Q&A3820 妊娠高血圧症候群の疑い | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 貴院で第一子、第二子を授かりました。本当に感謝しています(現在第二子妊娠中33w5d)。

これまでも以下含む、多数の質問に答えてくださり、ありがとうございます。

2022.11.8「Q&A3474 変則的2段階移植 その2
2023.4.11「Q&A3628 変則版2段階移植で双子!?


結局、胎嚢はふたつ確認できたもののバニシングツインとなりました。33wの妊婦健診で妊娠高血圧症候群の疑いということで、通常の妊婦健診より多めに通院することとなりました。

①第一子のときは不育症検査で引っかかり、バイアスピリンを飲んでいました。これが妊娠高血圧症候群の予防になっていたと考えてよいのでしょうか。
②今回は妊娠後、子宮内に血溜まりができたため、バイアスピリンを途中で辞めて、止血剤を飲んでいました。これも妊娠高血圧症候群になった原因と考えられますか。
③そもそも妊娠高血圧症候群は年齢的に高くなったため、なったと考えられるでしょうか(第一子は41歳出産、第二子は43歳出産予定)。
④妊娠高血圧症候群は胎盤が上手く形成されていないからなるという説があると聞きました。だとすると、良好胚の移植であれば移植時の年齢は気にしなくてもいいのでしょうか(移植時の年齢より採卵時の年齢の方が重要なのでしょうか)。残りの凍結胚もあるので気になっています。

 

A 妊娠高血圧症候群の原因は、妊娠初期の胎盤形成不全(絨毛が子宮内膜に十分侵入しない)であると考えられています。したがって、胎盤完成の16週までが勝負です。妊娠高血圧症候群は第1子の際に最もなりやすいものです(特に男児の場合)。日本産科婦人科学会では、糖尿病、高血圧、腎臓病、肥満、40歳以上、家族に高血圧症、多胎妊娠、初産婦で妊娠高血圧症候群のリスクが高くなるとしています。過去の妊娠高血圧症候群もリスク因子とされていますが、次回の妊娠に向けてしっかり予防策を行うことで、ある程度回避できます。妊娠高血圧症候群の方は、次回妊娠の際にバイアスピリンを服用すると、そのリスクが低下します。また、妊娠高血圧症候群の一因として、抗リン脂質抗体があります。抗リン脂質抗体陽性の場合には、アスピリンとヘパリンを使用します。

 

①②その可能性は十分あります。
③④妊娠高血圧症候群のリスクは、移植時の年齢が増加することです。次回妊娠へ備えて、出産後に全ての種類の抗リン脂質抗体検査をお勧めいたします。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。