本論文は、自然排卵周期移植のE2値と妊娠成績に関する検討です。
Hum Reprod 2021; 36: 1932(米国)doi: 10.1093/humrep/deab111
要約:2013〜2018年に初めて自然排卵周期で自己卵による胚盤胞移植を実施した方を対象に、卵胞期の長さ(LHサージまでの日数)・E2>100の日数と妊娠率・出産率の関連を後方視的に検討しました。卵胞期の長さ(15日以下と16日以上)による妊娠率・出産率に有意差を認めませんでしたが、E2>100の日数による妊娠率・出産率には下記の通り、有意差を認めました。
全症例
E2>100 4日以下 5日以上 オッズ比(信頼区間)
妊娠率 65.6%(690/1052) 70.9%(595/839) 1.30(1.07〜1.59)
出産率 46.6%(490/1052) 52.0%(436/839) 1.24(1.03〜1.50)
PGT-A正常胚
E2>100 4日以下 5日以上 オッズ比(信頼区間)
妊娠率 68.3%(218/319) 75.0%(237/316) 1.42(1.00〜2.01)
出産率 55.5%(177/319) 63.9%(202/316) 1.45(1.05〜2.00)
また、一度妊娠が成立してしまえば、E2>100の日数による妊娠経過に影響はありませんでした。
解説:ホルモン補充周期による凍結胚移植では、胚移植までのE2ホルモンの補充日数が28日以下であれば妊娠成績に影響はありませんが、29日以降(特に35日以降)の出産率が有意に低下することが報告されています。また、自然排卵周期による凍結胚移植では、卵胞期が8日以下(=排卵日10日以下)で妊娠率が低下することが報告されています。しかし、卵胞期が延長した場合の妊娠成績に関する検討はこれまでありませんでした。本論文は、このような背景の元に行われた研究であり、単なる卵胞期の長さではなく、卵胞期のE2>100の日数が5日以上の場合に妊娠成績が有意に良好であることを示しています。これは、良い排卵があった周期には、良い着床環境ができることを(間接的に)示しています。
下記の記事を参照して下さい。
2019.6.28「ホルモン補充周期による凍結融解胚移植における移植日までの最適な日数は? その2」
2018.5.22「☆ホルモン補充周期による凍結融解胚移植における移植日までの最適な日数は?」