最近読んでよかった本 その115 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

最近読んでよかった4冊を簡単に紹介します。

なお、紹介の順番は五十音順にしています。

 

私のブログでは月2回本の紹介をしています。

何故本を紹介しているかについては、2016.9.29「「最近読んでよかった本」の新たな効能?「ニュートラルな気持ち」へ!」をご覧ください。

 

 

「ある閉ざされた雪の山荘で」東野圭吾

早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女7名。これから舞台稽古が始まる。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇だ。だが、1人また1人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑が生まれた。はたしてこれは本当に芝居なのか。はたまた本当の殺人なのか。ミステリー定番の「閉ざされた山荘」ですが、東野圭吾が書くと、一味違う「謎だらけの山荘」になります。お得意の叙述トリックが巧妙です。

 

 

「億男」川村元気

兄の借金の肩代わりをしたことで、妻とは別居し家族がバラバラになってしまった「一男」は、借金返済のために昼は図書館司書、夜はパン工場で働いていた。ある日、一男は3億円の宝くじが当選し億万長者となり、借金返済に夢膨らますが、ネットを覗くと大金を手にした人の悲劇ばかりが目につく。不安に駆られた一男は、大富豪となった学生時代の親友「九十九」のもとを訪ねる。15年ぶりの再会に一男はすっかり酒に酔っていてぐっすりと寝てしまっていた。酔いつぶれた一男が目を覚ますと九十九は3億円とともに姿を消していた。一男は九十九の行方を追いながら、大金をめぐり家族や友情のあり方を探していく。お金とは何なのか?人間が自分達の意思でコントロール出来ない事は「死ぬこと、恋すること、そしてお金」。お金は人の「信用」を形にした物だから、人を信じて生きていくしかない。考えさせる作品です。2018年に映画化されました。

 

 

「ミスターグッドドクターを探して」東山彰良

1977年のアメリカ映画「ミスターグッドバーを探して」のタイトルをもじった作品。医師の転職を斡旋する「株式会社医師転職サポート会」に勤める「国本いずみ」32歳は、元クラブホステス。クライアントはロクでもない医師ばかり。社長は仕事もせずに競艇狂い。露出狂、臓器売買、突然死など、いずみの担当の医師に不穏な事件が続けて起きる。いずみは親友でクラブホステス時代の同僚の「沢渡絢子」とともに、事件の真相を追い始める。病院、ヤクザ、クラブを巻き込んだお話が4話。医療の裏側の世界を書いた異色の作品です。

 

 

「モダンタイムス」伊坂幸太郎

本書は、「ゴールデンスランバー」と同時期に執筆されたため、似たようなテイストがします。また「魔王」の続編でもあり、三作品共通のテーマが底辺に流れています。あるワードを検索すると痛い目にあう、その理由を解明しようとする主人公とその周囲の人物達が、得体の知れない組織に巻き込まれていくというストーリー。 恐妻家の主人公「渡辺拓海」は「勇気は実家に忘れてきました」と言う。嫉妬深く暴力的な妻「渡辺佳代子」は「善悪なんて見る角度次第」だと。殺し屋の「岡本猛」は「勇気はあるか?」と問う、政治家「永嶋丈」は「本当の英雄になってみたかった」、作家の「井坂好太郎」は「人生は要約できねえんだよ」と。キーワードは「そーいうことになっている」。伊坂ワールド満載の不思議な作品ですが、読みごたえ十分、面白いです。なお、「ゴールデンスランバー」は、2017.2.5「最近読んでよかった本 その24」で、「魔王」は、2020.2.22「最近読んでよかった本 その87」で紹介しました。