Q&A3043 29歳、AMH 3.6、胚移植10回不成功 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 29歳、AMH 3.6、窓ズレ+2・3日(日付診)、男性不妊(精子無力症:運動精子総数採卵①1330万、採卵②1326万)これまでに、A院で移植6回、B院で移植4回しています。今後の移植について先生のご意見をお聞かせください。

A院
採卵1回目…アンタゴニスト法による採卵(採卵数33個、前核期12個・胚盤胞12個凍結)
移植1~6回目…ホルモン補充(エストラーナテープ、ルトラール)による移植(4AA、4AB、4AB、4AB+3AA、3AB+3AB、3AB+3AB、移植順)→全て陰性(尿検査判定)

セカンドオピニオン(移植5回目陰性時)
CD138・子宮鏡で慢性子宮内膜炎陽性→ビブラマイシン、フラジールで2ヶ月治療後再検査陰性
ビタミンD、銅亜鉛検査欠乏→医療用サプリメント摂取3ヶ月、再検査で基準値サプリ継続中

B院(胚移送)
転院後CD138再検査陰性、窓ズレ+2・3日判明(日付診)
移植7回目…排卵周期(ルティナス膣錠、ルトラール、プロギノーバ排卵後補充)による+2日移植3BB、ダクチル服用、移植日子宮内HCG注入→hCG 1.36(BT9)
移植8回目…偽閉経療法3週間の後、ホルモン補充(エストラーナテープ、ウトロゲスタン、ルトラール、プロギノーバ)による+1日初期胚移植8cell+7cell(前核期融解培養)、ダクチル・タクロリムス服用、移植日子宮内HCG注入→陰性
移植9回目…偽閉経療法3週間の後、自然周期(ルティナス膣錠、ルトラール、プロギノーバ排卵後補充)による+1日移植4BB(前核期融解の再凍結胚)+3AB+3AC、ズファジラン・小児用バファリン服用、3日目に初期胚代用として子宮内HCG注入→hCG 9(BT11)
採卵2回目…移送胚が無くなった為アンタゴニスト法による採卵(採卵数20個、初期胚2個(移植用)、胚盤胞5個凍結)
移植10回目…採卵周期(ルティナス膣錠、ルトラール、DEX、プロギノーバ移植後補充)による3日目新鮮胚移植桑実胚+7cell、アトシバン点滴、小児用バファリン服用、採卵日子宮内HCG注入→陰性

A院含め移植は全てAHA有りです、タクロリムスはTh1/Th2が基準値内だったため9回目以降服用していません。移植9回目胚盤胞3個移植で初の着床となりましたが、再凍結胚が当日収縮していたこともあり移植できたのは1.5~2個と仮定しています。
 

移植9回目の後医師と立てた仮説は以下の通りです。
①自然周期が合っている
②移植後の黄体の上がりが悪い(移植9回目のBT11 P4=7)のでA院での移植は黄体不足だった
③窓ズレが起きているので日付の修正が必要
④前核期融解の胚盤胞達成率が悪い&再凍結胚の収縮が起きるので凍結操作に弱いのではないか
⑤残りの移送胚で移植したためグレードが低い
⑥移植後の子宮収縮による?腹痛がひどいのは着床に影響があるのでは。今までダクチルやズファジラン、小児用バファリンで対応してきたが変化なし
⑦慢性子宮内膜炎再発
移植10回目は、①③④⑤の対応として新鮮胚移植、②の対応としてDEXの追加、⑥はアトシバンを移植当日とBT2に点滴、⑦は採卵前のCD138で陰性。結果陰性に終わり仮説に修正が必要となりました。

医師からは「その若さでここまで着床しないのはもっと根本的な原因があるのでは」と今後の対策として、ERAで窓ズレを再検査、私自身大腸ポリープの治療歴があり子宮鏡では見つけられない隠れポリープを疑い子宮内全面掻爬を行う予定です。

素人の考えでは次回の移植は9回目の移植にならい、DEXとアトシバンの追加、卵のグレードが良いものを2個移植すれば結果が得られるのではと思っていますが見立てとしてはいかがでしょうか。今後の移植、対策含め先生ならどのようにされますか。ERAの結果次第ではありますが、7回目が+2日で1.36、9回目が+1日で9でています。hCGの値としては微量ですが、窓は+1〜2日の方向性で合っていると思いますか。それとも成功法と考えるには判断が早いでしょうか。

2回目の採卵結果は、新鮮胚移植を予定していたためD13で採卵となり(採卵日E2=3200、P4=12.25)採卵1回目と比べ未熟卵が多く、グレードも4は1つしか得られませんでした。リプロでは着床不全の患者に対して2段階移植を行っている印象ですが、現在のクリニックでは金銭面、卵の消費数からみて最終手段とし、あまり積極的には勧めていません。しかし、実施できる貯胚はあります(6cell、8cell、5日目4AB・3AC・3BB・3CB、6日目4BC、前核期融解培養の再凍結胚4BC)。また、今後不育症の可能性が出てくるのが怖いため不育症専門のクリニックで検査を受けるべきか悩んでいます。過剰検査・治療でしょうか。

 

A 確かに、29歳で胚移植10回不成功はおかしいです。根本的な原因が修正できていないものと考えます。着床の窓については、日付診はあまりに不正確すぎるため、信用できません。ERA検査かERPeak検査を実施するのが良いでしょう。その上で、最もhCGの数値が出た移植9回目の方法で移植するのが良いと思います。それでも上手くいかない場合には、移植時の胚のスピードを考慮します。また、せっかく妊娠しても流産になってしまうと振り出しに戻ってしまうので、不育症検査は実施しておいたほうが良いと考えます。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。