松田まなぶのビデオレター、第12回は「金利と経済成長率と人口高齢化の不都合な真実」 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

 このところ、ビデオレターで財政の厳しさを説明している私、松田まなぶは、やはり財務省の手先ではないかと批判を受けているかもしれません。しかし、Warm HeartとCool Headの両方が必要。まずは現実を直視しないと、財務省的財政再建の論理を超えることなどできません。敵はそれだけ手ごわいことを、私だからこそ、よく知っています。ただし、本物の敵は、財務省ではありません。彼らは経理部としての立場があります。会社でも厳しいことを言う経理部が必要でしょう。大事なのは、それを超えるトップマネージメントです。私たちの本物の敵とは、既存の枠組みにとらわれた思考の硬直性と、それを克服するだけの力量や見識が政治に不足していることではないでしょうか。
 安倍政権は2020年度プライマリーバランス達成目標に向けた財政健全化計画を発表しましたが、具体策は避けました。どうも、実現困難な目標を設定して、自分で自分の首を絞めて苦しんでいるようにみえます。
 
 第12回「金利と経済成長率と人口高齢化の不都合な真実」チャンネル桜、6月30日放映。(動画では表題に「生産年齢人口」と出ていますが、「人口高齢化」のほうが適切です。)
こちら↓をクリックすると、今回の松田まなぶの動画を見ることができます。

 今回の動画は、内容に比してやや時間不足の中で、あちこち論理が飛んだので、少し分かりにくかったかもしれません。以下、ここで言っていることを少し再整理してみました。
 すなわち、安倍政権は目標達成のために、17年4月に消費税率を10%に上げ、名目で3%台後半まで経済成長率を引き上げても目標達成に不足する9.4兆円を、それ以上の消費増税によらずに歳出抑制などで埋める方針を示しています。しかし、これだけの規模の歳出を削るとすれば、年金の大幅カットか、医療や介護の自己負担を大きく増やすかしか解決策はなく、それも国民負担の増大にほかなりません。恐らく、政治的に困難でしょう。
 ただ、プライマリーバランスそのものは財政再建の本質ではありません。より重要なのは、政府の債務残高が名目GDPに比してどの程度の規模かを示す「公債等残高の対GDP比率」が低下に向かうことです。安倍政権は政府の「中長期の経済財政に関する試算」(本年2月)で、上記の9.4兆円の穴が開いたままでも、この比率が低下していく姿を23年度までは描いてみせました。これは、国民に社会保障給付の大幅削減という痛みを迫らずとも、財政は大丈夫だとの言い訳にもなるものです。ただ、そこには、アベノミクスによる「力づくでの金利抑制」が、23年度までは国債金利を抑えるマジックが隠されています。
 そもそも、国債の金利が成長率より低い状態さえ続けば、財政は改善していきます。問題は、現在のような日銀による「国債爆買い」が、いつまで持続可能かです。上記の政府試算も、20年度以降は市場金利が成長率を上回るノーマルな状態に戻ることを想定しています。これは数年かけて国債の金利に反映されていきます。23年度から先が問題なのです。
 しかし、これは私も国会で取り上げたことですが、政府は24年度以降の試算を公表してきませんでした。ちょうど、その頃には、団塊の世代が全員、後期高齢者世代に入り、年金に加えて医療や介護が財政を大膨張させていくことにもなります。
 昨年春に政府の財政制度審議会に、2060年度までを推計期間とする長期試算が提出されました。そこでは、名目3%の経済成長が永続するとの前提のもと、たとえ20年度にプライマリーバランスを達成しても、その後の数年間でさらに46兆円もの収支改善努力をしなければ、公債等/GDP比率の上昇が止まることはないことが示唆されています。この数字は消費税率換算で15%分にも相当する、かなり衝撃的な「不都合な真実」です。単純計算では、消費税率は25%を超えることになります。努力の全てを消費増税に求めなくても、先の9.4兆円なども合せれば、今後10年の間に、歳出の削減か増税によって、財政面からの日本経済への負荷が60兆円規模で発生する計算になります。
 恐らく日本経済はこれに耐えられないでしょう。3%の名目成長率どころではなくなると思います。経済財政運営の枠組みを大きく転換する以外に、解決策はないでしょう。
私、松田まなぶがこれから迫ろうとしているのは、この領域です。