Q&A3325 43歳、採卵20回、移植21回、治療のやめ時は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 40歳から不妊治療をはじめ、現在43歳10ヶ月。間もなく44歳を迎えようとしております。今回「治療のやめ時」について質問させてください。

治療履歴
1院目:低刺激での採卵5回→4個分割胚+7個胚盤胞を移植(計11個)→3回化学流産、8回陰性
2院目:高刺激での採卵4回→2個分割胚+8個胚盤胞を移植(計10個)→1回化学流産、3回陰性
3院目:低刺激での採卵11回→10個胚盤胞をPGT-A検査→8個異常胚、2個検査中

2院目はリプロにて1年間お世話になりましたが、結果には至りませんでした。最初から着床不全関係の検査はすべて網羅。ERPeak検査を行い、ズレなしという結果だったのでその通り移植しましたが陰性、その後は着床の窓が狭いのでは?ということで、胚のサイズ、成長速度を加味したタイミングで移植し、1度は着床しましたが、その後同じ方法で移植しましたが、残念ながら陰性で終わりました。この時点で、(1院目分も含め)21個の胚を移植していて結果が出ていないので、それ以降は着床前診断での採卵を続けています。年齢的に10個に1個正常胚が出てきてくれればよいと頭では理解してますが、現在着床前診断の結果は8個すべて異常胚(しかもいづれも複数個所でのエラー)。現在検査中の2個から正常胚が出てくれることに望みをかけていますが…

現在AMH1.71、生理3日目のFSHは10~12位で、低刺激でも毎周期複数個採卵でき、1周期につき凍結できる胚盤胞は1つで効率悪いですが、グレードもAAx3、ABx2、CBx3…と年齢にしては悲観的になる卵巣機能ではないとは思っています。ただいかんせん、グレードが悪くなくても異常胚ばかりでは、移植に進めず困っています。このような治療実績でも、胚盤胞ができるうちは採卵を続けていれば、いつかは正常胚が現れ、妊娠、出産に至れる可能性はあると思いますか。松林先生でしたら、どうしますか。私自身は、これまで累計30個近くも移植もしくは検査しても結果が出てない実績を見ると、いくら卵子が取れ、胚盤胞までできるとは言え、これから正常胚ができる可能性はかなり絶望的なのではないか、と思わずにはいられません(40~43歳の卵子でダメなのに、44歳でできるのだろうか?という気持ち)。卵子が取れなくなってきた、胚盤胞まで育たなくなった、と物理的に厳しい状況になっていれば、まだ諦めがつくのですが、ほぼ毎回低刺激でも複数個採卵でき、1つですが胚盤胞まで育ってくれています。自分の中ではまもなく迎える44歳の誕生日まで、とも思っているのですが、これまで1,000万円以上も不妊治療に費やして、一人も産めないというくやしさに「(自分で決めた)辞め時」を揺さぶられます。とても困る質問かとは思いますが、率直なご意見をお聞かせいただければ幸いです。

 

A 40歳から4年間、休みなくずっと走り続けてきたのだと思います。文面から推察すると、着床障害(子宮因子)ではなく、受精卵の染色体異常による不妊症であるものと考えられます。正常胚がどうしたらできるかに明確な答えはありませんが、刺激薬剤(HMG製剤)を変えることで、劇的に正常胚が増える方がおられるのも事実です。したがって、これまでに実施していない刺激方法、刺激薬剤の組み合わせでの採卵をお勧め致します。

 

治療のやめ時の線引きは人それぞれですが、誕生日、年末、年度末、金銭的な上限までなど様々です。どれが良い、どれが悪いということはありませんが、ご自身で納得できる治療終結が重要だと思います。すなわち、やり切った感、出し切った感です。

 

なお、このQ&Aは、約3週間前の質問にお答えしております。