動画ろんだん@松田政策研究所㊱~安倍政権の総括的評価と残された課題~ | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

2012年12月に安倍晋三氏が率いる自民党が政権を奪取してから日本の憲政史上最長の7年8か月続いた長期安定政権の安倍政権。この政権は何をめざし、何を達成したどんな政権だったと位置付けられるのでしょうか。日本を国際社会の中心へと押し上げた安倍外交には華々しい成果がありましたし、安全保障面でも独立国として最低限の基盤の整備を進展させた内閣だったといえるでしょう。

他方で、これだけ長期安定政権でありながら、これだけ多くの課題を残した政権はなかったかもしれません。それは、掲げた課題があまりも遠大だったからかもしれませんが、自民党が国会の3分の2を確保しながら、その結党目的であり、安倍氏自身が最大の課題として掲げた憲法改正は、実質的な国会審議すら進みませんでした。なぜだったのか。他方で、経済再生や「新しい国づくり」はどうだったといえるのか。

ここでは松田政策研究所チャンネルで配信した有識者による評価として、歴史的観点から安倍政権を論じた西村幸祐氏、安倍氏の事実上のブレーンとして活躍した小川榮太郎氏、官邸や国際舞台で安倍総理と苦楽をともにした前内閣府参与の谷口智彦氏との対談をご紹介します。そして、国会で何度も安倍総理と議論を交わし、その後も応援者として政策論づくりを進めてきた私、松田学による評価についても、関連する番組を取り上げました。

 

Ⅰ.有識者たちによる安倍政権評価

●<対談>西村幸祐(批評家)「安倍政権とはどんな政権だったのか?」

7年8か月続いたこの政権とは、どんな政権だったのか。辞任表明後に国民の7割以上が「評価する」とした安倍政権、では、本来は安倍前総理が拠って立つはずだった保守派の立場からみてどうなのか、安倍政権は歴史的にどのような位置づけになったのかを、西村幸祐氏に論じていただきました。

あえて一言でいえば、「平成ニッポンの敗戦」の克服へと挑戦しながら、そのための匍匐前進が最初の3~4年の成果をもって止まってしまい、目的が未達成に終わった政権…。

国際標準からみて「中道左派」だった…

では、次の菅政権は?…長期安定政権になれるかどうかは二階氏次第。安倍総理が軸足を党内の親中、親米両派に置いた以上に、これからも菅-二階体制となる以上、保守派からの心配は募る一方かもしれません。

西村氏による、ぐっと深堀りした中身の濃い視点からの総括、そこから意外な論点が色々とみえてきました。

…朝日の世論調査71%が評価。朝日はびっくりしただろう。数字を替えて出すわけにもいかないので、小さな扱いの記事にしていたが…。フランスのルモンドが辛辣。途中で終わった失敗した政権…と。これはフランスの保守系メディア。逆に、サルトル創刊の極左に近いリベラシオンで書いていた記者は日本人だが、安倍首相はフィニッシュで倒れたマラソンランナーのようだと、より的確な表現。

匍匐(ほふく)前進で自分の理想に向けてやっていたのはわかる。最初の3~4年は輝かしい成果、しかし、それだけになってしまった。外交安全保障では今までの総理ではありえないことをやった。途中で前進できなくなり、匍匐したまま、進めなくなり、不完全燃焼。「平成ニッポンの敗戦」。昭和の敗戦の次に、第二の敗戦は22年前に文芸春秋に江藤淳が書いた。平成10年だった。安倍政権は、その敗戦を象徴する政権だった。

江藤淳の言う敗戦とは、勘違いも多いが、沖縄普天間基地の返還が日本の思惑通りに進んでいないなかで、米軍の日本への関与の仕方が広がり、日米安保が日本全体に広がったという意味での「第二の占領」。

たとえば金融がある。円の基軸通貨も米国に押しつぶされた。デフレスパイラルで日本だけが伸びていない、バブル崩壊の影響を解消できないていない。インターネット元年の95年、新しい産業の起爆剤とするようなイノベーションをしていない。ヤフージャパンが誕生したが、米国の日本法人でソフトバンクが創ったもの。NECや富士通はそれなりのITインフラを作っていた。インターネットになったときに96年にウインドウズが登場、まったく対応できなかった。

もう一つ、村山談話が出ている。93年には河野談話も出た。米国の全面占領が52年の主権回復で終わり、米軍基地だけになった、それが安保条約とされた。

江藤淳は、日本は米国による日本改造に対して依然として戦い続けたと書いている。96年の橋本クリントン会談で日米ガイドラインの改定。ソ連が敵ではない。インターネット元年と一致。日米ガイドラインは国境線の変更を伴わない占領。自衛隊が完全に米軍に組み込まれた。

今も主力戦闘機には米軍のブラックボックスがあり、米軍の支援がなければ飛ばなくなる。日米ガイドラインでそうなった。これはこれで重要な問題。

あと2つ。経済金融の完全な敗北。米国は日本を差し置いて、いま巨大なファシズム国家となった中国に投資して循環させる。日本軽視、それが日米ガイドラインにつながる。金融で日本が勝てなくなった。そしてITインフラが…。トロンが潰された時点でウインドウズの世界制覇に。OSはそっちになるんだと、見えていた。

抑えつけられた挙句、韓国からも慰安婦外交カードの下で、終戦以前の悪辣で非人道的な世界平和に反する暴虐国家との宣伝が平成初期から始まった。

平成日本の敗戦。もっと大きな敗戦の中に押し込められた。安倍さんがその中で立ち向かおうとした。ある部分はできた。慰安婦合意は成果。だから、そのあとの韓国の対応が日本人から見たら笑止千万なものになった。国会議員の中では少数だが、歴史認識をきちんとしようとした。

それに対して朝日新聞は攻撃した。その攻撃に被弾し続けたのが安倍総理。体が弾丸だらけ。貫通している。結果的に敗戦は防げなかったが、朝日は死んだ。第二次安倍政権を朝日は一年で終わらせたかった。総裁選に立候補したときから。あのころから石破を応援していた。桂太郎を上回る在任期間を匍匐前進しながら達成した。それ自体が朝日の敗北。

それでも、平成日本の敗戦を象徴する安倍退陣になった。平和安全法制など最低限のものが達成できたのは、安倍政権が保守でなく、中道左派だったから。アベノミクスもそう。財政出動。働き方改革、輝く女性、保守派がげんなりする思想。賃上げ、労組、それを内閣から言う。政権の足場はアベノミクス、とにかく経済。

自民党そのものが保守でなく、長期安定政権のためには二階さんと公明党の支持が必要。自民党には公明党の応援なくしては当選できない議員が多数。ゆがんだ体制。選挙活動のときにポスターも貼れない。そんなことを許しているとは政党として終わっている。

意外と日本人は賢い。朝日だけでなく、多くの世論調査も70%ぐらい評価。すごい数字。論理的に考えれば、病気治ったら次やってよという声。何をいちばん評価?朝日の記事を知っているから笑ってしまうが、外交安全保障。この2つをやれば、病が完治すれば、国民から澎湃としてそういう声が湧きおこるのでは。第二の敗戦は克服できなかったが、朝日新聞には勝った。

米軍と一体化する自衛隊、日本の軸をどこまで残していけるのか。平和安全法はその上で重要。集団的自衛権は、対等にと一歩近づいた。特定秘密保護法も。これはスパイ防止法の一歩手前に。日本が独自性を担保すれば、米国に完全に組み込まれることはない。次期FXの独自開発との方針を防衛省は出した。きちっとした共同開発が行われれば、ブラックボックスがなくなる。

独自性を担保しないと対中国で危なくなる。A2AD(接近阻止・利用域拒否)を逆手に取る形で第一列島線を防衛。そうしたミサイル基地が、米軍が考える最前線だと言う意味合いを失い、日本が戦場になりかねない。独立性あってこその日米同盟。岸信介がやったのはそれだった。当時の60年安保反対をやった人たちは、そんなことを知らない。

東京の壁、マスコミと政治との関係はますます危険な状況。東側のメディアが完全に北京のファイアーウォールに直結。自由にインターネット使えない。ファイアーウォールで閉ざされている。13億人の「イントラネット」(内部ネットワーク)になっている。そういう北京の影響を受けた人たちがグーグルにしてもITを握っている。

米国でYouTubeやTwitterに代わるSNSが増えている。検閲が多すぎるから。なぜ日本の企業はそういうものを創らないのか。東側メディアは相変わらずの攻撃を今後も繰り返すだろう。

菅政権はどんな性格の政権に?CSISレポートが名指しした二階と今井。名前を出すのは尋常ではない。菅政権がどうなるかは二階幹事長の扱いではっきり決まる。残るようならまずい。残らないなら安倍政権の発展的継承になる。

周りにイエスマンしか置かなかったのも安倍総理の失敗。狭い範囲しか自分の周りに人を置かなかった。もっと広い範囲から汲み上げるべきだった。北海道の土地、菅さんが進めたアイヌを先住民族とした法律、難題が多数起きている二階派の影響力をいかに排除していくか、それが菅政権が長く続くかどうかを決めるだろう。

…どうも、菅政権は別の意味で長続きしそうです。安倍政権の総括的評価については、これだけの長期安定政権でありながら、これだけの多くの課題を道半ばで残した政権は、かつてなかったといえるかもしれません。ただし、そもそも掲げた課題が、憲法改正、デフレからの完全脱却、北方領土、拉致問題…と、あまりに遠大だったからだということはあるでしょう。実は、菅政権は、簡単に安倍路線を継承するとはいえないほどに、大きな重荷を背負って出発した政権だということになりそうです。

 

●<対談>小川榮太郎(文芸評論家)「安倍政権 7年8か月の功罪」

安倍氏はルールを尊重する立憲主義者だった、強引に憲法改正を通そうとはしなかった…。安保法制懇の報告にも関わらず、平和安全法を集団的自衛権にとどめ、集団安全保障まで踏み込まなかったのは、日本が戦争に巻き込まれないよう米国に対してノーと言える立場を残すためだった…。

小川栄太郎氏ご自身は自らを安倍前総理のブレーンとはおっしゃいませんが、実際にはそうだったと私は思います。その小川氏が、安倍政権の総括的な評価をしました。

総理が経産省に傾斜していったのは、2014年の消費増税に際して、増税しても大丈夫と財務省が総理に説明して信頼を失ったことが原因の一つ…。党利党略の解散総選挙と言われたが、権力抗争に勝つのは政治家の職業的な責務。自らのせいで民主党政権になってしまったとの思いの安倍氏としては、愛国保守で長期安定政権を実現することが重要な目的だった…。以下、小川氏のご発言の要約です。

・アベノミクスは…失われた10年から失われた20年になったが、失われた30年になったという人はいない。失われた20年の根本は国際的な政策と日銀との乖離だった。それを世界標準にした、そしてハレーションを起こさなかったのは功績。

・消費増税が批判されているが…税制の問題は、どういう全体的な国の設計があるかと関連。保守派はみんな増税反対。それには誰もが反対しない。間接税と所得税と法人税の3つの柱しかない。法人税は下げて世界標準にした。それによる海外からの呼び込みをして、次は所得税として、日本では増税できる層があるのか。それでは税収足りない。少子高齢化のときに。ならば間接税しかなかった。集められた税金が本当に国力増進に使われていたのかのほうの斬り込みこそ論壇はすべきだった。単なる増税反対は左翼がやること。

本音は増税したくなかった。第一回の増税は安倍さんの与り知らぬところで決まったもの。ご本人からも、やりたくないよ…と。財務省から何の問題も起きないとの説明。しかし、経済は落ち込んだ。結果論として虚偽の説明をしたことで、財務省は安倍政権の中で決定的に立場を悪くしてしまった。力関係を経産省に行かせた原因。ますます傾斜。総理はそう受け止めた。アベノミクスの邪魔をするな、で、2回増税延期。

 株価安定の前提で外交。自由主義圏とのネットワーク。その信頼のもとに、各国の不安を抑止しながら防衛費増加、そして選挙に毎回勝つ。こういう必勝パターンを作ったのが安倍政権の大きな功績。党利党略と言われても、安定政権をつくるための解散総選挙。政治とは権力ゲームに勝つのも職業的な責務であり能力。

第一次のときの自らの辞任後、弱体政権が続き、その挙句、自分がきっかけで民主党政権になったとの思いがある。本来は、保守の長期政権、中川昭一、安倍。平沼赳夫、麻生…愛国保守で日本を取り戻す。平沼さんは郵政で躓き、中川は不幸な死に方、安倍も麻生も長期どころか併せて二年でパーに。今度は自分のもとで、という思い。

トランプとの関係は、安倍氏との人間関係。Twitter、SNS、動画でつながる。19世紀の欧州よりも首脳の個人的な関係で外交が決まる時代。それぞれの政府の代表というよりも個人的な人間関係が響く時代。タイプとしては、とても癖があり、その中で過酷な環境で這い上がってきた人とウマが合う。プーチンもそう。そういうリーダーたちとの間で信頼を勝ち得る。安倍氏自身が苦渋に満ちた日々。向こうから見てそれが感じられないと、足元をみられることになる。

・集団的自衛権…(法制懇ではもっと踏み込んだ集団安全保障の提言をしていたし、芦田修正論だった。しかし、安倍さんも菅さんも答弁で、意外と右ではなかった。)…集団安全保障に進むグランドビジョンが安倍さんにないわけではない。しかし、戦後の民主平和が好きな人たちが言うように、米国の戦争に自動的に巻き込まれる、それを拒否するフリーハンドを持とう、ノーと言える立場を持つべし。対米自立を岸から受け継いでいた、精神的には。戦後日本は、あらゆることの組み合わせになっていることが多い。一刀両断できない、自衛隊と米軍との現場での緊密な信頼感情ができている。(保守論壇は木を見て森を見ずか。)

・憲法改正…いろいろなルールを安倍さんは重視する。真っ当な立憲主義の権化のような人。安保法制も2年をかけた。国会も史上最長審議。手続きでオーソライズされていないことは禍根を残す。人気があって出来てもやらないタイプ。安倍政権下の改憲に応じないと野党が言うなら、なんでも通せとはいわない。党の国体や憲法調査会にゆだね、自分の意思は9条に置く。自民党として野党を突破できないときは、強引にやらずに、彼らが進めるのを待つ。だが、きれいにやりすぎた。

もりかけ桜は完全な安倍疑惑の創作。桜は吉田内閣の頃から。当初は叙勲者対象、年を追うごとに、総理大臣が国民とつながる場はここしかない。目くじらを立てることではない。長期政権になると毎年推薦の人数が増えて。

官邸官僚による側近政治の持つ強みと同時に、固定しすぎたことによる弱み。自民党は民意を受けている。その声やエネルギーと官邸が乖離していく。実感としてそう感じたし、党側からも言われた。霞ヶ関に対する不信感は以前から大きい。

・改憲、北方領土、拉致問題…政治にはゴールがない。強引なゴールを作っても空洞化する。郵政解散がそうだった。20点、30点で低迷していたものを60点、80点にする、そういう政治の王道をして、ここまで来た。

・菅政権はどういうふうに安倍政権を継承?…初動のスピードが菅政権の死命を制する。しようと思っていた具体的な重要な改革を出している。これらは決して小さなテーマではない。裾野の大きな改革。内政の根本に関わる改革を、これだけ短期間に新総理が打ち出した。菅さんには独特の天性。もしかすると大きな役割を担う総理になるのでは?

・新型コロナ…加藤、菅、安倍さんと毎日のように状況の共有をしていた。go toへの対応も、菅さんが実情を把握している証拠。東京五輪もやるべきだと。そちらにこの秋にシフトすることを期待。

…安倍政権のもとでは十分な成果を挙げられなかったのは第三の矢の成長戦略だと言われる通り、安倍政権を継承すると言っている菅総理としては、自らの官房長官としての経験も踏まえて縦割り打破の構造改革を進めようということなのでしょう。

しかし、経済政策の全体観を欠いたまま、特定の論者の特定のかっこよい説に飛びつこうとしてはいけません。総理大臣としては、経世済民のマクロの見識が問われます。これは、日本全体の国家観についても同様。ある意味、学識や教養、理念や独自の理論的支柱も問われるのが総理大臣の職ではないでしょうか。

 

●<対談>谷口智彦(慶応大学大学院教授 前内閣官房参与)「伝説のスピーチライター谷口智彦氏が語る、安倍元総理の真実」

いま明かされる安倍政権の真実。内閣官房参与として官邸に席を置き、安倍前総理を英語のライターとして支え続けた谷口智彦氏が、安倍前総理とともに噛みしめた思いを存分に語りました。

谷口氏とは私の財務省時代からの長いお付き合い。かつて一緒に国家戦略の議論づくりをしていた仲ですが、新たなキャッチを生み出す言語感覚には舌を巻いたものです。

世界から高く評価された安倍前総理の陰の立役者として、大いに貢献したものと思います。今回の松田政策研究所チャンネルでの対談、安倍氏の側近として、これだけ俯瞰的に安倍政治とは何だったのかを総括している論者はなかなかいないと思います。

なぜ憲法改正ができなかったのか…その他、あまり知られていない安倍氏の意図や官邸内の動きなども含め、一度はご覧いただく価値があるのではないかと思います。

…本当に最後、調子悪かった。8月6日、9日、広島長崎。治療法がない。アンダーコントロールにするしかできない。問題がなくなったわけではない。五輪招致のときに福島の汚染水の状況をアンダーコントロールとご発言、その時に念頭に浮かんだのが潰瘍性大腸炎。なんとか元気にしていた。突堤から外は、飲めるほどの安全度。それが続いた。これだけ続いたことはなかった。健啖家でもあったし、ワインも飲めるようになっていた。

去年は良いこと続き。令和の車列、ラグビーで世界から愛される日本。それが暗転。147日続けて勤務。しかも、どうすればよいか五里霧中。コロナが再発に引き金。点滴がいつもの薬より効き目。その時はとっても元気だった。私にも言ったが、迷いに迷った。やり残したことがいっぱい。しかし、時限爆弾いつ爆発…。上部の消化器官はOKで、食欲ある。しかし、腸が。どす黒いものが出る。自分の免疫システムで。自民党人事を控え、何をやっても敵が生まれる、その後も国会…。今がタイミング。

最後に晩餐。その時も召し上がってはおられる。しかし、仮病とか逃げたとか心無い批判でかわいそうだった。

今井さん、暴走?頼りすぎ?…押し出しの強い人。7年8か月、総理に捧げた。そこをくみ取ってほしい。まさに無私の人。CSISレポートで中国とのキーマンとして二階さんと今井さんが書かれたが、それが引用したのは日本語のレポートだった。国会で与党が絶対多数を握っても、改憲派が与党の中で多数を握っても、憲法審査会が動ないと憲法改正できない。強行突破すると、その後の国民投票が危うくなる。

まずは自民党がその気になる必要。そのためには、まず数多くの選挙に勝ち続ける必要。細田派と麻生派は良いが、二階さん…。これを今井氏は意識した。改憲まで走らせるには、二階さんとの関係を…自分以外に誰が面倒をみるのか。議会対策、自民党対策をできたのは今井さん。だから、二階さんと一緒に一帯一路の国際会議にも出た。そうまでして二階さんの力を頼った。親中のためではない。憲法改正のため。目的がはっきりしていた。安倍を改憲に持っていくため。

(今井は経産省が産業界にいい顔をするために一帯一路に傾斜していたと言われたものだが…)実は、今井は経産省と産業界との関係でも歯ぎしりをしていた。やってくれよ、スリランカやモリディプで…。でも、日本の会社はやらない。中国にやられっぱなし、中国がやらないと欧州が来て敗けてしまう。日本の企業に出てくれよという思いが続いていた。

今井さんしか信頼できなかった?財務省との確執があった?消費増税の2回の延期…

財務省との関係では、二人、大切な人がいた。麻生太郎氏と公取委員長になった古谷一之氏。古谷氏は、安倍さんの一の子分になってはいけないと自分に言い聞かせ、霞が関全体を動かす。2度の増税延期も。古谷さんのためならと、どの省庁もひと肌脱ぐ。7年半、東京23区から一歩も出なかった。内閣官房長官補という要の位置にいたため。財務省からすれば、古谷さんが官邸に行っているからというのがある。

麻生さん…今は戦争やっている。日露戦争の借金は1986年に返した。戦争とはそういうもんだ。そのように言う親分。財務省の立場を代表して安倍総理に当たる。弁慶の義経を打擲して芝居をする感じ。義経を助けるために弁慶の役割。お前ら、それでもできることを考えろ。そこで財務省から出てきたのが、ROA重視型への大転換。コーポレートガバナンスで株主利益の極大化。

GDPの4割の現預金、ちょっとでも吐き出させようとした。そこを財務省はがんばった。しかし、笛吹けど踊らず。成長戦略の失敗は全くこれ。コロナで現預金はまた増えている。

労働者に報いず、株主に還元せず、次世代をみた投資にも回さず。成長戦略のポイントは企業にどう吐き出させるか。経済三団体に総理自身が行ってベア上げてくれと。組合のトップのようなことをやった。

 トランプとウマが合ったのは?トランプはプロレスのような人。悪役を演じるのが平気。

バイデンとの討論でもそうだった。老人性の難聴なので、分解する能力が低下、司会者と同時に話されると聞こえなくなる。これがプロレスなら平気。

トランプ当選直後にニューヨークにトランプを訪ね、そこは金ピカ。一人で来いよ。真昼の決闘。通訳一人を連れて。ゴッドファーザーの世界。一家総出で出迎え。お前、男なら来いよ。豪州のビーフと米国のビーフ、TPPから出ていくと米国は不利、じゃあ、豪州はお前たちが攻められたら助けにくるのか?

平和安全法を苦労して通した。自衛隊法95条2項、米国の船が攻撃されそうなときに自衛隊の船がそばにいたら、自動的に守れるようにした。初めて一体化してプラスサムの抑止力になったと安倍さんは説明。カリフォルニアよりも日本に米軍を置いたほうが安上がり。地上でいちばん安上がり。北朝鮮は目先の脅威だが、長い目では中国だと。

最初に会ったときから安倍はすごいとトランプは思った。辞めた時に、俺は辛いよと言った。声をつまらせる景色だったそうだ。それでG7などで日本が世界の外交をリード。これは明治開闢以来初めてのこと。

国会に出来てしまっている憲法審査会という手続きは難物。まさに総理の「孤独」。自民党か総力を挙げて野党も取り込んで憲法審査会を繰り返し開催していくというのは、もりかけ桜で全部だめになった。野党も、大した問題でなく違法性もないことを承知の上で、ひたすら審議時間を奪うため。働き方改革も大事な制度は流れた。重要法案は審議未了に。

ましてや憲法においてをやで、入り口にすら到達しなかった。野党は本当に強い。新しいものは作れなくても、政府案をつぶすには強い力。

集団的自衛権…米国がアフガンやシリアを攻撃に行くときに頼みますというときに行くということから日本は守られている。豪州も英国もカナダも参戦している。集団的自衛権をフルに行使して、南極海などで戦いに行くかといえば…。自衛隊法の新条項ができたことで、米国の船と飛行機と日本のそれとはいつもどこでも一体になった。

これは中国からみれば計算違いだった。米軍と日本の自衛隊がいつも一緒にいるということは…。東アジアの中国の軍事化を抑えるのには米国一人では無理。95条の2、日本の安全を支えている空間がかなり広がった。

特定秘密保護法もきちんと議論できなかったが、これは特定公務員機密漏洩防止法だった。ネーミングは悪かったが、おかげで長足な進歩。まともな情報交換が初めてできようになった。

米議会や豪議会での安倍氏の名演説。高い評価。当時、極右、国家主義者、戦争主義者、出発点で安倍さんはそう言われた。日本の筋が悪い、年寄りばかりの子供のいない国で将来がないからナショナリズムを燃え上がらせている、ニッポン悪者論だった。

そこで、日本経済を良くして若者に未来をもたせて、必要な施策を打てばうつほど、安倍は意味ある政策をしていると、たとえば、疑いの目を持っているメルケルが注目、一つ一つ理に合っていると。ケネディも付き合えば付き合うほど理屈通っている、と、オバマなどに電話。なぜ一度も日本の総理は議会に呼ばれていないのかと。

米や豪での演説で、日本はどれだけ長い時間をかけて成熟した民主主義を育ててきたかをみてもらった。おじいちゃんの時代にどんな制約があってそんな結果になったのかわからない後世の世代に前の世代のことを謝る資格はない。しかし、色々とやってくれたことには感謝しよう。戦後の日本との寛容な付き合いに頭を垂れたい。豪州議会は波を打ったような感激に。日本への理解に大きな力を発揮した。

国際広報は、政府だけが何かやればよいということではない。手数口数が多いことが大事。武漢でも米中に比べて論文数が圧倒的に少ない。学者も論文をもっと英語で。企業経営者も英語は苦手でではなく、必要な英語で。限定的なその場その場、その職その職にふさわしい英語を、世界の場に出て言ったら必ず発言を。セミナーなどでは質問をすればいい。もう少し教えてくれと。終わったあと、必ず近寄ってくる人がいる。発言できるときは英語で発言してしまう。

コロナのときにもう少しリスクコミュニケーションを…?手堅さを重視した。クォモNY知事の演説は多弁だが、内容はない。トランプを堕とそうとする意図。選挙を意識した発言。割り引いたほうが良い。メルケル、エリザベス女王。

安倍さんは、いろんな政策をフル稼働しようとした。マスクのようにうまくいかなかったものがあったが。無利子無担保の金融を3年にわたってつけるというのは銀行界の常識ではありえない。巨額の財政出動。そうした政策をもって語らしめた。厚労省のケツを叩き、財務省に泣いてもらい。安倍政権が築いた霞が関の政策形成能力をフル稼働させた。

記者会見は、政策を説明する場だった。もう少し自分言葉でと総理も自問自答されているかもしれないが、政策総動員を説明する場だったと考えてほしい。クォモはなんの政策も語っていなかった。誠実にやっていた。安倍さんは、バカがつくぐらい正直にやっていた。

…総理大臣を経験したことのない者にはきっとわからないものがある、その職には安易な批判を許さない重みがあるのだろうと、改めて感じされてくれた証言でした。それにしても、安定多数史上最長政権をもってしてもできなかった憲法改正、日本は野党があまりに強すぎるウルトラ民主主義国家なのでしょうか。もしかすると、多数決をもってしても大事な意思決定ができない民主主義の弱さの事例として、後世の歴史に残るのかもしれません。谷口さんにおかれても、7年8か月、本当にお疲れさまでした。

 

Ⅱ.松田学による安倍政権評価

やはり安倍政権は良かった…世論調査ではこれが国民の総意に近いようです。現職議員時も今も安倍政権を応援してきた私としても、あまり厳しい評価はしたくありません。ただ、安倍総理とは国会の場で直接何度も政策論をやり取りした者として、そして現在はリアリズムを標榜するチャンネルを営む者として、政権評価は行わざるを得ません。

ということで、あえて第三者的にみれば、これだけの最長安定政権でありながら、これだけ多くの課題が道半ばで終わった政権はない…。安倍前総理の辞任表明後、安倍政権を評価する国民は、どの調査でも7割以上となり、政権末期の調査としては異例の結果になっていますが、ここで安倍総理の7年8か月はどんな成果を達成したのか、冷静に考える視点を提供しました。

ここでは以下、3本の動画番組をご紹介します。

 

●<松田学>「【号外】ニュースを斬る! 松田学の安倍政権評価!?」

外交や安全保障では一定の成果、その一部は輝かしい成果をあげた安倍政権。しかし、経済をみれば、インフレ目標は未達成、民主党政権時と比較しても、実際には経済実態がそれほど改善したわけではなく、アベノミクスは不発。内政面は意外と成果は少なかった。

その一因ともなった意思決定メカニズムの問題に加え、少し大局的で歴史的な視点からみてみれば、安倍政権は平成時代の経済敗戦からの立ち直りに挑戦しながら、ついに達成できずに終わった政権でもあったという見方もあります。安倍政権の評価を踏まえてこそ、次なる政治の課題がみえるはず。

松田政策研究所チャンネルの「ニュースを斬る」コーナーでは、じっくりと、できるだけ多角的な視点から斬り込んでみました。

 

●<松田学>「大下英治氏の見る、安倍政権のこれまでと菅政権のこれから」(チャンネル桜)

チャンネル桜のビデオレターでは、大下英治氏のお話、つまり、松田政策研究所チャンネルでお聞きした菅政権誕生に至るあまりにも興味深い解説を、私なりに要約した上で、安倍政権の実績評価を行い、菅政権はどんな政権になりそうか、簡単に展望しました。前記の松田政策研究所チャンネルでは50分をかけた安倍政権評価でしたが、ここでは25分に凝縮しています。

 

 なお、上記の松田学ひとり語り番組で使用したフリップの一つに、政権期間中における実質GDPの増加率の数字に誤りがあったものがあり、下記に差し替えております。3年3か月の民主党政権時における実質GDPの増加スピードに比べ、19年10-12月期までをとった7年間における安倍政権下での増加スピードは低下しているというのが、正しいメッセージです。これは、消費増税がアベノミクスの足を引っ張ったことが大きな要因といえます。

 

●<対談>山岡鉄秀×松田学「第9回【2020/9/15】生放送『安倍政権の通信簿~保守派の期待に本当に応えられたのか?~菅総理は大丈夫か?』」

松田政策研究所で月2回、山岡鉄秀氏との対談で時局に斬り込んでいるニコニコ生放送番組、前半部は一般公開でYouTubeでも配信しています。(後半は松田政策研究所会員限定)。政権評価に点数などつけられるものではありませんが、ここでは「通信簿」と名付けました。