松田まなぶの論点 交通インフラに問われる税負担の論理の明確化と全体設計 | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

~道路特定財源とJR北海道問題~
5月30日 国土交通委員会・一般質疑
松田まなぶの質問のポイント 答弁者:太田昭宏・国土交通大臣、政府参考人(総務省、国土交通省)


Ⅰ.「道路特定財源」の負担
・田中角栄元首相らの議員立法で揮発油税が道路特定財源になったのは1954年。
・その一般財源化とともにいったん廃止された暫定税率。実際には今でもそのまま残っており、少なくとも4つの言い方…①旧暫定税率、②暫定税率、③特例税率(国税庁)、④当分の間税率。これが本税金の性格の曖昧さを象徴。
・無論、財政再建は重要。だが、一般財源化されたのであれば、そのための負担は広く国民が公平に負うべきだということになる。
・自動車利用者に多く負担を強いるのであれば、納得しうる十分な説明が必要。

(問)地方税である軽油引取税は道路特定財源として、道路を使わない船舶用や農業用は課税を免除されていたもの。本税の一般財源化とともに免除の根拠自体がなくなっているのではないか。こんにちにおいて、陸運業と他の業態との間での税負担格差を正当化できる理屈は何なのか。
⇒答弁(政府参考人、平嶋彰英・総務省自治税務局審議官):一般財源化の趣旨も踏まえて、道路に直接関係しない用途に供する軽油の課税免除措置は根拠が乏しくなっているという考え方のもとに、今年度で期限切れの本措置を来年度から廃止していただくことが原則となるということを前提としながら、議論してまいりたい。



(参考)自動車関係諸税のうちトラック運送業界の納税額(平成25年度)
 軽油引取税 徴収額9,233億円 うちトラック運送業界5,145億円
 諸税合計  徴収額76,752億円 うちトラック運送業界6,994億円
(参考)平成25年度補正予算では、燃料高騰に苦しむトラック運送事業に対して50億円規模の支援策や、高速道路料金の大口・多頻度割引が最大5割まで拡充された。また、地球温暖化対策税の還付措置の適用についても、エネルギー特別会計から、平成26年度、27年度それぞれ61億円の補助金の措置が講じられることとなった。

(問)トラック運送事業は物流市場規模の約6割を占め、「生活(くらし)と経済のライフライン」として、国民生活や産業に不可欠の重要な社会システムの一つ。それ自体、公益性が高く、トラック運送のコストが上げれば、それは国民負担へと転嫁され、日本の産業競争力の低下にもつながる(日本への直接投資阻害要因としては、人件費とともにインフラコストの高さが海外からも指摘されてきたところ)。石油価格が高騰する折には、税負担の面でコスト軽減を図ることも成長戦略の上で重要ではないか。そもそも道路特定財源が一般財源化されたことにより課税の根拠が薄らいだことにも鑑みれば、ガソリン税(揮発油税など)や軽油引取税の暫定税率の撤廃、あるいは引下げを行うべきではないか。国土交通省から税制改正要望が出されていない理由如何。
⇒答弁(政府参考人、田端浩・国土交通省自動車局長):ご指摘の、燃料高騰によるトラック事業者の負担軽減については、これまでの支援方法をきちっと充実して進めてまいりたい。税制の関係の撤廃または引下げについては、トラック業界などから要望があることは承知しているが、平成25年12月17日の質問主意書に対する政府答弁(厳しい地方財政事情の中で被災地復興などの相当な財政需要が発生している中にあっては適当ではない)が出ている関係上、国土交通省として税制改正要求を出していくことは困難。
⇒(松田):燃料費の高騰で特に苦しんでいるのは、中小零細の運送事業者。
他方で、道路財源が必要との地方の声は強く、暫定税率廃止には反対意見も強い。
・しかし、道路の様々な外部経済効果に鑑みて、その受益は一般国民に広く及ぶと考えれば、道路関係の負担は広く国民に負担を求めるべき→一般財源化は本来、こうした理屈のはず。
・他方で、インフラ老朽化対策など莫大な資金需要があるのも事実。



(問) 道路の「暫定税率」は今後とも基本的に存続させる方針なのか。存続させるとすれば、その根拠はどのような説明になるのか(道路整備は未だ不十分とするのか、維持補修などの新たなニーズ、環境対策など他の目的を設定するのか、その他)。一般財源化の趣旨に照らして、どのような説明になるのか。大臣の所見を問う。
⇒答弁(太田国土交通大臣):防災や減災や老朽化対策の必要性、あるいは道路があることによって産業が得られるメリットもあり、そのメインテナンスや整備の必要性は間違いないが、税制について国土交通省としてどう位置付けるかは所掌外であり、答える立場にはない。
⇒(松田):まず、制度を所管する省庁の大臣として、所管の税制についても、ちゃんとした見識をもっていただければということで答弁を求めた。ぜひ、きちんと考えていただければと思う。



Ⅱ.JR北海道
・「主要矛盾」は何か。異常事態に陥った根本原因。
・JR北海道が発足した1987(昭和62)年度から直近の2013(平成25)年度までの各年の経営安定基金運用益+機構特別債権受取利息と線路・電路・車両保存費→両者の間には完全な相関関係。
・JR北海道は、経営安定基金の運用益の低減とともに、会社を倒産させないためには保守費の投入を減らさざるを得なかった。
・民営化後四半世紀のJ北の営業実績
:ほぼ同じ規模の鉄道事業を維持。営業損益は▲500→▲300程度に。
 経営安定基金運用益は▲500程度→▲250程度に。最近は機構特別債券受取利息+50
 ⇒純損益ほぼトントン
…これは、基金の運用益の減に相当する経費節減努力により赤字を減らすことで対応。
 それを象徴するのが社員数 1万3千人→7千人と▲6千人。
・JR北海道の島田社長は就任記者会見にて「安全に対する、人、もの、金の投入が結果的に不十分だった。」と発言。代々の経営陣の経営判断が誤りであったと認める勇気ある発言。
・昨年11月22日の衆院国交委にて、せっかく松田が「人員も少ない中でいかに安全投資をしていくかという点において、どんなに頑張ろうとしても、やはり収益状況が厳しければ、本来やるべきものであったけれどもどうしてもできなかった部分、もっとやりたかったけれどもやはりできなかった部分というのが本当はあるんじゃないかと思いますが、社長、いかがでしょうか。」と助け舟を出したのに、当時の野島社長は事なかれの官僚答弁をし、非常に残念に感じていた。



(問)JR北海道について、「安全に対する、人、もの、金の投入が結果的に不十分となった」(同社の島田社長就任記者会見)の根幹的な原因は何であると認識しているか。(大臣)
⇒答弁(太田大臣):経営基盤について、おカネが足りないという面もあるが、それだけではないので、経営基盤という点も含めて対応することを考えている。
⇒(松田):そもそもの仕組みに根本問題。さらに、その背後には運輸政策の問題。
・1985(昭和60)年に発表された『国鉄改革-鉄道の未来を拓くために-』(国鉄再建監理委員会意見)にて、国鉄経営が破綻した第1の原因として「外部からの干渉」を挙げ、具体的な事象として政治家による運賃の抑制とローカル線の押付けを指摘。そして、交通機関間の役割分担については、「各交通機関の競争と利用者の自由な選択が反映されることを原則とすべき、とされた。極めて合理的な考えだった。
・しかし、その後、「外部からの干渉」を受け、それに反した運輸政策が繰返された。民主党政権の高速道路無料化がその典型。受益者負担の原則をないがしろにし、国家が税金を投じて各交通機関の自由競争を損ない、鉄道やバスやフェリーでなく自動車を利用することを奨励したもの。
・もし仮に、北海道の道路・空港・港湾の建設・維持・運営の費用が利用者負担を上回る金額を赤字と称するとしたら、いずれも大きな赤字。巨額の赤字でも問題は生じず社会的に持続できるのは、それでも資金が回る仕掛けとしているから。
・「責任」に対応する言葉としては、responsibilityと、accountabilityがあり、前者が職務の結果がおもわしくない場合に非難を引き受ける意味なのに対し、後者は、一定の職務について説明すべき権限と義務とを排他的に引き受け、違法あるいは不当な業務執行について然るべき事後措置を講じるという意味での責任を意味する。



(問)もう一つの根本原因である高速道路政策も含め、JR北海道の問題の根本原因は国の運輸政策の問題に帰着するのではないか。道路、空港、港湾の建設・維持・運営の費用が利用者負担を上回るとすれば、いずれも赤字になるのであり、国として、それでも資金が回る仕組みを構築すべきことは、鉄道の場合も同じなのではないか。

(問)「責任」に対応する言葉としては、responsibilityと、accountabilityがあり、JR北海道の経営陣が非難を引き受ける形で前者を果たすとすれば、国としては適切な事後措置を講じることで後者を果たすべきであり、それは問題の根本原因であるJR北海道の経営基盤そのものを強化する仕組みを構築することであり、その案を国会の場に示すべきではないか。
⇒答弁(太田大臣):JR北海道は必ず現状の中で立ち直れるという判断をして、さまざまな応援をしてきたところ。経営基盤強化についてもさまざまな指示をしてきた。今度は、広く言うと、JR北海道を超えて、北海道全体の産業、空港、港湾、観光、鉄路、こうしたこと全体の中で、北海道全体の産業振興の中でJR北海道というものが位置づけられて戦略が組まれていくことが大事。
⇒(松田):昨年成立した交通政策基本法が財源なき理念法では機能しないと言われているようなことにならないよう、いまの大臣の最後のご認識について、具体的な肉付けをアカウンタビリティーとして果たしていただきたい。