最近読んでよかった本 その124 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

最近読んでよかった本を簡単に紹介します。

なお、紹介の順番は五十音順にしています。

 

私のブログでは月2回本の紹介をしています。

何故本を紹介しているかについては、2016.9.29「「最近読んでよかった本」の新たな効能?「ニュートラルな気持ち」へ!」をご覧ください。

 

 

「さよなら的レボリューション(再見阿良)」東山彰良

弁当工場でバイトしながら三流大学に通う「高良伸晃」。中学時代は引きこもりで、高校時代は単位だけ取って不登校。大学では中国人の女子「陸安娜」に恋をしたがフラれ、北京へ2週間の短期留学。北京で知り合った日本人女子「土方麻里」に惚れ、しかしそのまま帰国。土方に会うため今度は上海へ。土方にもフラれ、知り合いだった「柳沢聡」と一緒に盗難車の回収作業を行うことになる。回収の途中、何もない中国の砂漠地帯で自分を見つめ直す高良。ダメ男の初恋の暴走を描いた青春小説です。ダメ過ぎて嫌気がさしますが、テンポ良く読めます。本作の次の「流」で直木賞を受賞したため、「流」の前哨戦のような作品と言われています。

 

 

「月の上の観覧車」萩原浩

人生の半ばを迎え、あるいは峠を少し越えて人が想うこと、自分のでこぼこした半生や共に暮らす伴侶のこと、久しく会わなくなった幼い頃の友のこと、やり遂げたこととやり残したこと、救われた気持ちや裏切られた切なさなど、誰しもが振り返り改めて思うことのあれこれを、当人になり代わり優しく語る短編が8編。一生懸命生きてきた人々の「今」に焦点をあて、その意味を教えてくれます。物語の主人公の現在や思い起こす過去のどれかに、必ずやあなたの人生と重なる感慨を発見するでしょう。

 

 

「ぼくが宇宙人をさがす理由」鳴沢真也

2013年の「第59回青少年読書感想文全国コンクール」課題図書。落ちこぼれだった宇宙少年「鳴沢真也」は、不登校、ひきこもり、つまずきの連続。そんな鳴沢が、世界15カ国の科学者たちのリーダーになり、前代未聞の大作戦「宇宙人さがし」にとりくむ。「夢をあきらめない」ことの大切さを説く、優秀な課題図書的な作品です。

 

 

「魔力の胎動」東野圭吾

本書は「ラプラスの魔女」シリーズ第2作ですが、「ラプラスの魔女」の前日譚になります。成績不振に苦しむスポーツ選手2名、息子が植物状態になった水難事故から立ち直れない父親、同性愛者への偏見に悩むミュージシャン。彼等の悩みを知る鍼灸師「工藤ナユタ」と物理現象を予測する特殊な力を持つ「羽原円華(うはらまどか)」は、悩める4人に光を取り戻します。そして、いよいよ「ラプラスの魔女」に繋がります。

「ラプラスの魔女」については、2019.2.6「最近読んでよかった本 その62」を参照してください。

 

 

「リセット」垣谷美雨

47歳の高校時代の同級生3人は、東京のデパートで開催中の故郷「兵庫県青海町」の物産展で偶然出会い「遠来の客」という名の居酒屋で昔の話をする。女優になりたかったが平凡に結婚し二人の子供を産み、平凡な専業主婦になり、夫や子供の世話にくたびれ、夢を諦めきれない「香山知子」。頑張って勉強し、頑張って会社での地位も得たが、母親に「女の幸せは結婚して子供を産む事だ」と褒めてもらえない、独身で恋人のいないビジネスウーマン「黒川薫」。早々に妊娠して高校中退したが、結局流産し男に捨てられたために毎日安い時給で働き詰めのヤンキーのような「赤坂晴美」。「遠来の客」の店員は「追加のご注文は、高校3年生でよろしいですか?」と尋ねる。店員が「30」を入力すると、、、30年前の17歳、高校3年生にタイムスリップしてしまうのであった。3人それぞれが昔夢見ていた、これまでとは全く違う人生を歩み直すのだが、、、大人を経験してから見る子供の世界は全くの別世界。それぞれが満足した世界を過ごすのか、元の世界に戻りたいと願うのか。人生の「リセット」について考えさせる作品です。垣谷美雨の第2作目ですが、とても良い作品だと思います。