【試論・松田プラン】その8 永久国債オペの出口は政府暗号通貨~財政再建の秘策~松田学の論考 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 日本の財政を累積した国債から解放し、将来世代への負の遺産を解消する。そのためのバランスシート処理として、すでに「松田プラン」の内容を7回にわたりご紹介してきました(本ブログ【試論・松田プラン】その1~その7)。

 今回は、「松田プラン」にはきちんとした「出口」が用意され得るものであることについて述べたいと思います。実は、その答えは、いま流行りの「仮想通貨」を政府暗号通貨へと進化させることにあります。


●日銀保有の永久国債を政府暗号通貨で償還する

アベノミクスのもと、異次元金融緩和政策で日銀の保有国債は5年間で約320兆円積み上がり、183月末には約450兆円に達しました。その裏側で、日銀当座預金というマネタリーベースも320兆円増え、380兆円に達しています。

これを国と日銀を連結させた「統合政府」でみれば、1,200兆円を超える国の負債も、「純債務」ベースで100兆円あまりにまで縮小しています。

安倍政権が成し遂げたこの財政再建効果が後戻りしないよう、これを恒久化させるのが、日銀が保有している国債を、満期が到来するたびに、償還期限の定めのない永久国債へと乗り換え、これを日銀が永久保有することについて、政府と日銀がアコードを結ぶ「永久国債オペ」です。結果として、その分、政府の国債は日銀当座預金という、返済義務のない帳簿上の日銀負債に姿を変えることになります。

日銀のバランスシートでは、資産の側に積み上がった永久国債に対応する負債は、金利がほぼゼロの日銀当座預金ですから、政府が永久国債の金利を支払っても、それは日銀の純収益になりますので、これを国庫納付してもらえば、政府には金利負担も元本償還負担もなくなります。国債は事実上、消滅します。

今後、日本の財政が破綻する最大の要因は、現在の異次元緩和政策が出口を迎え、金利が正常化するときに現在の何倍にも増える政府の国債利払費です。普通国債発行残高は約900兆円ですから、現在の日銀保有国債の規模の全額の約450兆円に対してこのオペを実施するだけでも、国債発行残高は半分にまで縮小することになりますから、結果として、財政再建に寄与する効果は絶大なものがありますし、将来世代の返済負担も半減します。

 以上の詳細についてはこれまでの記事をご覧いただければと思いますが、残る疑問は、それでは、ここまで異常に拡大した日銀のバランスシートが永久にこのままなのか、やはり、何らかの形で縮小させられる「出口」が描かれていなければ踏み切れないオペレーションなのではないか、ということでしょう。

 今、ビットコインなどの仮想通貨がさまざまな意味で話題になっています。

もし、政府がこうした「電子マネー」を自ら発行できれば、日銀のバランスシートは徐々に縮小していきます。私はこれを「政府暗号通貨」と名付けています。

 そのカラクリを現したのが、この記事の冒頭に掲げた図です。

政府が電子通貨を発行?、そんなことができるのか、と思われるかもしれません。しかし、政府には通貨発行権があります。これはどの国家であっても本質的に有する高権です。日本政府も天皇陛下御在位何周年記念など金貨などを発行していますし、デフレ克服策については、政府紙幣の発行は法律上可能だという議論が交わされていたとおりです。

政府が発行する通貨の形態が紙であるか金属であるか、電子的形態を採るのかの違いがあるにすぎません。

実際に、世界ではすでに、政府が法定電子通貨を発行する動きが出てきています。それも中央銀行ではなく、政府が発行する電子通貨として検討している国がいくつかあります。

他方で、政府が自ら通貨を発行したら財政には規律がなくなるし、インフレになるのではないか?、それは歴史が教えているのではないか?、と言われるかもしれません。

しかし、永久国債オペを前提にした発行であれば、そのような懸念はありません。預金者が自らの預金を政府暗号通貨と交換したい、民間の個人や企業が現金を政府暗号通貨と両替したいといった、市中の需要に応じる形をとるからです。これに応じる形で、日銀は政府に、自ら保有している永久国債を政府暗号通貨で償還してほしいと要請します。

政府暗号通貨の発行は、日銀が永久国債など政府に対する債権の償還に際して、日銀からの要請があったときに限定して発行するということをルール化すればよいだけのことです。今の紙幣も硬貨も政府が製造はしていますが、日銀を通さなければ法定通貨にはなりません。政府暗号通貨も日銀というフィルターを通す形にすればよいと思います。政府はあくまで、市中からの需要→日銀からの要請に応じる形で受動的に発行するにすぎません。

こうした規律ある政府貨幣の発行ができるようになるためには、日銀が巨額の永久国債と巨額の日銀当座預金、つまり市中銀行が政府暗号通貨に対する市中からの需要に応じられるだけの準備預金が積み上がっていることが必要です。

「永久国債オペ」は、未来の通貨制度への橋渡し役にもなるものといえます。

●永久国債が政府暗号通貨へと変換、流通されていくプロセス

ここで、日銀保有の永久国債が政府暗号通貨の形に変換され、市中で流通していくプロセスと、それが「永久国債オペ」で拡大していた日銀のバランスシートを両建てで縮小させていくメカニズムを解説してみます。冒頭の図と対比させながら読んでみてください。

例えば、日本国民であるAさんが銀行の窓口に来て、銀行に預けてある自らの普通預金を10万円、政府暗号通貨でおろしたいと要請したとします。銀行はAさんに、インターネットで政府暗号通貨を交付します。これは、Aさんが現金で預金をおろすのと経済的には同じことになります。

現金でおろす場合がそうであるように、日銀は銀行からの要請を受けて、(この場合は銀行券ではなく)日銀が資産として保有している政府暗号通貨を銀行に交付し、その分、日銀当座預金(銀行の準備)を取り崩します。(前述のように、現金をおろしたときには同様の日銀当座預金の取り崩しが行われています。)銀行はAさんの預金を10万円減らして、日銀から交付された10万円の政府暗号通貨をAさんに交付します。

日銀サイドでは、銀行からの政府暗号通貨の交付の要請を受けて、これに応えられるよう、保有している永久国債の償還を政府に要請します。政府は政府暗号通貨を発行して日銀に交付することで、この要請に応じた永久国債の償還を行います。その分、日銀の資産はいったん、永久国債から政府暗号通貨に置き換わります。銀行券と異なるのは、銀行券が日銀の負債であるのに対し、日銀が保有する政府暗号通貨が日銀の資産であることです。

日銀はこの資産(政府暗号通貨)を、あたかも国債を銀行に売却するときのように、銀行に売却します。その代金を銀行は、国債を日銀から買うときと同じように、日銀当座預金の取り崩しで支払います。

結果として、銀行への預金者であるAさんが受け取る政府暗号通貨の額(10万円)=Aさんの銀行預金の減少額=日銀当座預金の減少額=日銀保有国債の減少額、となって、日銀のバランスシートは資産と負債の両建てで同額、縮小します。

国民Bさんが、銀行の窓口に来て、持っている現金を政府暗号通貨に両替してほしいと要請した場合も同じことです。銀行はその分の政府暗号通貨を日銀から購入し、両替手数料を取って、Bさんにインターネットで政府暗号通貨を渡すことになります。

日銀は、これに応えるために、日銀保有永久国債を政府暗号通貨で償還することを政府に要請し、受け取った政府暗号通貨を銀行に売却することで、日銀当座預金が同額、減少します。銀行がBさんから受け取った銀行券を日銀に持ち込めば、日銀当座預金の金額は元に戻りますが、その分、銀行券発行残高が減少しますから、日銀の負債(マネタリーベース)は一定です。

こうしたプロセスによっても、市中マネー(銀行預金と現金)の総量は変わりません。市中マネーの内訳が、銀行預金か銀行券が減って、その分、政府暗号通貨が増えるというかたちで変わるだけです。

つまり、日銀保有の永久国債の償還を通じて政府暗号通貨が発行されるという仕組みにすることによって、マクロ経済に中立的な政府暗号通貨の発行と、民間の自立的な選択を通じた市中マネーの多様化と、日銀保有永久国債及び日銀当座預金の縮小が、同時並行的に実現することになります。

●仮想通貨とは何なのか?~仮想通貨→暗号通貨が法定通貨となる日~

 政府暗号通貨の形態として考えられるのは、現在のビットコインなどの「仮想通貨」が進化した形での電子マネーだと思います。そもそも「仮想通貨」とは、法定通貨以外の通貨であり、かつ、インターネットで送付可能な電子的支払い手段というのが、私なりの定義です。諸外国では仮想通貨というよりもむしろ、「暗号通貨」(クリプトカレンシー)と呼ばれており、私も暗号通貨という言葉のほうが適切だと思っています。

 暗号通貨と称するのであれば、「法定通貨以外」という仮想通貨の定義がなくなり、法定通貨としての「インターネットで送付可能な電子的支払い手段」として政府暗号通貨を位置づけられるようになります。下図をご参照ください。

現在は、「仮想通貨」と呼ばれる暗号通貨は「ブロックチェーン」という技術を基本とするものが中心となっていますが、そもそも仮想通貨とかブロックチェーンとは何なのかについては、この記事に掲載した後記の動画をぜひ、ご覧ください。

技術者ではない文科系の私であるからこそ、素人の方々にもわかりやすい説明ができているのではないかと思います。

このいわゆる「仮想通貨」、実は、中核となっているビットコインにも、また、そもそもブロックチェーン技術を暗号通貨に用いることについても、さまざまな問題点や課題が挙げられるようになっています。

今後問われているのは、ブロックチェーン技術を用いた暗号通貨のイノベーションや、暗号技術をより完全なものへと革新することによってブロックチェーンを超えた暗号通貨を開発することで、暗号通貨を真の通貨へと育てていくことができるかどうかです。

政府暗号通貨は、そうしたイノベーションの先に、信頼度の高い通貨システムとして構築されるものだと考えますが、すでに、中国やインドなど各国政府がブロックチェーン技術を本格的に検討しているなど、暗号法定通貨への模索が始まっていることを考えれば、日本も、うかうかしていられないはずです。

というのは、暗号通貨はもしかすると、世界が通貨覇権をめぐる熾烈なる戦いに入っていく中で、日本が独自のポジションを取れるかどうかが問われる分野になるからです。それも、中央銀行が発行する法定暗号通貨ではなく、政府が発行する法定暗号通貨として検討していかなければ、日本がアベノミクスで到達した、せっかくの前人未到の地の利を活かすチャンスをみすみす失ってしまいかねません。

詳細はさらに論じて参りますが、今回はとりあえず、この点だけは強調しておきます。

 

松田学のビデオレター、第87回は「仮想から法定へ、暗号通貨の将来性」

チャンネル桜529日放映。

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