深部子宮内膜症の腹腔鏡手術:ビデオ論文 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、深部子宮内膜症(DIE)の腹腔鏡手術を実施したビデオ論文です。

 

Fertil Steril 2021; 115: 1084(イタリア)doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.11.004

Fertil Steril 2021; 115: 913(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.02.034

要約:31歳の妊娠歴のない女性が、非常に強い月経痛、排尿障害、排便障害、性交時疼痛、不妊症を主訴に来院されました。内診、超音波、MRI検査を実施したところ、膀胱子宮内膜症直腸右側の異所性腺筋症様病巣と診断しました。腹腔鏡手術により、両者の摘出を行ったビデオを供覧します。可能な限り神経を温存しつつ根治術を実施しました。術前から投与していたGnRHa製剤は、術後3ヶ月で中止し、その2ヶ月後に自然妊娠が成立しました。妊娠経過は良好で、経膣分娩で問題なく出産に至りました。術後および出産後の月経痛や排尿障害、排便障害、性交時疼痛は全て消失しました。なお、病理検査により良性の内膜症組織であることを確認しています。

 

 

解説:深部子宮内膜症(DIE)の腹腔鏡手術は極めて難易度の高いものであり、安易に行える訳ではありません。本論文は、DIEの腹腔鏡手術を鮮やかに実施したビデオ論文です。術後すぐに自然妊娠が成立しており、まさに絵に描いたようなサクセスストーリーです。

 

コメントでは、症状のないDIEは手術のメリットは定かではないこと、このような侵襲的な手術はオペに伴うリスクが高いことから、ART治療(体外受精、顕微授精)に軍配が上がるのではないかとし、手術をする場合には慎重な姿勢で臨んで欲しいとしています。