Q&A3829 常位胎盤早期剥離のため34週で死産 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 先月、体外受精で授かった第二子が常位胎盤早期剥離のため34週で死産になりました。第一子妊娠時にはHELLP症候群になり、緊急帝王切開でしたが母子共に無事でした。このため、妊娠28週までバイアスピリンを飲んでおり、妊娠経過は良好で突然の出来事でした。


35才1ヶ月の時の凍結胚盤胞がまだあるため、移植したい気持ちはあるのですが、私自身もDICになり危なかったため、迷っています。緊急帝王切開だったため、一年後妊娠出来たとしても出産時には39歳になってしまいます。胎盤剥離は再発リスクがあるとのことなのですが、次回妊娠した際に何か出来ることはないでしょうか。

 

A 産婦人科診療ガイドライン産科編2023「CQ308 常位胎盤早期剥離(早剥)の診断・管理は?」には次のように記載されています(要点のみを抜粋)。

1 早剥は、約1/100の頻度で発生する。

2 早剥のリスク因子は、早剥既往、妊娠高血圧症候群、切迫早産(前期破水)、外傷(交通事故など)である。

3 早剥の診断は早剥を疑うことから始まるが、典型的な症状を示すとは限らないので、胎児心拍モニタリングを行う。

 

HELLP症候群は妊娠高血圧症候群の亜型であるため、早剥のリスク因子になります。さらに今回早剥だったので、次回の妊娠でも早剥のリスク因子になります。残念ながら早剥に予防策はありませんので、早期発見しかできることはありません。疑わしい場合には、胎児心拍モニタリングを頻繁に行うことくらいしかできることはないと思います。また、日本では(添付文書に分娩予定日の12週間前までと記載されているため)バイアスピリンは妊娠28週までですが、海外では妊娠満期まで服用しています(36週あるいは出産まで)。妊娠28週以降は自費になりますが、バイアスピリンを継続しておいた方が良いと思います。超緊急帝王切開ができる病院での出産が望ましいです。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。