ホルモン補充周期による凍結融解胚移植における移植日までの最適な日数は? その2 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、ホルモン補充周期による凍結融解胚移植における移植日までの日数を検討したものです。

 

Fertil Steril 2019; 111: 1177(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.02.024

Fertil Steril 2019; 111: 1117(フランス)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.04.007

要約:2012〜2017年に自己卵によるPGT-A正常胚ホルモン補充周期で凍結融解胚移植した1439名を対象に、妊娠成績に影響する因子を後方視的に検討しました。移植日までの日数は、妊娠率、着床率、流産率、出産率、出生時体重、低出生体重率に対して有意な影響はありませんでした。ただし、エストロゲン補充日数増加は、在胎日数の有意な減少を認めましたが、早産率増加には至りませんでした。黄体ホルモン補充に膣剤・経口剤・筋注製剤の同時使用により出産率と着床率の有意な増加を認めましたが、流産率には有意な変化を認めませんでした。同様に、4BC以上のグレードの胚移植により出産率と着床率の有意な増加を認めましたが、流産率には有意な変化を認めませんでした。

 

解説:ホルモン補充周期による凍結融解胚移植は、常に一定の条件が構築できるため、いつ移植日を設定しても問題ないと考えられていました。しかし、2018.5.22「☆ホルモン補充周期による凍結融解胚移植における移植日までの最適な日数は?」でご紹介した論文では、胚移植までのE2ホルモンの補充日数が28日以下であれば問題ありませんが、29日以降(特に35日以降)の出産率が有意に低下することを示しました。また、これは流産率増加によるものでした。

 

本論文は、ホルモン補充周期による凍結融解胚移植における移植日までの日数を正常胚で検討したものであり、E2ホルモンの補充日数は出産率には影響せず在胎日数の短縮に影響することを示しています。コメントでは、E2やP補充日数の変化による胎盤形成の変化について検討が必要であるとしています。

 

また、本論文は、黄体ホルモン補充に膣剤・経口剤・筋注製剤の同時使用により出産率と着床率の有意な増加を認めています。リプロでは、開院当初より黄体ホルモン補充に膣剤・経口剤・筋注製剤の同時使用を実施していますので、これがリプロの妊娠率が高い一つの理由である可能性があります。