衆議院予算分科会第五分科会 質疑及び答弁のポイント
集合住宅に係る訪問診療の診療報酬引き下げについて
(松田まなぶ)
・今回の診療報酬改定では、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホー ム等の施設向けの訪問診療に関して「同一建物」の項目が新設され、従前より報酬が大幅に、科目によっては4分の1まで引き下げられた。これにより在宅医療に関連する業界は大きな打撃を受けるとの声が出ているが、なぜ、このようなことが突然決定されたのか。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140301/14/matsuda-manabu/0a/f4/j/t02200124_0800045012861420715.jpg?caw=800)
(田村憲久 厚生労働大臣)
・新聞報道等で、医者と施設を紹介して手数料ビジネスみたいなことが行われているという話があり、色々と調べてみると確かにそういう事例があり、短時間のうちに何十人も診療して荒稼ぎをするような形態がある。しかも、それを手数料としてバックしているという報道もあり、国会でも色々なご指摘を頂く中において、中医協の中でご議論を頂いて、その方針にのっとって決定をさせて頂いた。
・確かに、言われる通り大きな変化なので、これからも丁寧に関係者の方々にお話をお聞かせ頂いて、場合によっては見直しも含めて検討させて頂く。
(松田まなぶ)
・不適正事例があることは承知。集合住宅で訪問診療をしている方々は志が高く、住民のニーズにもきっちりと応えている。不正は不正としてきちんと摘発していくことは必要だが、根っこからこれができなくなってしまうことについてはご配慮を頂いた方がよいのではないか。
・ビジネスというと語弊があるかもしれないが、新しいビジネスに対して既得権益の壁ができる一つの例であるという感じもしないでもない。不正事例があるのは事実だが、一方で真面目にやっている人たちもいる。こういう関係者からも意見をお聞き頂くと大臣におっしゃって頂いたので、ぜひ、しっかりとお聞き頂いて、必要な措置を取って頂くよう、お願い申し上げます。
ドクターヘリについて
(松田まなぶ)
・ドクターヘリについては致命率の向上、後遺症の激減、広域の救急医療圏の確立や地域格差是正等様々な効果が期待されているところ、平成19年に議員立法で「ドクターヘリ特別措置法」が成立し、附則第2条ではドクターヘリを用いた救急医療の提供に要する費用のうち診療に要するものについて、この法律の施行後3年を目途として、国は診療報酬の対象化も含めた検討を進めることと規定されている。また、超党派のドクターヘリ議連による同趣旨の決議が出されているにもかかわらず、これまでほとんど検討された形跡が認められない。
・現行では、国が半分ぐらい出して、残りを特別交付税ということで、かなりの部分を面倒見ているということで、財源面では国や自治体というところが主導権を握っているが、病院の判断で自主的な導入促進ということをやっていく上では、やはり診療報酬の方がいいのではないかという議論もある。
・また、ドクターヘリを使うと救急車に比べて入院日数とか入院点数も大幅に削減されるという試算もあり、医療財政にとって大きく貢献する。さらに、現在日本では43機導入されているが、もし、ドイツ並みに全国をカバーするとした場合でも(80機必要と言われている)、国民1人当たりで大体年間130円程度とされており、これは財診療報酬全体の0.04%ぐらいの金額であり、それらを色々と勘案すれば、診療報酬でもよいのではないか。
・かつ、搬送費も診療の不可欠の前提として、それも含めて医療保険で面倒を見るべきではないか。
(田村憲久 厚生労働大臣)
・私も議連の役員であり、そのような議論もさせて頂いたが、やはり保険者にも色々なご議論があり、難しいということで助成をしながら対応しているところである。ただ一方で、救急搬送の診療料などに関して、附則第2項の検討もふまえて引き上げをするなどの措置をさせて頂いている。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140301/14/matsuda-manabu/9a/2d/j/t02200124_0800045012861420716.jpg?caw=800)
・言われるとおり、ドクターヘリがさらに必要なところにふえて、全県配備されていけば、救われる命が確実に増えると期待をしている。議連のメンバーの一人としても、そういう思いの中で先生の御質問にお答えをさせて頂きます。
(松田まなぶ)
・ドクターヘリの配備について、ドクターヘリが一機体制の県にとっては、重複要請があった場合に十分応えられないこともあるので、できれば複数機のドクターヘリが配備されるべきと考えるが、この対策の一つとして、ほぼ全ての都道府県に最低1機配備されている消防防災ヘリを併用活用していくことが考えられるが、そういった検討を厚労省は行っているか。
(赤石清美 大臣政務官)
・厚労省としても、必要に応じて消防防災ヘリも活用し、傷病者の搬送を効果的に進めることが重要と考えている。消防庁の調べによると、消防防災ヘリについては、平成24年度における救急出動が3,246件と、全出動の5割以上となっており、必要に応じて、医師の同乗のもとで消防防災ヘリの活用が図られていると認識している。
また、厚労省としては、ドクターヘリの要請が重複した場合等に備え、ドクターヘリ及び消防防災ヘリの要請を受ける窓口を一本化し、一体的かつ効率的な運用をしている事例を情報提供するなどの取り組みを行っている。
引き続き、消防庁とも協力しながら、より効果的な傷病者の搬送が進められるよう、取り組んで参りたい。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20140301/14/matsuda-manabu/99/0d/j/t02200124_0800045012861420713.jpg?caw=800)
(松田まなぶ)
・ドイツでは救急要請の通知を受けてから治療を開始するまでの時間(レスポンスタイム)が15分ルールとして各州で法制化されている。日本でも同じようなルールを法制化すれば、計画的なドクターヘリの推進、地域住民の安心といった点で効果があると思われるが、見解如何。
(赤石清美 大臣政務官)
・厚労省としても、適切かつ迅速な救急患者の搬送、受け入れを行うため、様々に取り組みを行っている。ドクターヘリの運航については、日本航空医療学会による平成24年度の調査では、ドクターヘリ要請から現場着陸までは平均16分であると承知している。また、ドクターヘリのさらなる迅速な出動を進めるため、昨年11月には、災害時などの緊急時において、消防機関からの依頼を待つことなく、迅速にドクターヘリを現場に着陸させることができるよう、運用の改善を図ったところである。
(松田まなぶ)
・東日本大震災の時にはドクターヘリが大活躍をしたところであるが、国が定める防災基本計画にはドクターヘリについての記載がない。近い将来、首都直下地震とか東南海大地震などが予想される中で、ドクターヘリを防災基本計画に位置づけて、それを例えば防災業務計画とか地域防災計画にブレークダウンしていくことが必要ではないか。
・同時に、大規模災害時にドクターヘリを統一的、機動的に運営していくために、消防防災ヘリの場合は消防組織法に基づいて消防庁長官が出動指令をするという体制ができているが、これについても、ドクターヘリも同様な法的な仕組みが必要ではないか。
(田村憲久 厚生労働大臣)
・今まで、東日本大震災のような大規模な災害のときにドクターヘリの運航をすること、これに対してのルールというものも何もなかったが、昨年の11月に、国の要請で各都道府県に対してドクターヘリを出して頂けるような、そういう派遣要請ができるようにしたところである。
(松田まなぶ)
・議連の決議内容でいまだ十分に実現されていないものとして、将来、不足が懸念されているドクターヘリパイロットの確保について、現在の検討状況如何。
(赤石清美 大臣政務官)
・ドクターヘリの操縦士の養成、確保については、これまでの各運航事業者を中心とする取り組みのほか、防衛省の再就職支援による退職自衛官の活用や、国土交通省による、民間運航事業者が実施する養成への技術的な支援が行われていると承知している。厚生労働省としても、引き続き関係省庁とも協力しながら、ドクターヘリの安定的かつ効果的な運用が図られるように支援をしてまいりたい。
(松田まなぶ)
ドクターヘリの問題をあえて取り上げたのは、例えばスイスなどでは、民間の寄附によって賄われている部分が相当程度あり、年間30フランなので、、年間で3,000円程度、その寄附をした人々が人口の30%程度で、無償で提供を受けられる。こういった民間の志というものをうまく医療システムに活用する。日本では個人金融資産の大半を高齢者が持っており、亡くなった後、天国に持っていけるわけではないので、地域のため、あるいは地域の救命率を上げるために、自らの資産を生きたおカネとして活用していこうという方は、日本にもたくさんいらっしゃるはずである。
そのような意味で、ドクターヘリのランニングコストも医療保険の対象にして、自己負担分については、そのようないわゆるパブリックな仕組みをつくり、志で賄われる部分を創っていくのが、これからの医療の財源を確保していく上でも重要なモデルになる。ドクターヘリというのはわかりやすいと思うので、そのような観点も含めて、質問させていただいた。
政府は法案も出しているが、地域医療に対して地域の資源をどうやって活用していくかという、いろいろなモデルを日本で創っていかなければいけないと思うので、厚労大臣もぜひ、いろいろな面でのお知恵を出していただければと思います。