●世界秩序は「学級崩壊」状態に

国際秩序が変動しており、現状は「学級崩壊」の状態。米国という国が存在するために国際情勢が悪くなっているとも言われる。これまでは、米国という先生がいて、6人の優等生がいて、クラスを仕切っていたのが、この7人(G7)の言うことを生徒たちはきかなくなった。中ロという不良がいて、サイレントマジョリティーが、俺たちは勝手なことをしていいのではないかと。その中でBRICs秩序ができた。

これはグローバルサウスを代表する国々。冷戦後30年間、先進国からのアウトソーシングで生産能力を持ってしまった。ものを創る力では、グローバルサウスが強い。経済制裁も、その力を借りないとロシアを制裁できない。これまで先進国が働きかける客体だったのが、発言権を持ってしまった。それが学級崩壊の一番の原因。グローバルサウスが中ロに接近。かつては7人が怖かったが…。最初にそれをやったのがインドやトルコ。米国の神通力は低下。

世界経済も混乱。中国経済は、リーマン以降の金融緩和と、コロナ以降のフリーマネーがはびこった中で、急にロシアショックで金利引き上げ。その中でバブル崩壊に。金融引き締めの効果は時間差で出る。今後、高金利への借り換えの時にドカンと出るだろう。中国は日本のバブル崩壊のときと同様、2022年に総量規制で一気にバブル崩壊。

 

●中国も米国も壊れている

米国も国内が崩れている。フォーリンアフェアーズのハース元議長が、去年の辞任のインタビューで、米国が世界最大の安全保障の脅威と述べた。大統領が分断。リベラルと保守、高学歴と高卒の人との分断など、いろんな面で分断。中絶問題をめぐっても。

軍隊も弱体化。ウクライナでも中東でも、米国人の命のコストが高く、腰が引けている。ウには武器しか出さないし、中東には空母を出したが、2隻目はすぐに帰ってきた。フーシ派に三人兵隊が殺されたらいきなり報復攻撃している。果たして米軍が日本を守ってくれるか。徴兵制をやめて志願制にしてから、リクルートに困っている。黒人とヒスパニックのマイノリティの貧しい人たちはジャンクフードで肥満化し、軍務に適する人が減少。兵士の自殺者も多く、一般人の4倍以上。

中国は改革開放に逆行してソ連のように。1920年代のレーニンのNEPのようだ。まずは経済を自由化して、困ったらもとに戻す。いまソ連と同じようになっている。クリントン政権時代以降の対中国政策は大失敗に終わった。

 

●米国が手を引く中東は大混乱の時代に…次なるアラブの春も

米国は中東を原油供給源として重視したが、現在、米国は1日2,000万バーレルの原油の需要、国内生産力は1,300万、輸入は600万、輸入先も今は殆ど、カナダ、ブラジル、メキシコだ。

中東側では、反米感情が高まっている。5万人の米国中央軍が中東に展開しているが、米国と同じぐらいロシアが頼りになるというのが、中東での調査。これは相当、米国が嫌われている証左。

20年のアブラハム合意でイスラエルとUAEバーレーンが国交樹立。トランプはアメリカファーストなので、中東から手を引きたいとして、米国抜きでの中東秩序を構築すべく、この合意に持ち込んだ。他方で中国が仲介して、サウジとイランが手打ち、最後はサウジとイスラエルが手打ちを、と来たが、それだとパレスチナは孤立してしまう。そこで乾坤一擲、イスラエルをハマスが攻撃し、それは成功した。元の状態に戻った。

イランはむしろ、フーシ派に過激な行動をとってほしくない。今回、サウジとイスラエルの国交正常化が断念されたので、これ以上、焦る理由がない。イランも持て余し気味。

米国抜きの中東では中東秩序は収まらないが、米国もコミットしたくない。だから、これから最も、中東情勢がおかしくなる。中東安定化のエージェントとしてイスラエルというのが米国の基本政策だった。それがもう原油は要らないとなり、中東地域がおかしくなりかねない。

いま中東で経済力が大きいサウジやUAEは、パレスチナ問題に関心がない。しかし、フーシ派がここにきてパレスチナが大事だと言い始めたので、アラブ地域でパレスチナ問題の大義が広がってきた。かつてはパレスチナ問題はエジプトとシリアの問題だったが、これをアラブ地域全体の問題にフーシ派がしてしまった。

これにきちんと対応していない中東各国に対する民衆の怒りが爆発し、政府に対する反発の声が中東地域で広がりかねない。アラブの春のような現象が起きるかもしれない。

トランプが大統領になると、米国にとってますます中東は関係なくなる。メキシコとの国境の方が大事。中東はカオスに。戦後それが起きてこなかったのは、日本にとってラッキーなことだった。

 

●米国という先生の言うことを聞いて名誉白人として褒められたいでは、国益は守れない

ルールを実施するには力が必要であり、力あっての法の支配。これからは米国が力を行使しない、ルールのない世界になる。学級崩壊の世界に。では、日本は?

エネルギー政策については、1930年代に日本は米国から原油の7割を輸入したのに、それが来なくなって大東亜戦争に。いまこそ原油は米国に依存すべき。今まではあまり依存せず、中東依存度が上がり、経済制裁でロシアからも輸入せずで、去年の半ばには中東依存度が95%に。その後、91%に。少し米国のシェアがアップした。日米原油同盟が必要だ。

日本はもう、自立するいしかない。安保も経済も。その方が長い目で日本の生き残りに資する。トランプ再選は覚まし時計になる。

脱炭素、太陽光、風力、再エネ、日本は自然環境上厳しい。風も安定していない。FITというとんでもないインセンティブ、パネルだらけだが、持続可能ではなく、やはり化石燃料、原子力と供給源の多様化を図るしかない。

脱炭素原理主義がここまでクレージーになるとは思わなかった。特にここ5年ぐらい。5年前は天然ガスぐらいはOKだったか、それまでオワコンになっている。英独でも起きているが、一般の生活を無視した脱炭素原理主義は困難に。より戻しが米国でも起きている。

日本では全てをグリーンにしていて、他の選択肢に目が向いていないが、脱炭素に補助金を数兆円出していても、石油へのケアはゼロだ。経産省でも、世代間の違いを感じている。寒い冬は石油がないと万単位の投資者が出る。まだ石油の時代だ。

EV?いま中国はスゴイ価格競争。大量の倒産。これも続かない。

日本は常にG7の中でほめられたい、名誉白人でいたい。しかし、バランスが大事、国益だろう。いまの政府の硬直的対応で、危機に弱い構造になっている。そこに危機の本質がある。その意味で「大油断」。

先生がにらみを利かしていた時は先生の言うことを聞いて優等生でいられたらよかったが、もはや先生に褒められようという優等生ではいられなくなった。日本にとっては厳しい選択。これから世界は個別のイシューごとに合従連衡していく時代。とにかく西側についていくでは取り残される。政治の主導で行政の硬直性を正して導いてほしい。