Q&A3678 PGT-A正常胚で臍帯卵膜付着 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q PGT-A正常胚移植(NGS法)により、40週で3100gの女児を出産しました。
出産後に胎盤を見せてもらうと、臍帯が卵膜付着でした。出産まで超音波検査等で、母子共指摘される問題なく、本当に有難かったです。

2023.5.17「PGTで生まれたお子さんの健康状態:国家規模のデータベース調査」の記事に、早産と前置胎盤の率が有意に高いとありますが、PGT-A検査時にサンプルを取ることが、私のように、臍帯や胎盤の形態異常のような影響を与えることは考えられますでしょうか。

 

A PGTで採取している細胞は胎盤になる細胞(TE細胞)ですので、胎盤の異常が増える可能性は否定できないかもしれませんが、現在のところその事実を確定的に示したデータはありません。2023.5.17「PGTで生まれたお子さんの健康状態:国家規模のデータベース調査」の記事では、早産と前置胎盤が有意に多くなることを示しており、2021.2.10「PGT-Aの母子への影響は?」でご紹介した論文では、HDP(妊娠高血圧)の有意な増加を認めています(ただし軽症がほとんど)。妊娠高血圧は胎盤の形成不全が原因であると考えられていますので、胎盤の異常とも言えるかもしれません。しかし、これらの研究は疫学研究(統計)あるいは後方視的研究であり、因果関係を示すものではありません。また、臍帯の卵膜付着は偶然生じるものと考えられています。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。