Q&A3919 FTするか迷っています | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 2023.12.26「Q&A3887 海外在住、日本でFTを行いたいです」で質問させて頂いた者です。ブログでの返信ありがとうございました。


帰国時に貴院でFTを行いたく、現在準備中なのですが、現在体外受精を行っているクリニックの医師に相談したところ、卵管が詰まっている場合、通しても、卵管の表面がダメージを受けている可能性があり、逆に子宮外妊娠のリスクが高まるのでお勧めしないと言われてしまいました。この意見に対する松林先生の見解をお聞かせ頂けますでしょうか。

男性不妊が第一因子なのですが、こちらでHycosyを行った結果、片側が通らなかったので、少しでも自然妊娠の可能性を上げたく、FTを希望しているのですが、担当医に上記のようなことを言われ、迷っています。主人の精液検査は、 精液量2.5ml、精子数1300万/ml、直進運動率40%、正常形態率3%でした。これで自然妊娠は不可能でしょうか。第一子は顕微授精で2年前に出産しました。私は第一子出産後、AMHが劇的に下がり、0.04しかありません。まだ今のところ、ほぼ毎月排卵はあるようです。

卵管の通りが悪い原因は、過去のクラミジア感染かと思います。男性不妊もクラミジアで起きることがあると耳にしたのですが、10年以上前の感染が今の精液の状態に影響していることはありますか。

 

A 医師は自らがやったことのない治療について否定的な発言をし、やらない方向に誘導する癖があります。FTは現在日本でしか実施できないオペであり、私がビデオ論文(2022.1.3「☆FTの簡単、迅速、安全な手術法:ビデオ論文」)を投稿した際に、査読者からなかなか理解してもらえず苦労しました。ビデオ論文の時点で、431名FTを実施し、105名が妊娠されましたが、子宮外妊娠の方はおられませんでした。

 

また、精液所見からは自然妊娠は不可能ではないが厳しい状況だと思います。人工授精(子宮内精子注入法)であれば、可能性は上がります。女性と異なり、男性のクラミジア感染は極めて一時的なものであり(尿道感染は尿の流出により自然排出されるため)、男性不妊の原因にはならないと思います。したがって、男性不妊の一般検査にクラミジア検査は含まれていません。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。