内科的流産処置が上手くいく条件 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、内科的流産処置が上手くいく条件に関する検討です。

 

Hum Reprod 2022; 37: 936(オランダ)doi: 10.1093/humrep/deac048

要約:2018〜2020年にオランダの17病院で妊娠初期流産(6〜14週)と診断され、1週間の待機療法後に自然排出しなかった方351名を対象に、ミフェプリストンの前処置の有無によるミソプロストールの有効性についてランダム化試験を実施しました。また、内科的流産処置が上手くいく条件についても併せて検討しました。ミソプロストールによる内科的流産処置の成功率は68.9%でした。内科的流産処置が上手くいく条件として、ミフェプリストンの前処置(オッズ比2.69)、BMI(オッズ比1.08)、処置前の出血や腹痛あり(オッズ比2.35)、既往子宮内処置回数(オッズ比0.61)の4つが抽出されました。この結果をもとに、内科的流産処置が上手くいく確率のモデルを作成しました。

 

解説:妊娠初期流産は全妊娠の10〜28%になります。年間の妊娠数は全世界で2億2700万件ありますので、流産は2〜6千万件に上るものと推計されます。流産の対処法には、待機療法(自然排出待ち)、外科的処置(手術)、内科的処置(薬剤)の3つがあります。待機療法では、1週間以内に最大50%の方が自然排出をします。欧米では内科的処置としてミソプロストール単独療法がしばしば行われます。ミソプロストールによる内科的流産処置の成功率は54〜84%と幅がありますが、その処置が上手くいく条件に関する検討はなされていませんでした(日本ではミソプロストールは保険適用外のため使用できず、外科的処置のみになります)。また、ミフェプリストン(本邦未承認)の前処置を行なってからミソプロストールを用いると成功率が58%から80%に増加したとの報告もあります。本論文は、このような背景のもとに行われたランダム化試験であり、内科的流産処置が上手くいく条件を検討したところ、ミフェプリストン前処置あり、BMI高値、処置前の出血や腹痛ありと正の相関既往子宮内処置回数と負の相関があることを示しています。海外での患者さんの治療選択の際の指標になるものと考えられます。