中国がデジタル人民元?~いまこそ「松田プラン」を~日本の道はブロックチェーンの社会実装 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

日本がデジタル経済化の波に決定的な遅れをとるなかで、もはや、この分野では中国の後塵を拝する以外にないとの悲嘆の声が日本の大手関連企業のトップからも聞こえてくるが、もう一つ、中国が脅威になりそうな分野として、通貨が浮上している。

 

●中国デジタル人民元の衝撃

筆者がかねてから警告してきたとおり、中国が仮想通貨の技術基盤であるブロックチェーンを用いてデジタル人民元の発行に踏み切ることが現実味を帯びてきた。

中国の当面の意図は、その信認低下で海外流出を続ける人民元対策。資本流出規制のためにブロックチェーンを用いた管理強化ということがある。さらには、オーウェル的な監視社会を築く中国にとって、おカネを通じた国民監視にも役立つことになろう。

ビットコインなど現在の仮想通貨でのブロックチェーンの使われ方は、中央管理者がいない分散型の「パブリックチェーン」であるが、実は、これが中央管理者が存在する「プライベートチェーン」として使われると、従来考えられなかった高い精度の情報を中央管理者が得ることができるようになる。法定暗号通貨でユーザーの情報が国の管理下に…。

暗号通貨は特に貿易金融では利便性が高く、中国が中長期的に狙っているのは人民元の国際化であろう。これまで人民元は米ドルがバックだったが、米ドル基軸通貨体制からの脱却は中国の長年の悲願だ。拡大する一帯一路地域で人民元が基軸通貨になる…?

これは基軸通貨国の米国にとっても脅威であろう。

 

●リブラの衝撃

だからと言って、通貨当局にとっては、これも大きな話題になっている「リブラ」も困りものだ。フェイスブックのユーザーは世界で27億人。リブラが各国通貨当局にとってコントロールの範囲を超える通貨として流通すれば、国際金融の安定にとって重大な脅威になる…マネロン対策も大丈夫か…こんな懸念のもと、今年のG7ではリブラのような取り組みの前提が、確固たる規制の枠組みの構築であることが合意された。

特に、基軸通貨の米ドルが国際決済の主軸であることが経済制裁の実効性を担保する上で不可欠と考える米国にとっては、リブラはデジタル人民元同様、安全保障の観点からも大きな脅威となる。自由主義陣営の各国当局とも、リブラ潰しをしたいのが本音であろう。

リブラは法定通貨との間でレートが固定されるステーブルコインとなることが検討されている。そうだとすれば、日本の金融庁の定義上も、それは法定通貨と分類され、従って、送金業務なども銀行免許が必要となるなど、通常の金融規制に服する必要があるとの議論もある。こうして各国とも何らかのかたちで法定通貨と同様の規制の網をかぶせれば、今度は、仮想通貨であるがゆえのリブラの利便性が損なわれる可能性が否定できない。

 そもそもリブラが計画されるようになった背景には、新興国や途上国では預金口座を持たない人々が大半を占めるなど、いわゆる「金融包摂」が不十分な現状がある。リブラなら、出稼ぎ先の国から本国の家族にスマホで瞬時に少額の送金いつでも誰でも可能になる。

たとえリブラを潰したとしても、同じような構想が次々と現れ、これを抑え込むのは将来的には困難だろう。

前図のG7議長総括をみると、下のほうに赤字で示した文言がある。これは、リブラのような取り組みが、金融包摂の努力を怠り、必ずしもユーザーのニーズに十分に応えられていなかった既存の通貨システムに反省を促すものであることを認めたメッセージだ。

 

●法定通貨の世界にも地殻変動が

こうした流れの中で、今後、世界各国で暗号技術を使ったデジタル法定通貨の導入が進んでいくことが十分に予想される。そもそも「暗号通貨」には、法定通貨以外のインターネットで送付可能な支払い手段として導入された仮想通貨(現在は「暗号資産」というのが正式な呼称)以外に、法定通貨(ないしは法定通貨圏に属する)暗号通貨も存在し得る。

前者の仮想通貨の場合、ブロックチェーンは分散型のパブリックチェーンとして用いられるが、後者の場合は多くが、中央管理型のプライベートチェーンとなろう。リブラも、少なくとも導入当初の5年間はプライベートチェーンのかたちを採るとされている。ちなみに、分散型の場合、通貨基盤としてブロックチェーンを使うのは、容量的な限界があるとされ、法定通貨を量的にカバーするのは困難なようだ。

こうして、デジタル人民元やリブラの登場によって、世界各国とも法定通貨のあり方に情報技術の面から大きな変革を迫られることになるとすれば、そのとき、日本はどうするのか。いずれ日本人もデジタル人民元を使うようになるのだろうか?

その利便性に惹かれて日本人もこれをペイペイの如く使用することとなれば、我々の個人情報は中国が管理するビッグデータに組み入れられることになる恐れが否定できない。これも中国が仕掛ける「ハイブリッド戦」に寄与する可能性を警戒する必要があろう。

やはり、日本としても利便性の高い独自の「政府暗号通貨」を発行して財政をも健全化させる「松田プラン」を検討してほしいものである。

 

●政府暗号通貨「松田プラン」で財政を再建、ユーティリティトークンで新社会を建設

詳細の説明はここでは省くが、筆者が提唱してきたこのプランは、アベノミクスのもとで発行残高の半分を日銀が保有するに至った国債(本年3月末で約470兆円にのぼる)を、政府発行の法定暗号通貨の形で償還し、これを民間の求めに応じて流通させる案である。累増してきた赤字国債が、情報技術を内装した利便性の高いお金に変換されることになる、究極の「債務の貨幣化」(マネタイゼーション)案だ。

これによって通貨総量が増えるものではなく、インフレの心配はない。

社会の高齢化で先進国最悪となった日本の財政は、もはや経済成長や歳出削減や増税といったフローの対策では再建不可能だ。政府と日銀を連結した「統合政府」で捉えたバランスシート処理にしか答えはない。財政運営も最先端の情報技術と結合すれば新局面が拓かれる。

ただ、悩みは、このプランが財政や経済の理論だけでなく、通貨や金融の実務、さらにはブロックチェーンなど情報技術にも通じていないと、なかなか理解されにくいものであることだ。日本の政界にはそんな人はほとんどいないだろう。

しかし、現下の状況に鑑みれば、もう黙っているわけにはいかない。もはや、松田プラン」なくしては、日本は通貨主権まで失う時代に入ったと、危機感を感じている。

こうして自国通貨を守りつつ財政を健全化し、持続可能な社会を創ると同時に、民間主導で従来の競争型資本主義とはひと味異なる新しい「協働型コモンズ」を創出するカギとなるのが、これも筆者が提唱する「みらいのお金」である。

これはユーティリティトークンと呼ばれる新しい暗号通貨であり、各人が実現したい価値をそれに共鳴する人々が支え合う社会の建設も、日本人の国民性に合った営みといえよう。市場経済では実現しないような価値や人々の生き甲斐を、人々の「いいね」が実現する。今後、AI革命や社会の超高齢化で、産業社会から居場所を失う大きな人口の塊が出現するだろう。これは、その受け皿となるもう一つの社会の創造である。

 

●ブロックチェーン技術の本質的な特性

さて、現在は仮想通貨に使われているブロックチェーンも、暗号のプロたちから言わせれば、そもそも仮想通貨に使用するのは邪道のようだ。彼らに言わせれば、インターネットで経済的価値をやり取りする方法への模索は90年代から続いてきたが、その最も安易な解決がビットコインを生んだ「サトシ・ナカモト」論文だとされる。

巨大データを皆で共有するなど、いずれ実務的に動きがとれなくなるとのこと。すでにビットコインでは取引に時間を要するなど、限界が露呈し始めている。

むしろ、ブロックチェーンの本領は、社会のさまざまな仕組みへの実装において発揮されるものである。その特性は、①第一に、よく言われるようなデータを改ざんできないよう管理することだけでなく、②第二に、契約や手続きなどのスマートコントラクトの実装(ここに技術革新の中核がある)、③第三に、ユーザーがトークン(一種の暗号通貨)でアクセスするという「三位一体」で、従来は考えられなかった利便性や価値を社会に創造することことにある。

これまではシステム毎に、それぞれの論理に従って管理されていたデータが、今度は、データが特定の論理と結びついてシステム透過的に、その論理に応じて各システムを動かしていく。主役は、縦割りの社会の各種の仕組みから、電子データへと移る。まさに、ユーザーオリエンティドな「トークンエコノミー」が各種の社会システムで実現していく。

●日本がとれる戦略的ポジション

ここで以下、日本がデジタルエコノミーで採るべきポジションを考えてみたい。まず、日本を取り巻く世界の潮流をみれば、平成の30年間の日本の停滞はひとえに、下図が示す①グローバリゼーション、②インターネット革命、③金融主導の3つの世界の大潮流に日本が十分に乗り切れなかったことがもたらしたものである。

これが、①は世界の米中分断ブロック化へ、②はブロックチェーン革命へ、③は電子データ主導へと、逆転あるいは転換する中で、日本は令和時代を迎えることとなった。

かつて、世界の戦略分野は石油や食料、あるいは金融だったが、今や最大の付加価値の源泉は電子データとなっている。これを支配するのが米国勢のGAFAと中国BAT(バイデュ、アリババ、テンセント)といったプラットフォーマーたちであり、前者が自由経済と個人情報保護、後者が国家主導でのデータ管理というパラダイムの根本的な相違から、世界は、主権国家vsプラットフォーマーvs中国勢という三つ巴の対立構造が生じるに至った。

この中で、米国のGAFAや中国のBATのような巨大プラットフォーマーを欠く日本は、何をするにも寺銭を取られるだけの存在になりそうである。

最近では、ヤフー(ZHD)とライン(LINE)の経営統合が話題になってはいるが、どうも、株式時価総額や利用者数などをみても、これで誕生するだろう新たなプラットフォームだけでは、桁が違うようだ。米国勢では、GAFAにネットフリックスを加えたFAANG(ファアング)の売上高だけで既に日本のGDPの3分の2に及んでいる。

かたや中国はAI(人工知能)だけでなく、金融インフラや物流を始め、ブロックチェーンの社会実装でも国を挙げた取り組みで世界の先頭を走っている。

しかし、このブロックチェーン技術は未だ黎明期にある。現状では社会実装のメリットはなかなか出にくいものだ。経済産業省がその市場規模67兆円としているが、鉛筆をなめた数字に過ぎない。

実は、ここに日本のチャンスがある。

 

●ブロックチェーンにもっと光を…先端ITアカデミーの設立

超高齢化など世界最初に人類共通の課題に直面する課題先進国であり、これまでの産業や情報の蓄積、優れた工学力や現場力を誇る日本の強みを活かす。ブロックチェーンの技術論理を知る個々のITチャレンジャーたちが、目前の社会的課題解決に取り組むことで、各分野の特性に応じたイノベーションをブロックチェーン技術自体に起こして進化させ、そこで日本は、各分野の国際標準を築いていく。

ブロックチェーン革命の旗振り役を自認する筆者は、すでに、エネルギー、港湾、医療、介護や看取り…等々の分野での課題解決への適用に関わろうとしているが、同志の方々とのコラボで、来年には最先端ITアカデミーを開校すべく、準備を進めている。

まずは社会的課題解決のテーマを発見し、そのソリューションをブロックチェーンの論理で組み立てるチャレンジに、多くの挑戦者が参加することで各分野でのイノベーションを起こす。そのために、手作りブロックチェーンの作成から、そのビジネスマッチングまで、日本を新しいITハブにするための試みである。

平成の30年にわたる日本経済の低迷の背景には、IT化の遅れによる生産性の停滞があった。ほとんどが既存システムのメインテナンスにとどまっている日本のIT業界の現状に対して新しいフロンティアを創らねばならない。

ブロックチェーンは日本の産業界では未だ日陰者扱いであるが、日本としてはGAFAに対抗するよりも、むしろ、草の根の強さが活きるこの分野にこそ、イノベーションの光を当てるべきではないかと考えている。

 

●ご参考 松田学のビデオレター

「日本が次に直面する危機、デジタル人民元が基軸通貨になる可能性」

チャンネル桜 12月3日配信