「9」の年に問われる日本の覚悟~どうなる?2019年、どうだった?2018年<松田学の論考> | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 西暦2019年、10年区切りで考えれば21世紀は2ステップ目を終えつつあり、日本では今年、平成時代が終わります。前世紀末の90年代からこの30年、世界はグローバリズムの世紀であり、日本はバブル崩壊後の失われた何十年の中で新秩序を模索する時代でした。

 では、今年はどんな年になるのか。本年1月1日にアップしたブログでも述べましたが、以下、その内容を敷衍しつつ、少し大きな世界の流れから2019年の日本のあるべき立ち位置を考えてみたいと思います。

 その前に、私、松田学は、次の図にあるように、未来社会のプロデューサーとして、未来の基盤となるさまざまなプロジェクトを本格稼働させる年にする覚悟ですので、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

●「9」の年は時代を画する年

 私は昨年のちょうど今頃、2018年、「8」の年は、前年の「7」の年の出来事を契機に起こった現象が、その後、継続的に広がり始める年になるということを発信していました。過去を10年ごとに振り返ると、二〇08年は前年07年からのサブプライム危機がリーマン・ショックにつながった年。その後の長きにわたり世界経済は停滞が続くことになりました。1998年は、前年97年11月の大手金融機関の破綻を契機に、日本の本格デフレが始まった年でした。1988年は、前年87年10月のブラックマンデーを経て、多くの日本人がバブルの好景気を実感し始めた年となりました。

 まさに昨年は、これからの大きな潮流が始まる年という意味では、そのような「8」の年の予測どおりになったことを思わせる年でした。国際社会では、前年07年に先鋭化した北朝鮮問題に関して、南北会談やトランプ・金正恩の米朝首脳会談が朝鮮半島の今後の秩序形成を胎動させたかにみえます。07年に誕生したトランプ大統領の一国主義が保護主義の形で世界を揺るがし始め、米中貿易戦争、ペンス副大統領演説、そして情報技術覇権をめぐる「米中冷戦」時代へのシフトが始まったのも昨年でした。日本国内では、外国人受入れへの転換やグローバリズム終焉の象徴とも言われるゴーン氏の逮捕など、いずれも、従来の秩序が大きく変動する予兆を感じさせる出来事が次々と起こった年となりました。

 ここで、今年「9」の年はどんな年になるかを考えるため、もう少し大きく過去を振り返ってみると、1989年はベルリンの壁の崩壊、マルタ会談での米ソ首脳による冷戦終結宣言、日本では平成時代の始まりと消費税導入の年でした。その後、30年を経て、冷戦体制終結で本格化したグローバリゼーションには転機が訪れ、再び、今度は米中間の冷戦体制に入りつつあり、日本では平成時代が終了し、消費税率も10%に到達して一つの節目を迎えます。1989年は、その後の30年の時代が始まった年だったといえるでしょう。

 1999年は欧州ではユーロの導入、日本では省庁再編が国会で決まった年であり、2009年は米国ではオバマ大統領の誕生、日本では民主党への政権交代の年でした。その後、これらは大きく時代を動かしましたが、いずれも、前年までの潮流が形として具体化し、時代を画する出来事が起こる年でした。

 

●新たな国際秩序への動きと日本の立ち位置

 だとすれば、今年2019年は、前年2018年に広がり始めた内外の潮流が明確化する年だと考え、私たちがこれに本格的に向き合い、具体的な行動へと歩み出すことを迫られる年だと捉えるべきでしょう。

 基本は、世界で強まる反グローバリズムへの動きや、「海洋国家」(日米英+インド太平洋)対「大陸国家」(中露+仏独)、あるいは、「アングロサクソンファイブ+日仏独」対「中露」対「GAFAなどのプラットフォーマー」とも言われる対抗軸の形成に対して、日本がどのような立ち位置を採るのかにあると思います。

 その中で一ついえるのは、米国が一国主義なのであれば、日本は日米同盟を基軸としつつも、安全保障でも経済戦略でも米国へのおんぶに抱っこから少しでも脱皮する必要があるということでしょう。折しも昨年末には日本主導による米国抜きTPPイレブンが発効に至りました。今年2月には日・EUのEPA(経済連携協定)も発効し、本年内に中国やインドを含むRCEP(東アジア地域包括的経済連携)も妥結に至れば、日本が世界の自由貿易経済圏の「扇の要」となる形で米国保護主義に対する包囲網が形成されます。

 他方で、中国が主導する異質の秩序構築への牽制としては、日米欧の結束により知的財産やデジタルエコノミーなどの分野でも自由な秩序づくりの推進に注力する。こうした外交面の複雑な連立方程式を前に日本に問われるのは、世界の秩序形成に日本としていかなる主体的意思を示し、国際社会でのポジションを獲得していくかです。

 今年は早速、韓国の問題が露呈しましたが、朝鮮半島の問題のポイントは、その地域を背後で動かす中国やロシアだとされます。米朝会談で金正恩の手玉に取られているかに見えるトランプ大統領も、このところ対中国圧力外交に重点を移しているのは、このことが背景にあると指摘されています。いま米国は中国を経済的に締め上げて徹底的に弱らせようとしています。

 そもそも、現在の米国は日本人の想像以上に超大国からの衰退が著しいようです。オバマ民主党政権の時代に中国に対する軍事的優位も失ったとされます。トランプが「一国主義」を唱えるのは、米国がまずは自国の体制の立て直しを迫られているからであり、保護主義も米中関係リセット宣言も、情報技術を盗みダンピングで大量輸出をして米国の富と雇用を奪う中国の不公正を抑止しないと、自由貿易も成り立たないからだという見方もあります。

 ただ、米中冷戦といっても、両大国間に経済関係がなかった米ソ冷戦時代とは状況は大きく異なります。中国も含めて世界中が相互依存関係を深めてしまった現在、世界のブロック化につながる反グローバリズムという規範的価値は、事実として進んでいるグローバリゼーションとの間に大きな齟齬をもたらします。これが早速、一昨年までは長期上昇局面とも言われた世界経済に不透明感をもたらし、株価も下落。リーマン以降、世界的に未曽有な規模に膨張したマネーが何らかのきっかけで急激に収縮するリスクが高まっています。

 

●リアリズムに立った新しい国づくりを

 ここで問われてくるのはトランプ氏の大統領としての見識でしょう。現在、ホワイトハウスの意思決定から外されている国務省に代わって、国際協調でトランプを支えているのが安倍総理だと言われます。皮肉にも、それは日本に前代未聞の外交力を持たせることになりましたが、世界秩序の転換点にあって日本に問われているのは、国際政治の現実を冷静に見抜く眼と、リアリズムに基づいて自らの国益を追求することへの覚悟でしょう。

 かつては石油や金融だった世界の戦略分野は、いまや情報へとシフトしています。今後の国際秩序を決めるのはデータ覇権。米中やGAFAがこの分野を主導する中で日本はどうするのかがポイントとなります。そこで大事なのは、インターネット革命の次なる革命として世界的に進行していく「ブロックチェーン革命」にどう向き合うかではないでしょうか。

 実は、日本には自国の国柄を映じた独自の情報技術活用の道があります。例えば、「課題先進国」としてブロックチェーンの社会実装で先手を打ち、新たな社会モデルで世界の範となる「自立」と「合意」と「和」の仕組みを創出する国になることが十分に考えられます。

 国内では元号も変わる本年は、安倍総理が掲げてきた「新しい国づくり」の中身がいよいよ問われる年になります。その際に大事なことは、これも安倍総理や自民党が掲げてきた「日本を取り戻す」について、どの「日本」をどのように取り戻すかでしょう。

 それは決して、高度経済成長を導いた「戦後システム」ではありません。このシステムは、戦前の1937年の中国との戦争から急速に形成された軍事体制、いわゆる「1940年体制」と呼ばれる組織本位の中央集権体制が、その目的を戦争から経済成長へと変える形で、基本的な姿を存続させてきたものです。これがすでに、時代とは合わなくなり、全体システムの再設計が問われるようになっています。

 取り戻すべき日本とは、同じ戦前でも、1940年体制に移行する前に花開いていた「明治・大正経済システム」に代表されるような、本来の日本らしい国柄の日本です。このシステムは江戸時代以前から連綿と築き上げられてきた、自由で流動性が高く、自立自尊の気風とチャレンジ精神に満ちた経済社会でした。

 この日本を、前述したような最先端の情報技術などを活用してバージョンアップした形で取り戻していくということが問われているのだと思います。

 同時に、戦争トラウマから脱却して、危機管理などの国家機能を強化し、国民の安全安心を保証できる日本も築いていかなければなりません。そこにも科学技術の成果を積極的に活用し、よりシステムティックな仕組みをさまざまな社会システムに実装していく営みが不可欠です。

 冒頭に掲げた私の活動メニューが、こうした「新しい国づくり」に資するよう、全力をあげて取り組んでまいる所存です。

 

松田学のビデオレター、第103回は「どうなる?2019年、どうだった?2018年」

チャンネル桜2019年1月8日放映。