脱出性粘膜下筋腫の手術:ビデオ論文 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、脱出性粘膜下筋腫(筋腫分娩)の手術のポイントを示したビデオ論文です。

 

Fertil Steril 2023; 120: 920(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.07.009
要約:骨盤痛と性器出血を患う33歳の女性(出産2回、流産3回)が来院されました。臨床経過で不正確な診断が何度も発生し、症状の悪化につながりました。最終的に、膣内に大きく脱出する粘膜下筋腫であることが判明し(筋腫分娩)、妊孕性の温存を希望されたため、膣式切除術+子宮鏡手術を選択しました。手術のポイントは次の通り。

1 適切な術野確保(カメラにより助手も術野が見える状態にする)

2 筋腫茎のクランプにより術中出血を抑制(途中でより奥にクランプをし直す)

3 脱出筋腫を牽引しながらメスで細切(メスが膣壁に当たらないよう注意)

4 子宮頸管が確認できたところで、子宮頸管へバソプレシン局注し術中出血を抑制

5 子宮鏡観察+残存筋腫を子宮鏡下切除

6 子宮内バルーン挿入で止血+エストロゲン製剤投与で術後の癒着防止を図る

 

本患者は、術後8週で子宮内腔が綺麗になったことが確認できました。

 

解説:粘膜下筋腫は、性器出血、骨盤痛、帯下異常、不妊症などのさまざまな症状を引き起こす可能性があります。このタイプの筋腫は子宮頸管から脱出する可能性があり(筋腫分娩)、出血、感染症、敗血症などの重症化を避けるために、迅速な診断と手術が必要です。本論文は、脱出性粘膜下筋腫(筋腫分娩)の診断上の注意点と、低侵襲で子宮を温存する術式を紹介したビデオ論文です。