第4の波にどう立ち向かうか?~ブロックチェーン革命とサイバーセキュリティ~2019白馬会議 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 「西のダボス、東の白馬」を標榜して毎年、長野県白馬村の温泉リゾートホテルで開催される「白馬会議」、今年は11月23~24日に統一テーマ「令和ニッポンの青写真を描け!」のもと、私が標記をテーマにメインのプレゼンテーターの一人を務めました。題して

 他には、川島真・東京大学大学院総合文化研究科教授が「米中超大国間でどうバランスをとるか?」(日本外交模索の先)と題して、金井利之・東京大学大学院法学政治学研究科教授が「行政とどう向き合うか?」(忖度化する霞が関と弱肉強食化する自治体間競争)と題して、西田亮介・東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授が「若者はどう未来をつかもうとしているのか?」(世代間ギャップを超えて)と題して、それぞれプレゼンを行いました。全体として、かなり濃密な議論となったと思います。

以下、会議の場で配布された私のアジェンダを掲載いたします。実際の会議の模様については、改めてご報告いたします。

 

第4の波にどう立ち向かうか?~ブロックチェーン革命とサイバーセキュリティ~

松田学

 

1.第4の波

近年ますます加速化する科学技術、なかでも情報技術分野で進む急速な革新は、人類社会のあり方全体を大きく変容させつつある。それは果たして人間本位の幸福な未来社会の実現に結びつくのか、人々の意識や社会の仕組みなどが的確に対応できるのか、そもそも人間とはどのような存在なのか…。さまざまな面で私たちの従来からの思考の枠組み対して迫られているのは、既成概念の組み替えや「再定義」である。人類の存亡は、こうした課題に的確な答を出し得るかにかかっていると言っても過言ではない。

●転換期に直面する人類社会

 日本政府は未来社会のあり方として、「Society5・0」を打ち出している。

これは、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」であり、「狩猟社会(Society1・0)、農耕社会(Society2・0)、工業社会(Society3・0)、情報社会(Society4・0)に続く、新たな社会を指すもの」とされている。

 太古の昔、人類が最初に火を手にした日を、技術的特異点(シンギュラリティ)とするならば、まもなく人類は2度目のシンギュラリティを迎えると言われている。

人類が地球上に誕生し、火や道具を用いるようになってから長い年月をかけて発展してきた人類文明は、これから22世紀に向けて大きな変質を遂げていくであろう。そこに訪れるのは、これまで想像もできなかったような社会の姿であり、人々の生き方ではないか。21世紀前半の現在に生存する私たち人類は、ちょうど、それに向けた大きな転換期の始まりの時代を生きているのだと捉えることができる。

●文明と情報革命

 この地球上のヒト以外の生物は、個体を変化させ、生命体として3億年をかけて進化してきた。これに対し、直立歩行し、火や道具を持ったヒトだけが、自らの肉体などの変化よりも、道具を使い、自らの外界を変化させる営みによって、わずか数十万年の間に、高速で移動し海を越え空を飛び宇宙へと向かう存在になった。およそ地球に誕生した生命体とは、ヒト以外は、自らを取り巻く周囲の自然環境から直接的にエネルギーを摂取して自己の生存と種の保存を図る存在であるといえる。人類が他の生命体とは異なる大きな違いは、そうした営みに当たって、道具という中間機能を用いるところにある。

 文明の進歩は、装置の巨大化、つまり、中間機能の肥大化を伴うものだった。かつて自らの手で操っていた「道具」は、個々のヒトの手を離れていった。人々は日常生活でいかなる目的を達するためにも、巨大な設備、集権的な大組織、複雑な社会システムなどを媒介しなければならなくなるに至っている。

 ただ、社会システムを利用するユーザー視点で考えてみると、少なくとも表面的には、こうした巨大システムへの直接的な依存を人々は意識しなくても済む世の中への移行が進んでいる。しかし、このような風景を裏側で支えるシステムはより一層巨大化している。IT革命が進展すればするほど、こうした巨大システムが、リアルな実存とは異なるバーチャルな時空(情報空間、電脳空間)に依存する度合いが高まっており、人々が直接接する世界は現実界から仮想世界へとシフトし、リアルな世界への関与はバーチャルな世界を通して行われるようになっている。つまり、人類が持続的生存を確保するための中間機能において、バーチャルな世界が肥大化している。

 問題は、肥大化するバーチャル世界や、これを抱える巨大システムそれ自体が、社会の利便性を高める一方で、人々や人間社会に脅威を与えるリスクも高まっていることにある。すでに起こっているのは、人々が情報関連の端末機器と直接向き合うことが活動の中核を占める状況になっている中で、これとつながるネットワークシステムやバーチャル電脳空間に対する信頼性、安全性が問われているという事態だ。

 個々の人間のコントロールを超えて肥大化するバーチャルな世界を抱えた巨大システムがもたらす不確実性や脅威を克服することは、私たち人類社会が科学技術の進歩を通じて次へと進んでいくために克服すべき課題の中で、とりわけ重要な柱となるものなのである。

●新たな社会へ、「第4の波」

「第三の波」の情報革命が行き着く先に訪れるのは、私たちの日常の意識から中間機能そのものが消え去り、限りなくゼロに近づいていく社会であろう。それは「デバイスゼロ革命」、「ネットワーク不可視化革命」を通じて達せられる「中間機能ゼロ社会」といえる。

その先には、ヒトそのものが進化する世界も想定される。人類は自らの個体の進化ではなく、道具(→中間機能)を発達させることで生存を確保してきた。その人類自体が、今度は、自ら獲得してきた高度な中間機能と一体化することで、自分自身を変容させ、進化させていくプロセスが始まる可能性がある。

①   情報空間と実空間が一体化していく中で、人間(生体)と実空間(外界)との関わりが、中間機能を意識せず、より直接的な感覚を通じてなされる。(「道具を持たないヒト」へ。)

②人間自身が高度な情報空間を組み込んだ中間機能と一体化することで、新たな進化を遂げる。(「道具と一体化したヒト」へ。)

この「第四の波」は「生体革命」と称することも可能かもしれない。

●予想される未来社会と人間の姿

-「ピア・トゥ・ピア社会」の到来 未来においては、距離を超えて点と点が直接触れ合う、距離を超越して自らの周囲のすべてが隣り合わせになる社会が到来するかもしれない。それは、ある漫画で描かれた「どこでもドア」の感覚の実現である。「時空」のうち「空」が消滅する。ユーザーにとってもはや、ネットワークは見えず、存在しないものとなる。あるのは自分と相手だけである。直接握手ができる…。

-複数の人生を同時に生きる。 「私はあくまで私である」というアイデンティティの信頼性が確立することによって、これを前提に、バーチャルな時空を介して、様々な種類のリアルな「自己」の形成と活動の可能性が広がっていくかもしれない。そこでは、「一人二役三役」、「多重人格」が、本人の人格の完全認証を前提にして実現することになる。一人一人の人間としての可能性が大きく拡大していく社会が到来するであろう。

-健康と長寿が保証された人生とヒトの能力の飛躍的向上 健康の確保のため、すでに、ネットワークとつながるウェアラブル端末の人体への装着が進んでいる。パソコンが組み込まれたコンタクトレンズや、膀胱内の尿の量を測定するデバイスの身体への埋め込み(老人ホームでの介護の効率を著しくアップ)なども実用化されていく流れにある。身体に装着するデバイスの微細化が進み、将来は、デバイス不要の健康管理、健康増進も可能に。

いずれ、こうしたデバイスがネットワークとつながることで、脳や神経系統の機能が強化され、人間の能力を飛躍的に向上させることも可能になるであろう。「人生百年時代」が言われるようになっているが、飛躍的に能力を向上させた人間が、150歳を超える健康寿命を手にするようになることが考えられる。ただし、「死にたくても死ねない」未来社会において、人間の存在のあり方をどう再定義していくかが大きな課題になるだろう。

-ヒューマンオーグメンテ―ション(人間拡張) AI革命によってコンピュータ(AI)が人間の能力を上回っていく流れにある中にあって、「オーグメンテ―ション」により人間とコンピュータが一体化し、ヒトそのものが進化すれば、「人間+コンピュータ」がコンピュータ(AI)の能力を上回る状態が実現することになると考えることが可能である。これにより、人類はシンギュラリティで懸念される事態の克服へと向かうのかもしれない。

-人間が人間らしく思う通りに生きていける社会 未来社会では、ヒトは中間機能を操作することなく、ヒトと中間機能が一体化することを通じて、自らが本来具有している身体機能のみによって、生存、発展していく存在へと変化する。自らの人間として有する力だけで、直接的な「手触り感覚」で思う通りに生きていく、そのような個人が好きなように人々と結びつき、直接触れ合っていく。これは、人間のあらゆる営みが人と人、人とリアルな現実との直接の触れ合いによってなされていた、かつての人間社会に回帰する姿だ。

●「未来社会の番人」としてのサイバーセキュリティ

「中間機能ゼロ社会」は、その背後において、多くの人々にとって目に見えないバーチャルな電脳空間が支配する巨大システムが支えることになる。情報空間と実空間が一体化し、人間(生体)と実空間(外界)との接触がより直接的になされるようになったとき、そして、ネットワークとつながる中間機能と人間とが一体化したとき、情報空間に対する破壊、攪乱、改ざん、盗取、成りすまし、フェイク情報の流布などの「攻撃」がもたらす被害は極めて甚大なものとなろう。それは、人間に埋め込まれた無数のデバイスを通じて人間の生命に直接関わるだけでなく、人類の存続自体を直接的に脅かすものとなる。

まさに、「サイバーセキュリティなくして、人類に明るい未来なし」である。

2.サイバーセキュリティ

 サイバーセキュリティが高い完成度を達成することは、人類社会がさらなる進歩を遂げていく上での前提条件になっている。今や国家安全保障の領域はサイバー空間へと大きくシフトし、サイバー攻撃は国家や社会の存立を脅かすまでに至っており、企業等が保有する情報の不正流出への対策は日本の成長戦略にも位置づけられるものである。

対策の要諦が次の点にあることが国際社会の共通認識になっている。第一に、単なる個別技術での対応を超えた社会システム全体の視点から取り組むこと。第二に、ホワイトハッカーなど層の厚い人材の育成と攻撃を受けた経験の積み重ねがもたらす強靭性を獲得すること。第三に、官民の情報共有体制を構築すること。そして第四に、自らサイバー攻撃能力を持つこと。日本政府においては内閣の担当組織が強化されたものの、これらの観点から求められる課題への対応は諸外国と比しても未だに脆弱なものである。

 サイバーセキュリティの完成への道筋は、技術面では暗号技術の完成と情報処理プロセスの透明化であり、特に前者は暗号通貨を始め社会の仕組み全体に大きなインパクトを与えることになる。残りは人的要因であり、技術を扱う人間や組織の行動に影響を与える社会システムや制度面からのアプローチが、これからの対策の最重要の柱となる。人間が電脳空間に習熟するプラットフォームの形成や、攻撃による防御を可能にすべく専守防衛を謳う日本国憲法の解釈を明確化すること、さらにはサイバーセキュリティの公共財としての性格を踏まえた国家介入の大義名分につき国民合意を形成することなどが推進されるべきである。産官学等の各界が協働を強化し、こうしたサイバーセキュリティの重要性にふさわしいリソースを投入し、その完成に向けて、日本が国際社会の中での独自の存在を築いていくべきことを提唱するものである

3.ブロックチェーン革命と社会実装

急速な進歩を続ける情報技術が人類社会を根本から変革すると予想される重要な一例が、暗号通貨の技術基盤として活用が始まったブロックチェーン技術である。現在は問題が多いとされる「仮想通貨」の分野においても様々なイノベーションが進展しており、いずれこれが「トークンエコノミー」の形で未来社会を支える基盤になると予想される。

特に、ブロックチェーン技術の進展が、これまでの価値交換のための基盤技術を、任意の手続きを実現する「スマートコントラクト」の実装にまで広げたことのインパクトは大きい。これにより、ブロックチェーン技術の社会実装が、情報の信頼性や安全性のみならず、広く国民の利便性の向上と行政の効率化等に資することになる。

公共部門への実装については、政府あるいは自治体が国民あるいは住民等に対してトークンを発行し、これが行政におけるブロックチェーン基盤と結びつくことによってもたらされる社会的便益は極めて大きい。地域ユーティリティトークンの発行に加え、国のレベルでも、利便性の高い政府暗号通貨を導入すれば、巨額に積み上がった日銀保有国債をこれに転換していくことで、財政規律やインフレの懸念なく、財政再建や日銀の出口戦略の円滑化及び新たな通貨基盤の創出につながる道が拓かれることになる(松田プラン)。

●分散型社会への移行と「課題先進国」日本

●仮想通貨、暗号資産、暗号通貨

●現在の暗号通貨の仕組みと暗号通貨の問題点、課題

●社会実装技術としてのブロックチェーンの特性

・技術がもたらす非中央集権化

・スマートコントラクトとトークンエコノミー

●期待される公共サービスへの応用

●自治体発行地域通貨及び地域ユーティリィトークン

 

●永久国債オペによる日銀保有国債の処理

●政府暗号通貨による国債マネタイゼーション

4.みらいのお金と「協働型コモンズ」

●現在のお金とは…信用創造(日銀が供給しているのではない!!)

・利潤なきところにおカネ無し…まさに資本主義のマネー

●暗号通貨で起こっているイノベーション

・IPO→ICO→STO  Main Street Growth Act

・通貨覇権と日本の道…人民元デジタル通貨(中国、一帯一路)⇔非流動資産の電子化(米国)

・リブラで何が起こるか

・クリプトキャッシュ…ブロックを作ることが本質ではない。クリプトチェーン。

●AI革命のインパクト

・シンギュラリティーとAIの能力

・「AI賢『人』?政治?」と民主主義

・AI人格論…AI革命で働かなくてよい社会に?

・産業社会の変容と「ハイパーデフレ」の時代

●「協働型コモンズ」社会と資本主義社会

・「ヘリマネ」も「ベーシックインカム」も答にならない

・一人一人の生き甲斐をみんなで支える社会…その基盤となるユーティリティトークン

・社会貢献、公益、人間的価値、アート

・「いいね」が「〇〇コイン」に…

・「ボンド・ボンド」構想…Bondとは…まずは介護ボランティアポイント制から

…資本主義社会では「無」→無から有を生む…経済的価値の創出

・「看取り」コイン、神社コイン…、エネルギーコイン

5.日本の経済戦略

・日本がプラットフォームを取る道がある…「東京クリプト金融特区」を

・ジパングプロジェクト…防災・減災革命とITアカデミー

・平成→令和のパラダイムチェンジとは? 「電子データ」が最大の付加価値の源泉