腸内細菌叢に詳しい、京都府立医科大学大学院 医学研究科 生体免疫栄養学講座教授「内藤裕二」先生のお話を紹介します。
医師協Mate 2023; 336: 7(日本)
要約:日本の14〜101歳の男女1,803人の糞便を遺伝子解析し、腸内細菌叢を次の5つのタイプに分類しました。
多い菌種 食事の特徴 健常者の割合
タイプA ルミノコッカス 高蛋白、高脂質食 4.9%
タイプB バクテロイデス バランスの良い三大栄養素 26.6%
タイプC バクテロイデス 炭水化物の多い食事 10.3%
タイプD ビフィズズ菌 高蛋白、高脂質、高糖質食 6.8%
タイプE プレボテラ 野菜、魚の多い食事 35.8%
欧米人の腸内細菌叢は3分類:B型(バクテロイデスが多い)、P型(プレボテラが多い)、R型(ルミノコッカスが多い)ですが、B型は日本人のタイプB+C、P型は日本人のタイプE、R型は日本人のタイプAに相当し、日本人に特徴的なタイプDを加えた5種類になりました。疾患罹患率が低く健常者の割合の高いタイプBとタイプEはバランスの良い食事により腸内環境が良好であると言えます。腸内細菌叢のタイプは食事によりわずか2週間で変化が可能ですが、元の食事に戻すとタイプも戻ってしまいます。タイプDのビフィズズ菌は善玉菌のイメージがありますが、健常者の割合が少ないことから、必ずしも善玉菌ではないことがわかります。むしろ、さまざまな食物を摂取し、腸内細菌の多様性を作ることが重要です。京丹後市は長寿のまちとして知られ、100歳以上の人口が全国平均の3.3倍もあります。京丹後市の住民の食生活は、まさにバランスの良い食事です。また、日本人4,200人で腸内細菌叢に影響を与える要因を分析したところ、服用中の薬剤の影響が最も高く、特に消化器疾患治療薬、糖尿病薬、抗菌薬が悪化要因となっていました。現在、食生活や生活習慣から「腸年齢」を求める計算式を作成中です。
解説:最近、腸内細菌叢(フローラ)や腸活が注目されています。食生活の内容は健康維持に欠かせないものであり、日本人はタイプBやタイプEを目指したバランスの良い食生活が望ましいと思います。また、薬剤は必要最小限にすべきであり、必要もないのにたくさんの薬剤を服用するのはいかがなものかと思います。