ダブルトリガーは卵巣刺激で正常反応にも高反応にも有効 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、ダブル(デュアル)トリガーは卵巣刺激で正常反応にも高反応にも有効であることを示しています。

 

Fertil Steril Rep 2021; 2: 314(米国)DOI:https://doi.org/10.1016/j.xfre.2021.05.008

要約:2013〜2018年に採卵し、新鮮単一胚盤胞移植を実施する35歳未満の女性290名を対象に、アンタゴニスト法で卵巣反応に合わせたフレキシブル刺激を行い、トリガーにはルクリン40mg+hCG 1500IUを用いました。採卵数30個以上を高反応(32〜41個)、30個未満を正常反応(17〜24個)と定義し、2群間を後方視的に比較しました。2群間の臨床妊娠率(69.3% vs. 67.0%)と出産率(60.0% vs. 60.5%)に、有意差を認めませんでした。黄体補充にはプロゲステロン50mg/日を用い、コースティング、カベルゴリン、バイアスピリンは用いませんでしたが、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は1例も認めませんでした。

 

解説:ダブル(デュアル)トリガーは、卵巣刺激が高反応の場合に有効であることが知られていますが、卵巣刺激が正常反応の場合については明らかにされていませんでした。本論文は、ダブルトリガーは卵巣刺激で正常反応にも高反応にも有効であることを示しています。ただし、本論文の正常反応群では17〜24個の卵子が回収できており、高反応と言っても良いものです。驚くべきことは、最大41個の卵子が回収できた方も含め、1人もOHSSがなかったことです(しかもOHSSの予防策は全く行っていません)。トリガーにルクリンを用いていることが良い方向に作用したのだと思いますが、不思議です。

 

なお、新型コロナ以降ルクリンは製造中止している模様であり、輸入がストップしています。