有事に際して日本人のいのちはどこまで守られているのか~松田まなぶの論考~ | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 安倍政権にとって政局的には最も有利な時期と判断された今回の解散総選挙、最初は「自己都合解散」、「もりかけ疑惑隠し解散」などとも言われていましたが、野党の予想を超えた動きと希望の党の盛り上がりで、「こんなはずではなかった解散」になったという声も聞かれます。しかし、その後、野党の側でも、希望の党への民進党からの大量合流など、議席維持、バッジ欲しさの候補者たちの姿が有権者からは「自分ファースト」と揶揄されるようになるなど、与党側が失う票は決定的な数にはならないという見方も台頭しているようです。

 

●国民のいのちの安心と解散総選挙

 私はかねてから、盛んに噂されていた9月解散、あるいは年内解散はない、時期は来年だと見ていました。確かに、国内だけをみれば、民進党がガタガタ、新党は準備不足、内閣支持率も回復して不支持率を上回ったなど、解散総選挙の絶好のタイミンクでした。

 しかし、私が聞いていた情報では、米国による北朝鮮軍事攻撃は年内にもありうべし、です。かつて、湾岸戦争がテレビゲームの如く映し出され、現代の戦争のあり方はこういうものかと多くの人々が驚きましたが、今や、当時よりもさらに軍事技術は進歩し、北朝鮮の軍事施設などを反撃の隙を与えずに、あっと言う間に壊滅させられるそうです。

 一つのシナリオとして想定されているのが、北朝鮮からの何らかの行動などを契機に、国連安保理決議を行い、一応、国際社会からのお墨付きを得た上で米軍が攻撃、ただ、安保理決議には1ヶ月ほどかかるなど調整に時間を要するので、Xデイは今年11月末から12月に入った頃ではないかというものでした。

 トランプ大統領は11月初めに来日し、そこで安倍総理と最終確認、その直後のベトナムでのAPEC首脳会議で中国などアジア各国の首脳に最終根回しをして、戦後の北朝鮮の体制をどうするかまで話し合う、この調整は結構難航するので、軍事攻撃のあとに、外交面で急速な動きが出てくる。

 ならば、解散総選挙は、これらが一段落し、朝鮮半島情勢に一定の方向が見え、これを実績として国民に示しながら、3分の2の改憲勢力が国会にあるうちに、来年夏頃を目処に憲法改正の発議を行い、総裁選の前後に衆院解散、併せて憲法改正の国民投票も実施する…。

 これが安倍政権にとっても最も有利、かつ改憲発議の上でも最も合理的な標準シナリオとしての想定でした。

 私は「9月28日冒頭解散」の報道があった際には、トランプとこれだけ頻繁に電話連絡を取り合い、日本で最も情報が入っている安倍総理は、恐らく、別の判断を持っているのではないかと思っていました。少なくとも、総理自身が解散風を吹かせているのではなく、あの安倍さんなら国際情勢を踏まえた賢明な判断をするのではないか、と。

 ところが、そうではない、と知ったときに真っ先に頭に浮かんだのは、もしや、安倍総理には、逆に、11月に入るまではXデイは絶対にないという極秘情報が入っているのかと思いました。

 ただ、この時期の解散は、しばらくXデイはないというメッセージを北朝鮮に与えることになり、決して好ましいものではないと思ったものです。

 また、たとえそうであっても、北朝鮮がいつ暴発して米国の脅威となる行動に出るかわかりません。10月内に事態が急変しない保証はない。確かに、有事に際しても政府が機能すれば大丈夫と言うことはできるかもしれません。しかし、そのようなときに、国権の最高機関が選挙活動で血眼になっている姿は国民からみて、あるいは国際社会でもどう映るでしょうか。

 本来、政治の最も大事な役割は、国民の生命と財産を守ること。戦後初めての軍事的有事の可能性を前に、政治がその役割を放棄していいのか、有権者の不安を増幅させるような政治空白を作ることなど許されるのか、そんな思いが胸をよぎりましたが、こうした不安は国民を自民党への投票行動に向かわせるという判断もあったのかもしれません。

 国民が政権選択について十分な判断が行えるよう、総理の解散権を制約する国々が増えている中で、日本はもっぱら総理の政局判断に基づく、政権にとって最も形での解散が可能です。前回2014年の解散もそうでしたが、特に今回は、有権者からみれば「大義なき解散」と映っているようです。国政上の大きな選択を迫られているわけでもなく、北朝鮮情勢の不安がこんなに高まっているときに、なぜ、という国民の素朴な声は無視できません。

 しかも、改憲を歴史的使命として背負っているはずの安倍政権のもと、せっかく与党で改憲に必要な3分の2以上の議席を確保しているのに、これを確実に減らす状況が強まっている今回の総選挙、なぜ?、安倍総理は判断を誤ったのでは?との声も聞かれます。

 ただ、今回、与党が3分の2を失っても、希望の党や維新を加えれば、改憲発議に必要な3分の2は、自民主導が目立たない形での改憲発議を可能にすることになりますから、改憲はより現実化するのかもしれません。

 そうだとすれば、かつて野田総理が民主党の議席を犠牲にして消費増税の道筋をつけたと同様、安倍総理は自民党の議席を犠牲にしてでも改憲という国家の大事業を成し遂げた名総理として歴史に名が残ることになるのかもしれません。ならば、したたかな偉大なる宰相です。

 いずれにしても、選挙期間中も政府が機能しているから有事があっても大丈夫、というのが安倍政権の説明です。ならば、有事対応について日本ではどんな体制が整備されているのか。

 

●有事の際に政府はどう機能するのか

 いざ有事に際して、日本政府はどう動くのか、備えはどうなっているのかについて、以下、4つのパワーポイントで簡単にまとめてみました。

 ミサイル攻撃を防ぐためには、最も確実な方法として、発射前に叩く「敵基地攻撃論」が出ています。これについては、座して死を待つ選択肢はないとの合憲論はあるものの、現行憲法の専守防衛のもとでは困難との考え方が牢固として存在します。

 いずれにしても、日本のミサイル防衛は、発射から大気圏外到達までのブーストフェイズの次の段階、つまり、大気圏外を飛翔するミッドコース段階からのもので、これに対してはイージス艦からのSM-3が迎撃、その次の大気圏内突入後のターミナル段階では、地上配備のPAC-3が迎撃することになっています。

 迎撃能力向上のため、イージスアショア(ミッドコース段階でも地上からSM-3で迎撃)やサード(THAAD、ターミナル段階でも大気圏外などの高高度のうちに地上から迎撃)の導入などで、シームレスな防衛を可能にすることが検討されています。そこまで行けば、かなり完成度が高くなる(サードは米国での実験では100%迎撃)ようですが、現状で完璧かどうか、さらに、サリンなど化学物質、電磁波、サイバー攻撃などに対してはどうするのか、本当に大丈夫なのか、論点は尽きません。

 次に、実際に攻撃がなされたらどうするのか。日本には一応、国民保護法制があり、総理大臣が対処基本方針を定めて閣議決定することで「武力攻撃事態」などが認定され、避難、救援、被害最小化の3つを柱とする国民保護法が発動されます。これは国会が事後承認すればよいので、確かに、衆議院が解散されていても政府だけで対応できるようです。

 その具体的な措置は、国による指令を受けて、主として地方自治体が遂行します(特に市町村の役割が大)。

 こうした措置を実効あらしめるためには、ふだんからの備えが大事です。地方公共団体には体制整備や訓練の実施などが求められています。緊急情報を住民に知らせる仕組みとしてJ-アラート(全国瞬時警報システム)が作動することになっています。ミサイル落下時に国民はどう行動するか、日本政府は「国民保護ポータルサイト」などを通じた周知に努めていますし、地方自治体による日頃からの避難訓練も重要な要素になっています。

 以上は政府の説明ですが、これで十分に安全安心を感じられる国民はそう多くないでしょう。核ミサイルが実際に日本に着弾したら、現実にはどうしようもないと思います。多くの国にある核シェルターなどもなく、空気と安全と水はタダの戦後日本は、戦後初めての事態に直面しています。

 もちろん、憲法上の制約で国防の基本部分が米国依存という構造的な問題があります。しかし、それ以前に、そもそも日本には、防災などの危機管理の仕組みが他の先進国に比べても未整備という根本的な問題があります。

 

●そもそも防災の体制ができていない日本

 日本は世界有数の自然災害国であり、今後ますます災害は激甚化していく流れにあります。東日本大震災のあと、太平洋プレートが変化したとされ、少なくとも首都直下型地震や東南海大地震は確実にやってきます。気候変動の影響か、気象の動きも激化し、スーパー台風がもし東京を襲えば、東京に大津波が押し寄せ、浸水で首都機能は破壊され、復興も困難になるという予測もあります。

 ところが、災害大国の日本の防災は、日頃から消防が、有事のときは自衛隊ががんばってくれていますが、米国などのシステマティックな防災体制と比べると、竹槍で戦うようなレベルだと指摘されています。

 米国にはFEMA(Federal Emergency Management Agency:連邦緊急事態管理庁)があり、災害対応の特殊部隊が整備されています。英国やドイツでも、いざという時は政府から専門部隊が自治体に派遣され、首長を指揮するそうです。

 日本にも「総合防災庁」(仮称)を設立して、自衛隊、消防、警察から選抜された災害救助などの専門の特殊部隊を創設することを、私も同志の方々とともに働きかけていくつもりです。

 政府の機構だけではなく、実際の被災地で、その受け皿となる仕組みや、指揮命令系統がしっかりと確立していなければなりません。

 また、災害が起こった時に命に関わるのは、発災の瞬間にどうするかですが、それも含め、日本には日頃からの防災教育がありません。戦前までは行われていた防災教育は、戦後、GHQによって禁じられたそうです。日本人が団結して脅威に対抗することを米国が恐れたからでしょうか。日頃からの防災教育がなされていれば、大震災でもどれだけのいのちが救われたかと言われます。

 私の仲間が働きかけて、ようやく学習指導要領に防災教育が盛り込まれるようになりました。今後、この中身を真に実践的、科学的、近代的な内容にしていくことが課題です。

 大事なのは地域コミュニティです。阪神淡路以降の激甚災害の経験では、命が助かる上で最も大事なのは、もちろん、その瞬間での本人の行動ですが、発災後に生存確率を高める要素は、第一に家族、第二に地域コミュニティであり、行政はあまり頼りにならないようです。

 前記のとおり、有事に際して最も大きな役割を担うのは地方自治体ですが、その肝心の自治体の体制が脆弱なようです。その専門知識を持つ私の仲間の話では、被災地では決まって同じような混乱が繰り返されているそうで、例えば、ボランティアの活用、配置にも莫大な時間がかかっているようです。

 その方が調べたところ、日本の市町村のほとんどが、激甚災害に際しての業務継続計画(自治体版BCP)すら存在しない、あるいは整備状況が不十分だということです。

 何よりも大事なのは、日頃から、近代的でシステマティックな知見と技術とノウハウに基づいた地域防災コミュイティをきめ細かく構築し、これをネットワーク化し、指揮命令系統を確立していくことです。

 災害大国であるのに、その体制すら不十分な日本。日本人のいのちの値段は世界一安いのか、防災すら遅れている国がミサイル防衛、国防など覚束ないのではないか…。

 「想定外」と言わせないだけの危機管理、リスク管理、防災、いのちの安全安心は、これからの政治の最大のテーマになり、新しい国づくりの理念にもなっていくと思っています。それに向けて、私も、いま本格化している自らの諸活動を軌道に乗せてまいります。

 

 さて、最後に、私事になりますが、私の国政復帰を期待する多くの方々から、今回の衆院選には出馬しないのかと問われています。諸般の事情もありますが、私としては、単にバッジを取り戻すだけの国政復帰ではなく、国政で何をやるかの組み立てを伴った形での意味ある国政復帰でなければならないと考えています。そうでなければ長続きもしません。

 いま、人類社会は次の局面に向けた大きな転換点にあります。私がいま、取り組むことになった諸活動は、いずれも、これからの文明や日本の国のあり方、人々の生き方などに関わる重要なテーマを根幹にするものとなっています。上記の防災ネットワークの構築もその一環をなすものですが、まずは私自らがこれらを軌道に乗せ、国政にきちんと反映させられるだけのものを築く必要があります。国政復帰は、その先に必ず描かれてくるものと考えます。

 その内容は順次、発信してまいりますが、これから皆さまと一緒に、私たちの未来を創り出す活動に邁進していきたいと思っております。

 

松田まなぶのビデオレター、第70回は「まさかの解散総選挙、有事の国民保護はどうなっている?」チャンネル桜9月22日放映。