☆35歳以上の女性の自然妊娠の確率 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、35歳以上の女性の自然妊娠の確率を調査したメタアナリシスです。

 

Hum Reprod 2020; 35: 1808(オーストラリア)doi: 10.1093/humrep/deaa129

要約:2018年7月までに発表された論文で、35歳以上の女性の自然妊娠の確率を検討した9論文、4379名を対象に、メタアナリシスを行いました。月経周期が正常で1年間妊娠していない夫婦を対象に、一般妊娠検査を実施し、その後1年間無治療で追跡調査を行なったものです。なお、調査対象の夫婦は体外受精や人工授精をしないのはもちろんですが、卵管の手術や排卵誘発剤も使用しないものとしました。妊娠は429名(9.8%)で認められ、原因が判明した方(男性因子、卵管因子、子宮内膜症、免疫因子)と比べ、原因不明の方で最も妊娠率が高くなっていました。1年間不妊の女性がその後の半年あるいは1年で妊娠する確率は下記のように計算されます。

 

     過去に妊娠なし     過去に妊娠あり

年齢   半年   1年     半年   1年

35歳   15%   24%    18%   29%

36歳   15%   25%    19%   30%

37歳   15%   25%    19%   30%

38歳   14%   23%    18%   28%

39歳   13%   21%    16%   25%

40歳   11%   18%    13%   22%

41歳    9%   15%    11%   18%

42歳    8%   13%     9%   15%

 

解説:世界中の先進国で晩婚化が進んでいます。このため、妊娠治療を受ける夫婦も激増しています。治療による妊娠率のデータはありますが、治療をしなかった場合のデータは不足しています。本論文は、このような背景の元に行われた研究であり、35歳以上の女性の自然妊娠の確率を調査したメタアナリシスです。おそらく、皆さんの予想よりも高い確率で妊娠が成立していると思います。このデータは治療を待っている間の自然妊娠や治療集結後の自然妊娠を目指すメリットが十分あることを示していますので、治療していない間も夫婦のスキンシップを取られることをお勧めします。

 

下記の記事を参照してください。

2020.7.27「性交回数が多い方が妊娠する:日本人での検討

2018.5.21「☆不妊治療をお休みしている時の自然妊娠の確率」年間約24.5%(38歳以下の女性、精液所見が良好)

2014.5.29「☆☆妊娠には「ニュートラルな気持ち」で!

2013.3.3「☆第1子顕微授精出産後の自然妊娠の確率は?年間約2%(若い女性)

2013.2.26「☆第1子体外受精出産後の自然妊娠の確率は?」全体で約20%(34歳未満の女性、精液所見が良好)