韓国問題、香港デモ、台湾、そして中国「華夷秩序」~日本の道は海洋国家軸の形成にあり~松田学の論考 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 最近、松田政策研究所の動画などでも韓国をネタに発信すると、桁違いに高い視聴数を獲得する状況が続いている。以下、韓国のみならず、最近、東アジアの各地で生じている事象と、その背景にある中国「「華夷秩序」形成との関係について概観を試み、日本として採るべき道を論じてみたい。

●韓国民の本音

 どう考えても理不尽、日本に対しては法の支配の原則まで無視し、国際社会に自殺国家宣言をするが如き一連の文在寅政権の反日政策で最も可哀そうなのは韓国民ではないか?そんな疑問を韓国人で元韓国国防省分析官、現在は拓殖大学の高永喆(コ・ヨンチョル)氏にぶつけたところ、正にその通り。現在も文政権は50%近い支持率という報道もウソ。

左翼に染まった韓国メディアの報道を多くの韓国民は信じていない、韓国ではSNSが日本よりも盛んだ、政権への実際の支持率は15%程度、日本におかしな主張をしていることを分かっている国民は多い、むしろ文政権が危機的状況に陥っている…。

前述の高氏の見方である。文大統領が曺国氏の法相任命にこだわるのも、同氏が後継大統領候補であり、歴代大統領が悲惨な末路となる韓国でも史上最悪とされる文氏自身が辞めた後の処刑を避けたいから。すでに軍では文氏暗殺計画も…?文大統領は北朝鮮の労働党員との暴露話まで出てきたが、少なくとも日本としては、朝鮮半島の「赤化統一」は避けたいもの。日本にできることは、韓国保守派との連携強化かもしれない。

●香港デモと中国

 東アジアでもう一つ、香港デモが世界中の耳目を集めている。林鄭月娥(りんていげつが)香港行政長官はついに9月4日、逃亡犯条例改正案の正式撤回に追い込まれた。

この逃亡犯条例とは、犯罪者の身柄引き渡しについて香港と中国との間で結ばれているものであるが、その改正により、引き渡し対象の犯罪に制限がなくなり、中国政府による粛清の手が香港に及ぶことが強く懸念されていた。

正式撤回の背景には、米国議会で資産凍結なども含めた香港人権・民主主義法案が審議されていることもあるようだが、10月1日の建国70周年を前に事態を収拾したいのが、メンツを重んじる中国。これが最後の譲歩だとした。

香港の民主派は、①逃亡犯条例改正案の完全撤回に加え、②警察の暴力行為を調べる独立調査委員会の設置、③デモを暴動と認定した政府見解の取り消し、④拘束されたデモ参加者の釈放、そして、⑤民主的な普通選挙の実現を、5つの要求として掲げてきた。①以外の残りの4つが実現していない以上、デモはさらに継続される。

しかし、その中でも特に、⑤の民主的な普通選挙の実現は、中国一党支配体制のパラダイムとは真っ向から対立するものであり、中国は絶対に飲まないようだ。

ただ、深圳に武力警察を集結し、人民解放軍の投入まで囁かれる中国も、第二の天安門事件に至るのは何としても避けたいのが本音であろう。

そうなれば中国経済を痛めつけている米中貿易戦争はさらに悪化するし、中国要人たちの「金庫」、「金の卵を産むニワトリ」とされる香港の存在で資本主義の「いいとこ取り」を享受してきた中国としても、自由な経済取引による香港の繁栄は失いたくない。最近ではシンガポールに経済取引が逃避しているとの噂もある。

いま習近平の頭を最も悩ませているのが香港であろう。

●台湾で高まる自覚

 香港デモは台湾にも波及しているようだ。来年1月予定の総統選では、中国からの独立志向の強い民進党の蔡英文・現総統が不利とされてきた。しかし、香港デモの影響で支持が広がっているようである。台湾に対してすら「一国二制度」を守れないのが中国であることを、台湾の人々は自覚したようである。

経済的利益を前に独立志向が弱まる傾向が強いのが、中国福建省などとの「両岸経済」で潤う台湾である。2014年には当時の国民党・馬英九政権のもとで進められていた中国とサービス貿易を促進する協定に反対して学生たちデモ参加者が立法院(国会)を占拠した「ひまわり学生運動」が起こったことを、ご記憶の方も多いであろう。

ちょうど、デモの最中に衆議院議員として台北を訪れた筆者は、立法院を取り囲むように座り込む学生たちにインタビューまでしたが、デモといっても、それは整然と秩序だったものであった。自らのしっかりした定見を静かに述べる一人一人の学生たちの姿に、台湾の民度の高さを感じたものである。

一般に、日本と同じ海洋国家である台湾は、大陸国家である中国よりも考え方や価値観が日本に近く、連携すべき相手であることを、当時の訪問の目的だった漁業問題の議論でも痛感したものである。

華夷秩序と東アジア海洋国家群

 以上、韓国、香港、台湾のいずれも、最近では「一帯一路」を進める中国の「華夷秩序」、すなわち「中国が主宰する国際秩序」形成に対して周辺地域で起こっている「反作用」の動きといえよう。

では、日本としてどうすべきかを考えるに際して、地政学的にも重要なのは、「大陸国家」群への対抗軸として「海洋国家」軸を形成することではないか。

米国が一国主義を強める一方で、中国は朝鮮半島の「赤化」、南シナ海、そして日本周辺海域へと海洋(太平洋)進出を着々と進めている。

中国は、台湾で蔡英文政権が誕生してからは、太平洋の島しょ諸国に対して次々と国交を結ぶと同時に、台湾との断交を迫ってきた。筆者が10年近く前に訪れた、南太平洋のど真ん中に位置するバヌアツ共和国では、数年前まで走っていた日本製のクルマがほとんど中国製に置き換わり、主要プロジェクトのほとんどに中国利権が食い込んでいるなど、政治も行政も経済も中国色に染められている同国の状況をつぶさに感じられたものである。

最近では、中国の重要政策として台湾制圧が浮上しているという物騒な話も、中国の知人から耳にした。

筆者が議員時代に訪れたフィリピンで、同国の国会議員の方々から言われたのは、早く日本は憲法改正をしてほしいということであった。台湾、フィリピン、その先にはベトナムやインドネシアなどもある。

改憲の要請については、日本が自ら戦争ができる国になるということではなく、自主防衛もまともにできず、そのためのルールも憲法上明確ではない国が、東アジア海洋国家群で安全保障も視野に入れたイニシアチブをとるには限界があるというメッセージとして受け止めた。

少なくとも、日本は海洋民族としても同じ価値観を共有する上記の国々を中心に、先頭に立ってイニシアチブをとることが、現実に要請されている状況にあるという現実がある。

●新機軸外交としての海洋国家軸の形成

 安倍総理が進める「インド太平洋戦略」は、まさにこの方向に即したものであろう。日本がとるべき進路は、大陸から軸足を外し、台湾を起点に開かれたアジアと連携してインドに至る道である。海洋国家として米国、北中南米、豪州・NZ等の環太平洋諸国とインド洋からアフリカにかけて、自由で開かれた「法の支配」を核とする連携(連結性)を強化する。

こうした安倍総理の構想に米国も引っ張られて、「アジア太平洋」は「インド太平洋」になった。これはアジア新機軸外交だといえるものである。

批評家の西村幸祐氏(岐阜女子大学客員教授 関東学院大学講師は、上記の視点から、これを、北京の「華夷秩序」を前に、東アジアでまだ残っている冷戦にどう向き合うか、未だに残る全体主義とどう戦うかを自覚した戦略だと評価している。

さて、一昨年には米国による北朝鮮への軍事行動が今にもなされるのではないかと騒がれていた。それがない理由として、トランプと金正恩との密約による「米朝同盟」の動きが指摘されている。統一後の朝鮮半島を親米化して中国包囲網とする戦略である。これは、中国「華夷秩序」に対して自由主義陣営が打ち込む楔になるものかもしれない。

しかし、かつて、ソ連経済を痛めつけることでソ連を崩壊させたレーガンと同じことを、トランプが実際に中国に対してできるかといえば、世界経済との相互依存がこれだけ進んだ中国に対してはそう容易ではないであろう。

いずれにしても、今後長期にわたって予想される米中分断の動きの中で日本に問われているのは、米国がどうあれ、日本が独自に国益を確保できるためにも、海洋国家軸の形成を主体的に進めていくことではないか。

 

【ご参考】

●松田学のビデオレター

華夷秩序に回帰する暴走韓国の内情、華夷秩序から香港と台湾を救う「海洋国家軸」の形成 [チャンネル桜、令和元年9月10日]↓

 

●高永喆(コ・ヨンチョル)・元韓国国防省分析官(拓殖大学主任研究員)との対談

特番『歴代最低!?従北・文政権の運命は。そして韓国国民の本音は・・・』 松田政策研究所チャンネル↓

 

●西村幸祐氏(岐阜女子大学客員教授 関東学院大学講師)との対談 松田政策研究所チャンネル↓

・特番『想定通り!韓国・文政権の行動 東アジアの冷戦は終わっていない!?』↓

 

・特番『日本を取巻く国際情勢を地政学で見る!日韓情勢、香港デモ・・・』↓