今回の総選挙で何を選択するのか~各党政権公約の評価の視点~松田まなぶの論考 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

今回の総選挙で何を選択するのか~各党政権公約の評価の視点~松田まなぶの論考

 

総選挙とは、日本の有権者が政権を選択する唯一の機会です。では、私たち国民は今回の選挙でいったい何を選ぶのでしょうか。

 

●総選挙とは掲げられた政権公約の実行を託す指導者を選ぶこと。

 一般的には、総選挙で有権者が意思表示するのは、

①日本のどんな未来を選ぶのか、であり、

②それに向けて各政党が示す理念、それを実現するための目標、それら目標達成の手段としての政策方針、そのもとでの具体的な政策を束ねた体系のうち、どの体系を良しとするのか、

③政策実現のための国民負担をどこまで受け容れるのか、すなわち議会制民主主義の原点は税であり、まさに「代表なきところに課税なし」、受益と負担との組み合わせをパッケージとして選択するものです。

 これらを示すのがマニフェストです。

 最近ではマニフェストという言葉は日本ではあまり使われなくなり、その代わりに「政権公約」という言葉になっていますが、本来、有権者に提示すべきなのは、単にこうしたいというだけのウィッシュリストとしての「選挙公約」ではありません。

 「マニフェストサイクル」という言葉があります。有権者が選挙で選んだ政権が、その後、選挙で有権者と約束したマニフェストを実行しているかどうかを有権者自ら監視し、その評価に基づいて次の選挙で審判を下す…。

 国民が監視、評価できるよう、中立的な立場から各政党のマニフェストを評価し、その実行状況について判断材料を提供する営みは、日本では言論NPOが中心になっていますが、それは民主主義を的確に機能させるインフラの一つだとも言われています。

 私はかつて、財務省に在職中、個人の立場で言論NPOのマニフェスト評価のほとんどを策定していました。各省庁や有識者、専門家等からのヒヤリングを重ね、何十にも及ぶ各政策分野それぞれの評価の視点を確立し、国政選挙のたびに徹夜の大作業を繰り返していました。その後は自ら、国政選挙に出るようになったため、ここ15年ほど選挙の度に大変な思いをしておりましたが、出馬を見送った今回の選挙期間は久方ぶりに落ち着いた日常生活を送っておりますので、以下、少しポイントを絞って、今回の政権公約についての判断材料を論じてみることといたしました。

 言論NPOには評価体系があり、例えば、形式基準としては、政策が体系化されているか、実質基準としては、日本の本質的な課題に応え、それについて有権者の選択肢が描かれているかといった点が、政権公約を見る上でのポイントになっています。。

 いずれにしても、政権選択選挙の本質は、これまでの政権の実績評価の上に立って、有権者自らが賛同する政権公約を掲げる政党に投票することで、国家の指導者を選び、その政権公約の実行を託すということにあります。

 小選挙区ではこの政党の候補に、比例ではこの政党にと投票しても、結果として誰が総理になるのかが分からない政党の場合、政権を選択した投票にはならないことになってしまいかねません。今回、その事例が出てしまったことはやや残念です。

 とにかく日本は国政選挙が多いという問題もあります。この10年で、日本では衆参両院の国政選挙が7回目ですが、英国、ドイツは3回、フランスは大統領・議会選3回、米国は大統領・議会選・中間選挙併せて5回でした。

 結果として、日本では次の選挙を意識して国民に痛みを求める政策が取りにくくなり、大事な課題が先送りされてしまう傾向が続いてきました。大きな政策をするには一定の期間が必要です。その効果が現れ、有権者が判断できるようになってこそ、マニフェストサイクルが真に機能するものだといえます。

 諸外国では首相の解散権を制限しているケースが多々ありますが、その背景の一つに、このことがあります。

 英国では2011年に、都合の良い時に首相が解散権を行使するのを制限するため、議員の任期を5年とし、解散には下院議員の3分の2以上の賛成を必要にしました。国家指導者を選ぶ機会が4~5年に一度なら、有権者は政策の中身を吟味し、政党も選挙前にドタバタではなく、きちんとした政策選択肢を提示できるでしょう。

 

●3極の本質的な違いは何か

 しかし、今回の「突然の解散総選挙」、これを受けて急に小池新党が希望の党としてまとまり、安保法制に反対した民進党の議員の大半が節を曲げたのか、これになだれ込み、リベラル派が立憲民主党という新党を結成、それぞれが急ごしらえの公約を次々と発表し、そもそも政権与党が国民に何を問いたいのかよく分からない国民が多い、そんな混乱状態の中で有権者にとっては冷静で落ち着いた判断の上での選択が難しい選挙になってしまったようです。

 本来は、各党が国会論戦や発信などを積み重ね、それぞれの本質的な違いが有権者に浸透した上で、今後の国家の命運を託す選択を有権者が投票で示すというプロセスが必要でした。

 一応、今回の選択の軸を「与党自民グループ」、「希望グループ」、「立憲民主グループ」の3極であると設定し、それぞれの掲げる理念を比較したのが下図です。

 そのもとで、まず、改憲や外交安全保障、集団的自衛権や日米同盟路線といった国家の基本路線については、自民Gと希望Gでは大きな違いは見られず、対立軸は、両グループvs立憲民主グループで描かれていることになり、ここには一定の選択肢があります。

 ただ、社会保障や教育など民生に関するものは、どの党も基本的にそう変わらないようです。

 下図のとおり、特に教育無償化はほぼどの政党も掲げており、その範囲に若干の違いがあるにすぎません(自民:3歳から5歳の全ての子どもと低所得世帯の0歳から2歳児の幼稚園や保育園などの費用の無償化、公明:2019年までに全ての0歳~5歳児を対象として私立高校授業料の実質無償化、希望:幼児保育・教育無償化、維新:教育全課程の無償化を憲法上の原則に、立憲民主:児童手当・高校等授業料無償化に所得制限を廃止+大学授業料の減免など。)

 給付型奨学金の拡充については、自民も公明も希望も触れており、立憲民主も奨学金の拡充を掲げています。

 経済政策や成長戦略、規制改革や働き方改革(同一労働同一賃金、長時間労働の是正など)も、ニュアンスや強調点の違いはあっても(例えば法制化してしまうなど)、自民Gも希望Gも立憲民主も、そう大きな違いはありません。

 その中で、正社員雇用の促進に力点を置いているのが希望と立憲民主。維新は成果に応じた待遇を前面に出し、共産は「残業代ゼロ法案に断固反対」です。

 つまり、経済や民生に関する個別政策は、共産を別とすれば、3極とも、どこが政権を取っても、官僚が重点の置き方を変更することで調整できる範囲内の相違にすぎないように見えます。根本的な選択肢かどうかは疑問な項目がほとんどです。

 

●財源や国民負担こそが選択肢

 つまり、民生や経済の個別措置については、どこも似たような「ウィッシュリスト」になっているとすれば、大きな違いは財源にあります。各党の政策で国民負担はどうなるのか。各政党がいちばん言いたくない部分かもしれません。

 ただ、ここが非現実的だと、かつて「パンとサーカス」と言われた民主党政権の二の舞になります。

 2009年の総選挙で民主党は、子ども手当、高校無償化、道路料金無料化、農家個別補償の「ばら撒き4K」を掲げ、消費税率や財政への言及はなく、無駄の削減(事業仕訳け)や政府資産の売却、埋蔵金などで、それらの財源は十分賄われるとして政権を取りましたが、実際にはつじつまが合わず、結局、野田政権で消費増税を決断し、国民は大きな失望を味わいました。

 今回の各党の財源案を比較したのが下図です。

(自民G)

 2019年10月に消費税率を10%に引き上げると明言し、総選挙での増税明言は立派ですが、安倍政権は増税公約を守ってこなかったことにも留意が必要です。もしかすると、2019年10月の増税も、その直前の7月の参院選で信を問う形で延期する可能性がないともいえません。今回は景気条項はないとしても、リーマン並みの景気情勢がない限りと、一応、経済情勢では再々延期の余地を残しています。

 また、今回は消費増税で増える税収の使途の変更を国民に問うとしていますが、これまで党内で使途変更は議論されていません。安倍政権は解散総選挙のたびに消費税を持ち出しますが、政略解散の後付けの理屈付けのような印象がないとはいえない面がありそうです。

 自民Gは、財政健全化については、プライマリーバランス目標は堅持するとしつつも、消費増税の使途変更による歳出増で、これまでの2020年度の達成はあきらめ、時期は延期することになりました。恐らく今後、公債等/GDP比率の安定的引き下げこそが重要との論理をますます前面に出してくることでしょう。

 いずれにしても、今回の消費増税分の使途変更の公約で、教育無償化など「未来への投資」によって毎年度2兆円程度、財政状態がこれまでのベースラインケースよりも悪化することになります。

(希望グループ)

 希望は、消費税増税が消費に与える影響を考慮し「一度立ち止まって考えるべきだ」としている点で、自民Gとの間で一応の対立軸にはなっています。ただ、経済情勢次第で判断しており、将来の引上げについては触れておらず、この点では自民党と本質的な違いはないと指摘することができるかもしれません。

 ただ、2019年は凍結するとした以上、これによってベースラインケースよりも毎年度5兆円あまり、財政は悪化することになりますし、自民G並みに教育無償化などをするならば、さらに2兆円程度、併せて7兆円程度、財政に穴が開くことになります。

 それでは無責任ですが、ここで希望Gが挙げているのが、「消費税増税凍結の代替財源として、約 300 兆円もの大企業の内部留保の課税を検討する。」です。確かに、これに2%の税率で課税すれば、6兆円程度、穴は埋まることになりますし、「マイナンバーのフル活用と歳入庁創設により、国・地方を通じた税や保険料納付についての脱法行為、徴収漏れ防止を徹底する。」ということも財源対策にはなるかもしれません。

 しかし、同時に希望Gは、所得再分配政策の具体案として「ベーシックインカム導入により低所得層の可処分所得を増やす」としており、これには数兆円以上の財源が必要です。

 この希望Gの公約について以下、コメントすれば、

 第一に、自民Gが消費への課税で社会保障の安定としているのに対し、希望の党は企業への課税を家計に還元するとしている点で、大企業への課税で「10%中止」を言う共産党とも共通するものがあるかもしれません。一つの所得分配政策であるのは確かです。

 第二に、希望の党は、他方で、グローバルな動きに日本経済が追い付いていないと言いながら、法人に負担を増やすというのは、やや矛盾している面が指摘できます。近年の法人税減税は、日本企業がグローバルな競争に対応できるようにすることが主眼でした。

 第三に、留保金課税はアフタータックスの法人所得への課税ですから「二重課税」だとの批判があります。また、内部留保金はすべてが現預金として余っているものではありません。海外M&A投資などに回っている部分もあります。

 しかし、そうは言っても、税率が高くなれば、税負担を軽減するために経費である賃金を増やす、あるいは、法人所得を留保したままでは課税されるということで設備投資を増やすなど、国内経済におカネを回す上では効果があるということはいえます。ただし、企業増税であることは間違いないですから、企業をますます萎縮させて、設備投資などへの意欲を阻害するかもしれません。これまで法人税減税で経済が活性化し、法人税収がむしろ増大してきたとの指摘もあります。税負担が増えれば、企業の海外移転が一層進んで、むしろ税収減になるとの指摘もあります。

 これらの経済効果について、よほどしっかりした理論構築が問われます。

 第四に、ベーシックインカム(最低生活保障)という、自民党よりもはるかにカネがかかることを打ち出しながら、その財源には言及がありません。

 ある試算では、ベーシックインカムを実施すると、月6万5千円支給として、現役世代の1割弱を占める年収200万円未満の世帯だけで年5.9兆円が必要、300万円なら11.5兆円、400万円なら18.3兆円となります。

 なお、財政健全化は「20年度までプライマリーバランス目標は現実的な目標に訂正する」という点では自民Gとほぼ同じですが、「現実的」の意味が問われるでしょう。

(維新)

 維新は、消費増税を凍結、必要な財源は国・地方の公務員人件費を2割(5兆円)削減することなど行革によって生み出すとしています。

これについては、5兆円もの人件費削減が本当にできるのか。日本の公務員数は他の先進国に比して決して多くありません。少なくとも教育無償化の財源として挙げている議員報酬の削減では、到底届かないでしょう。姿勢論、精神論にとどまってしまう可能性があります。具体論の提示が必要です。給付付税額控除や行政のAI化などで、行政のあり方を根本的に変えるなら現実的かもしれません。

(立憲民主党グループ)

 立憲民主党は、将来的な国民負担増は否定していません。ただ、経済状況の前提が崩れているので、「直ちに消費税率10%への引上げはできない」。「所得税・相続税、金融課税をはじめ、再分配機能の強化」としています。公約上の財源論は、他党より曖昧です。

 これに対して共産党は明確です。消費税10%増税を中止するとし、凍結よりも踏み込んで、根本から消費増税を否定しています。その代わり、大企業と大資産家に応分の負担を求め、財源を確保し、格差を是正し、富裕層の資産に対して低率で毎年課税する「富裕税」を創設するとしています。一応、財源論としての整合性があると言うことができます。

⇒以上、「予定通りの消費増税」を巡っては。自民Gと他の2極で一応の対立軸がありますが、いずれの党も財政再建は現状よりも後退しています。希望Gは具体策は曖昧で、共産は明快です。次世代に対して財政上の責任を果たそうとする国政選挙ではないことは、いつもと同じです。

 さらに言えば、将来の消費税率と社会システム設計とを組み合わせた本質的な選択肢は、今回も提示されませんでした。

 

●消費増税分の使途変更は解散総選挙の大義名分になるのか。

 ここで、今回の総選挙の軸として自民党が打ち出した消費増税分の使途変更とはいったい何のことなのか、若干の説明を加えてみたいと思います。

 そもそも今回の解散総選挙の大義名分として安倍総理が最初に挙げたのが、消費税収入の使途変更でした。

 まず、税率5%→8%で8兆円あまりの消費税増収があり、その8割が「財政再建」、「借金の返済」だったと解説されていますが、その意味は、消費税増収分の全額が社会保障に充てられており、決して借金の返済財源に使われてきたわけではありません。

 つまり、これは社会保障の財源の置き換えによって、世代間の負担の不公平が是正されることで、新規国債発行が減るという形での、いわば間接的効果による財政再建です。

 「借金返済に回る」という表現は、消費税は全額、社会保障に充てているとのこれまでの政府の説明と矛盾するのではないかという誤解を与えかねませんし、そういう誤解をする人々も多数おられます。

 今回は税率8%→10%で5兆円あまりの消費税の増収が見込まれています。これまでの「社会保障と税の一体改革」の枠組みでは、うち1兆円あまりが社会保障の新規歳出増に充てられ、残り4兆円程度が、上記のような負担の是正部分になることになってきました。是正部分とは、新規ではない従来の社会保障支出に消費税を充てることで、財源が国債から消費税に転換する部分という意味です。

 今回の自民党の公約は、この4兆円程度のうち半分を、こうした負担の是正(従来の社会保障に充てる)ではなく、新規の歳出増に充てる、しかも、「社会保障と税の一体改革」で使途として合意されていた社会保障4経費(年金、医療、介護、少子化対策)ではなく、幼児教育や高等教育の無償化に充て「全世代型の社会保障」に変えるというものなのです。

 この使途変更が税金に関することだからだとして、今回、選挙までして国民に信を問うということが、解散総選挙の本当に大義名分になるのでしょうか。教育を広い意味での少子化対策と考えれば、「社会保障4経費」の中に少子化対策があるのですから、この合意の精神を大きく変えるものではないでしょう。

 国民に新たな負担を求めるものではなく、その程度の歳出措置の変更なら、毎年度の予算編成や国会審議でのマヌーバーの範囲内ではないかとも思われます。

 「代表なきところに課税なし」の議会政治の基本は、本来、国民に新たな税負担を求める際の原則です。10%への税率引上げは決まっていたことです。2019年10月に実施することは、前回参院選の公約通りです。

 そもそも、かつての2014年の解散の大義名分は増税の延期であり、国民負担の増とは逆でした。このことに野党も反対していませんでした。その時は、2017年4月への延期を掲げました。2016年には、さらにこれを2019年10月へと再延期することになり、同年の参院選では、このことを国民に問うていますが、これも国民負担の増ではありませんでした。

 今度は、国民負担の関係では、決めたことをするだけです。使途を変更して「未来への投資に回す」。毎年度の予算編成では、これぐらいの規模での特別枠を設けて、従来の予算配分の変更を行うのは日常茶飯です。

 ピンと来ていない有権者が多いのではないかと懸念します。

 

●原発は選択肢になっているのか

 希望の党が「原発ゼロ」を打ち出したことで、原発も争点になったとされていますが、本当にそうでしょうか。

 下図をご覧ください。与党自民Gの公明党も「原発ゼロ」を掲げています。自民党も、可能な限り原発依存度を低減させるとしています。共産は明日にも稼働原発まで停止してすぐに原発をゼロにするとしていますが、他の党は程度の差、言い方の差に過ぎないように思えます。

 違いがあるのは、自民党が現実論に立って、責任政党として食言にならない公約をしているということではないでしょうか。どんどん原発を新設して、将来的に原発を必要以上に増やしていこうと言っているわけではありません。

 そもそも電力のエネルギー源を、原子力、再生可能エネルギー、化石燃料に分ければ、その望ましい構成比は思想ではなく、技術的条件によって決まるものだと思います。

 政府は、原子力が総発電量に占める割合を16年度2%→2030年度20~22%としており、この目標達成には全国42基のうち30基の再稼働が必要です。老朽化による廃炉も出てくるため、30年以降、原発の新増設なければ20~22%は維持できません。

 再生エネの総発電量に占める割合は現在15%(大規模水力含む)→30年度は22~24%になっています。

 希望の党は、これを30%にして原発ゼロにするとしていますが、結果として、2030年度は化石燃料の比率が相当上がることになり、二酸化炭素の環境問題が大きくなります。

 また、再生エネはコストかかります。2012年度から買い取り制度で再生エネの普及促進が図られてきましたが、それをさらに強化することで電気代への上乗せが相当増える(国民負担の増)ということも言うべきでしょう。

 また、再生エネは不安定です。原発はベースロード電源として、ある程度不可欠だというのが、上記の政府試算の数字だと思いますが、この点は、ベースロード電源をフランスに依存できるからこそ原発ゼロを掲げることができたドイツとは異なります。

 望ましい構成比率は、①エネルギー供給の安定性、と、②安全性、の2つの変数を極大化し、③経済的コスト、と、④環境への負荷、の2つの変数を極小化させる連立方程式の解として決まってくるものであり、その連立方程式の形は、技術進歩と資源の賦存状況によって決定されるものだと考えます。

 そこには、各政党の理念や思想が入り込む余地はあまりなく、あるとすれば、現実を重視するか、今後の技術革新への夢に希望を寄せるかということであろうと思います。

 

●選択肢は政治スタイルの違いにあるのか

 結局、今回の選挙で3極の違いを求めるとすれば、改憲や安全保障などの国家路線以外の内政面については、政治スタイルの違いということになるのかもしれません。

 一つは、現実論か、変化への期待か、です。

 もう一つは、安倍政権の政治スタイルでしょう。希望Gや立憲Gの側とすれば、安倍政権の驕り、隠ぺい、解散のあり方などを批判し、透明でしがらみない国民本位の政治を選んでほしいということでしょう。これに対し、自公Gの側としては、北朝鮮の脅威、安全保障など、安心して任せられるのは自公政権だけだということでしょう。

 民生や経済に大きな違いがない中で、前述のように違いがあるのは財源ですが、消費増税に反対する野党に対し、自公Gは、野党は財源が曖昧で、実際には実行できない財源論は無責任だ、下手をするともっと大きな国民負担増になりかねないし、安定財源を確保して社会保障の安心を国民にもたらすことこそが大事だということでしょう。

 原発については、将来の脱原発に向けて技術開発が規定する世界について、現実論に立つか、スローガンの違いに期待するかに過ぎないといえます。

 この際、選択の軸は、結局、まともな人を各選挙区から選ぶということしかないのかもしれません。バッジがほしいから、バッジを維持したいからではなく、国政で何かをやるテーマと組み立てを持っているから選挙に出ている人なのかどうか、一人一人の候補者の資質をよく見抜いて投票することが、もしかすると、政党不信の世の中にあって、本当の意味での政治改革につながるような気がしないでもありません。

 いずれにしても、安倍総理が日本の未来を決める選挙としながらも、3極のどれを選べばどんな「未来」がどのように実現するのか、その現実性も含めて、今回の選挙も、また、有権者にとっての選択の機会としては十分ではない選挙になってしまっているように思われます。

 

松田まなぶのビデオレター、第71回は「政権選択選挙、有権者が留意すべき「財源」をチェック」チャンネル桜10月10日放映。