首都直下型地震は眼前のリアリティ~危機管理としての防災・減災革命を~松田学からの提言 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

防ぎようのない形でいつ訪れるか分からない事態に対する危機管理ということでは、日本の場合、自然災害への備えが喫緊の課題です。人口当たり発生件数だけでなく、ますます激甚化、頻発化しているという意味でも、いまや日本は世界一の災害大国。

ある専門家の指摘では、3・11より前の二千年の間にマグニチュード9クラスの東北大震災は4回発生、そのいずれの場合も概ね10年程度の間隔で関東大地震(首都直下型)と連動、その多くが東南海大地震とも連動したそうです。10年といえば、あの3・11からそろそろ10年。もう、いつ東京で起こってもおかしくない。東京オリパラは大丈夫なのか…。

これら地点は太平洋プレートでつながっているので、いずれ首都直下型も東南海も確実に起こると頭では分かっていても、いつ起こらないか分からない事態にはリアリティを感じないのが人間というものです。しかし、これはもう、すぐにも起こる現実なのだと、頭を切り替える時期でしょう。そこから危機管理を始める必要があります。

大震災で東京に生じる事態は、人類史上始まって以来の悲惨な光景かもしれません。建物の倒壊や家具による圧死だけではなく、これだけ大量の人口が交通遮断で長期にわたり食料不足状態となり、多数の餓死者が発生、発災時にたまたまエレベータに乗っていた人は、生存中の救出はほぼ絶望的…。予想される事態はさまざまです。

全員を救うことはできなくても、一人でも多くの命を救うために…、そんな思いで私は、防災・減災革命に向けた啓発活動を始めています。この分野に最先端のICT、高度情報技術を活用する「黄金の国ジパングプロジェクト」の主唱者として、その事業化に専門家の方々とともに乗り出した立場からの発言です。サバイバルの基本は、いかに逃げるか。

発災の瞬間にどう行動するかで生存確率はほとんど決まります。ならば、いざという時の「逃げる」行動を的確にとれるための日頃の防災教育が大事。ハザードマップを頭に入れても行動には結びつきません。住民一人一人に、自分の街で実際に震度7の地震や大洪水などが発生した直後の行動をVR(バーチャルリアリティ)で体感しておいてもらう。

自助、共助、公助で考えると、阪神淡路大震災の際に助かった方々の3割が自力、3割が家族、3割が地域の人々による救済で、行政による救済の比率はわずかだったそうです。

上記の防災体験教育が自助の領域だとすれば、共助については、極限状態では困難化しがちなリスクコミュニケーションの構築が挙げられます。そもそも、いまの消防を中心とする日本の防災は、米国などと比較しても、科学的にみれば竹槍で戦うが如き状態だという指摘もあります。できれば小学校区メッシュでの地域単位で、よりシステマティックな組み立てによる防災を切り口として、日頃から、コミュニティの再生を図るべきでしょう。

公助については、被災時の最高責任者は自治体の首長ですが、多くの自治体は専門知識が不足し、新しい仕事は増やしたくない職員の体質が科学的防災への壁になっているようです。本来、激甚災害は国家緊急事態として国が前面に出るべき分野。米国のFEMA(連邦緊急事態管理庁)を挙げるまでもなく、多くの先進国が備える有事対応の専門的な仕組みが日本政府には未整備。「有事」という発想自体が戦後日本では一種のタブーでした。

政府が掲げる「国土強靭化」も、ようやく、トンカチ重視のハード(堤防などのインフラ)からソフト(発災後の対応をサポートする知恵や仕組みや情報機能など)へと重点がシフトしてきましたが、国も地方もPDCAサイクル(plan-do-check-act)のうち、PとDはあってもCとAが欠けているようです。予算をとって、やることはやったとのエクスキューズに走るあまり、真に有効な防災・減災の構築は置いてきぼりになりがちです。

超高齢社会の運営だけでなく、もはや自然災害への対応という面でも課題先進国となった日本が、命の値段が最も安い国であってはいけません。どの分野でも、危機管理の要諦は人々の意識。天災は忘れた頃にやってくる。いまの行政は頼りにならないと割り切って、まずは家庭でも企業でも地域でも、平時から意識を共有し、いかに逃げるか、どう連絡を取り合うか、避難生活をどう組み立てるのか、有事への備え怠りなきを期したいものです。

 

以上は、令和元年5月26日に開催された総合危機管理学会の学術集会での私の講演「自然災害における危機管理の果たす役割と実践的方策」のエッセンスを要約したものです。

https://www.youtube.com/watch?v=RZkiZYWUTBI&feature=youtu.be