松田まなぶの論点 農政と農協のイ農ベーション | 松田学オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日本を夢の持てる国へという思いで財務省を飛び出しました。国政にも挑戦、様々な政策論や地域再生の活動をしています。21世紀は日本の世紀。大震災を経ていよいよ世界の課題に答を出す新日本秩序の形成を。新しい国はじめに向けて発信をしたいと思います。

~4月17日衆院農林水産委員会(「農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案」の審議)での質問のポイント(対林芳正・農林水産大臣)~

〇政府が進める4つの農政改革
・農業を強い産業にする産業政策…①農地中間管理機構の創設、②経営所得安定対策の見直し、③水田フル活用とコメ政策の見直し
・多面的機能の維持発揮を図るための地域政策…④日本型直接支払制度の創設
⇒今回の法案は、これらのうち②と④に関するもの。
⇒上記4つの改革によって、これまでの制度のどこが変わることにより、
 1…多様な担い手の参画が進展するメカニズムはどう説明?
 2…農業の生産性向上に資するメカニズムはどう説明?
 3…消費者に及ぼすメリットのメカニズム(維新は一般国民、消費者の立場⇔生産者視点や集票を意識した政策)

近年の農政は集票を強く意識した政策⇒農政を消費者がステークホルダーであることを前提にした政策へと転換(⇒ひいてはこれが農業を再生)



〇関税の段階的撤廃と直接支払の組み合わせこそが最大の農業保護策。
(問) 日本農業の国際競争力を規定している要因は、農家一戸当たりの平均面積とは言い切れないのではないか。

・品質競争力でいえば、コシヒカリに代表される日本のコメは、米国も豪州も、日本の脅威になるほどの大量生産は困難。
・農家一戸当たりの平均面積を比較すると、日本が2.2ヘクタール(一桁)に対して、EUは14.1(二桁)、米国は169.6(三桁)、豪州はなんと2,970.4(四ケタ)ヘクタール。
・しかし、農家の規模だけで決まるものではない。そうなら、EUの農業も豪州との競争で壊滅しているはず。農林水産物と食品の輸出額第1位は米国、第2位は、国土の狭いオランダ。イタリアも日本より国土が狭いのに、日本よりもはるかに多くの輸出額。
・零細であることが農業保護の手段を高い関税に頼る必然性はそもそもない。



(問) 農政はTPPで関税撤廃の聖域を守る方向を向いているが、海外との間に農業の生産性に差があるのであれば、国境措置という方式によって外国農産品と競争させない保護政策ではなく、
財政方式でゲタをはかせて競争させ、競争によって生産性が高まる度合いに応じてゲタ(財政負担)を低くしていく方式による保護のほうが、結果として農業を保護することになること、
これと並行して、生産性の向上に応じ、例えば15年以上の長期にわたり、徐々に関税を引き下げる関税撤廃を行うのであれば、農業が打撃を受けることにはならないこと、
⇒なぜ、農業関係者を説得しなのか。
●逆に、こうした長期にわたる段階的な措置によっても農業が衰退傾向から脱することができないようでは、日本の農業に未来はないのではないか。


〇農業に未来を拓く南足柄市の取り組みを全国へ。
・担い手の高齢化、耕作放棄地の拡大⇒このままでは日本の農業が崩壊することは、真面目な農業従事者のほとんどが認識。
・農業が産業としての魅力を高め、有為な担い手が参入する分野になる必要。
・しかし、農業は個人にとっても企業にとっても参入が困難。
・「職業選択の自由」なし。親から農地を引き継いだ人。やる気のある人とは限らない。
・これは産業としての農業ではないが、「農ある暮らし」 
・国際競争力強化のための大規模化だけが農業の課題ではない。国民の「厚生」、人々が新たな価値創造や生き甲斐を追求することで得られる国民幸福度、ナショナル・ウェルフェア。経済活性化につながる。経済的価値と人間的価値を両立させる道。農業は重要な分野に。
・南足柄市では、都会のサラリーマンなど普通の市民を農業に呼びこんで、最初は市民農園、そして市民型農業へ、さらには新規就農へとステップアップすることで、農業の担い手を確保する画期的な仕組みを営んでいます。古屋富雄氏は、『兼農サラリーマン』、『イ農ベーション』といったコンセプト。



(問) 神奈川県の南足柄市が一般市民を農業の担い手へと呼び込む仕組みをつくり(参考参照)、注目されているが、それが全国に普及していない理由は何だと考えるか。このようなチャレンジをモデルケースとして国の農政がバックアップすべきではないか。
(注) 南足柄市の仕組み(都市部市民を営農に呼び込み、耕作放棄地を減少させる)
①南足柄市新規就農基準:本格的な農業経営を目指す人のための制度。農地の利用権を設定(農業基盤強化促進法)。所有権は移転せず。農地を貸しやすくなる。賃貸借契約。
②市民農業者制度:自立までは目指さないが販売はしてみたい人、定年後に農業を始めたい人。農地のすべてを常時、効率よく耕作することが条件。①へのステップアップが可能。
③市民農園の利用:一区画を借りて気軽に農業を体験。②へのステップアップも可能。
 新しく農業を始めたいサラリーマンに対しても、市民農園の活用(一般市民3a未満)→市民農業者制度(定年退職など3a~10a)→新規就農基準(就農希望者や法人)10a以上、という道筋を開いた。09年の農地法改正で、農地を取得する際の下限面積50aを緩和し、地域の実情に応じて自由に設定できるようになったことを、南足柄市農業委員会が活用。

[なお、本質疑の土台となった南足柄市の取り組みについては下記の4つの私のブログ記事をご参照ください。写真満載です。]
☆松田まなぶ 南足柄の「イ農ベーション」、ウェブ取材
☆松田まなぶ 南足柄の農業 tvkで番組収録
☆松田まなぶの論点 農業へのチャレンジinカナガワ
☆松田まなぶ もう一度、南足柄市で農業のテレビ取材

〇産業としての農業…農業マイスター制度の導入
・ドイツのマイスター制度…ドイツの産業発展に大きく貢献。
・就職しながら職業学校に通い、訓練を経てマイスター試験。法律で差だけられた職種はマイスター資格がないと開業できない。
・マイスターの職種の一つに「農家」 
・その資格をとるためには、農業学校を卒業して試験に合格する必要。
・「農家」の資格がなくても農業はできるが、現代農業は様々な専門知識が必要なため、基本的にきちんと農業をやろうとしている人たちは、ほとんどがマイスター。
・ドイツではマイスターになって初めて見習いを雇える。マイスターでない人の所で見習いをやっても資格につながらない。
・ドイツではマイスターになればステータスが高く、社会的に尊敬。
〇日本に取り入れる意義
・日本の農政も、TPPを契機に、いよいよ直接支払方式への流れ。同じ財政負担であれば、やる気と能力のある農家に。
・今般、交付金(ゲタ対策、ナラシ対策)の交付対象を、面積要件を外して、認定農業者や集落営農に加えて認定就農者としたのは、マイスター制度への第一歩のようにも見える。
・どうせなら、農業を誇りある専門職業の形で再定義し、各地域が描く農業の姿を実現する担い手として遇する、それを市町村がチェックする。
(問)日本の農政も欧米などでは主流の直接支払(財政方式)へと転換していくとすれば、日本にもドイツのような「農業マイスター」制度を創設して、意欲と能力のある担い手に国の支援(直接支払)を集中することで、担い手の確保や多面的機能の発揮などの政策目的を達しつつ農業を再生する道を考えてはどうか。

・戦後保守政治の地盤だった零細農家。
・零細農家を基本とする農業システムがグローバル化などの潮流の中で行き詰まっていることも、「戦後システム」の行き詰まりの一つ。戦後の農地解放は農地の所有を地主から解放したが、いま必要になっているのは、農地の所有や利用を零細農家から解放する「第二の農地解放」。
・様々な営農形態、様々な農地所有あるいは利用形態のもとで、農業の中核を担うのはマイスター資格を有する者という姿にしてこそ、真にやる気のある担い手や、その後継者が確保。



〇農協に新たな存在意義を。
・南足柄市では農協幹部が、新しい担い手を呼び込むことの重要性を強調。「TPPなんて乗り越えなきゃダメだよ」と。
・「壊す改革」では人は動かず。人間誰しも、自ら背負ってきた人生があり、それを否定されれば目前の「小さな幸せ」(既得権益)にしがみつくだけ。新たな「大きな幸せ」を描くことで、当事者が納得して前に進んでこそ、本当の改革が実現する。
・農協が新たな道と存在理由を見出すような「組み立てる改革」を。
・やる気のある人は、課題にきちんと向き合っている。
(問)農協のあり方、存在理由を再定義すべきではないか。その上で、農水大臣としてどのような構想を描いているか。例えば、農業に新しい担い手を呼び込み、その営農を指導・サポートし、プロの営農家へと育成していくことを含めて、農業を農村活性化の「地域マネージメント」の対象としていくことを、農協や農業委員会の役割として再定義すべきではないか。

◎必要なのは、10年先、20年先の日本の農村の姿や農業のあり方のビジョン。
(問)林大臣ご自身はどのようなビジョンを描いているか、国民に語ってほしい。
・その実現に向けたロードマップを描き、合意を形成する政治を
・日本の未来を競い合う政治へ