前回は、「仮想通貨の課題と暗号通貨をめぐる米中覇権争い<その1>」として、そもそも仮想通貨やブロックチェーンとは何なのかを簡単に解説しました。↓
https://ameblo.jp/matsuda-manabu/entry-12417005204.html
今回の<その2>では、いよいよ本論として、仮想通貨のメリット、デメリット、暗号通貨の今後の課題やイノベーション、さらには、最近の中国や米国の動きなどについて論じてみます。(図の番号は前号からの通し番号です)
●「仮想通貨」の問題点と課題
〔図7〕…現在の「仮想通貨」のメリットとデメリットを整理してみました。やはり、責任主体の不在というのは、通貨としての信用という点では大きな難点でしょう。
〔図8〕…そもそもブロックチェーンをおカネに用いることには、技術的にも大きな難点があります。取引を確実に記録するものであって、通貨を作り出すものではありません。現在の仮想通貨は、何ら価値の裏付けのない、いわば「共同幻想」といえます。
〔図9〕…ここで暗号通貨の4つの課題をまとめてみました。
●暗号通貨のイノベーションと暗号通貨をめぐる米中覇権争い
実は、先の図で掲げた4つの課題は、いずれも、イノベーションによって解決されていく流れにあります。「仮想通貨」は暗号通貨として進化を遂げ、いずれ、真の通貨としての要件を備えた暗号通貨へと置き換わっていくことになると予想されます。
そのときに誕生するのが「みらいのおかね」です。
それでも、暗号通貨の信用という点では、国家の信用が裏付ける現在の法定通貨より劣ると考える人が多いでしょう。しかし、国家の信用と言っても、それは国家が適切な経済運営をしていることが前提であり、最近のベネズエラなど多くの事例にもみられるように、経済運営のよろしきを得なければ、法定通貨とて暴落します。
リーマンショックで莫大な量の通貨が発行されたように、発行量が国の政策によって左右される法定通貨に比べれば、ビットコインの場合は前述のように発行量に技術的な限界があり、このことも、ビットコインの価値に対する投機が起こる要因になりました。
要するに、国を信用するか、技術を信用するかの選択になり、国家よりも人類の生み出した技術のほうを信用する価値観の人々にとっては、暗号通貨のほうが信用できるということになるかもしれません。
ただ、暗号通貨にも、日本で開発が進められている「クリプト・キャッシュ」のように、特定の価値をバックに発行される暗号通貨が生まれようとしています。米国では、あらゆる資産をバックとして、その価値を電子化する動きが進んでいます。
企業の株式時価総額であれ、石油や金のような実物であれ、何らかの団体や組織であれ、一定の人々が共通に認める価値をバックとして多種多様な暗号通貨が発行され、一部は特定の人々の間で流通し、一部は不特定多数の人々の間でグローバルに転々流通することになる。そんな通貨の将来像が、近未来には実現するのではないでしょうか。
かつてハイエクが、未来においては、国以外に、民間がそれぞれ独自のおカネを発行する時代が来ると予言した、そんな社会が情報技術の進歩で本当に実現する可能性が出てきました。
かたや、信用の裏付けということでいえば、国家そのもの(中央銀行や政府)が、暗号通貨を発行する動きが世界では胎動しています。中国がそうです。ビットコインは禁止しても、かねてからブロックチェーンの研究には熱心だったのが中国の当局ですが、最近では、人民元建ての暗号通貨発行を宣言しているとも聞きます。
もし、これが発行されるとどうなるか。ブロックチェーン技術は中央集権管理でも大きな威力を発揮します。分散型の仕組みとして使用するときは「パブリックチェーン」、中央管理型の仕組みとしてで使用するときは「プライベートチェーン」と言われます。
プライベートチェーンで発行される暗号通貨は、その発行元が極めて精度の高い情報を握ることになります。暗号通貨は貿易金融に最も使いやすいとも言われます。「一帯一路」構想を進める中国が、人民元をこの仕組みで発行することになれば、地球上のかなりの部分を占めるこの広大な地域が、人民元を基軸通貨とする地域になるかもしれません。
中国系のスマホ決済が日本でも普及する流れがあります。私たち日本人の情報が中国当局に握られてしまうことになる?日米欧が、個人データは個人のものというパラダイムであるのに対し、中国は、電脳空間にも主権を宣言し、個人データもあたかも国家のものであるかのようにみえる国です。
日本では個人情報保護法の改正で、情報の目的外使用のためには「匿名加工」が必要になりましたが、中国側にはこうした明確なルールがあるのか疑問視されています。そのような中で、中国が主宰する世界秩序の形成の中に私たち日本人も飲み込まれていく?
基軸通貨といえば、米ドル基軸通貨体制のもとで米国も暗号通貨で負けてはいられません。STO(Security Token Offering)という新しい流れが米国から始まっています。これは暗号通貨だけでなく、世界の金融のあり方まで大きく変えていくことになりそうです。詳しくは、機会を改めてご紹介します。
いずれにしても、日本は早く、信頼性の高い独自の暗号通貨を開発することで、自らのポジションを創ることが迫られていると思います。
松田学のビデオレター、第97回は「新しいお金、新しい基軸通貨は?~法定暗号通貨の時代」
チャンネル桜10月16日放映。