Q&A2634 41歳、5回妊娠して5回流産 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 41歳、5回妊娠して5回流産
 

自然周期の分割胚移植で妊娠するも3回連続判定日のhCGが30前後です。なぜ毎回hCGが低く流産になってしまうのでしょうか。橋本病でチラーヂンを飲んでいますが、不育症検査は異常なし、胎児染色体検査の結果は13トリソミーや18トリソミーでの流産です。年齢のせいなのでしょうか、それとも不運が続いただけなのでしょうか。心拍確認も3回ありますが10週までに心拍が弱くなり停止します。アスピリンやヘパリンなどは使ったことはありません。もう希望がもてず前を向けません。

 
精子についてなのですが、流産を繰り返す理由として精子のDNAが損傷していて流産を繰り返すということは考えられないでしょうか。胎児染色体検査の結果、数の異常の為、構造の異常はないと言われたのですが、染色体が正常かどうかと精子の質とは別ですよね。私側の検査をしても何も出てこないので夫の精子を調べてみたくなりました。DNAの欠損の検査などはどこの施設でも出来るのでしょうか。質を改善することはできるのでしょうか。また、精子の状態ですが今通ってる病院の前の病院では奇形や運動率に問題があり顕微レベルでしたが、とくに何をしたわけではないのに現在の病院では精子の成績は体外受精レベルになりました。病院ごとにやり方が違うのですか。不思議でした。
 

A このような場合には、(不育症ではなく)異常胚も着床してしまう「着床促進」の可能性があります。「着床促進」を打開するためには、受精卵の染色体診断(PGT-A)を行うしかありません。現在、日本産科婦人科学会でPGT-Aが順次認可されているようですので、病院でご相談ください。また、不育症の検査が全て網羅されているか、不育症専門病院で今一度確認が必要です。

 

最近、流産の要因として男性因子もありえることが報告されています。現在、精子のDNA損傷は様々な方法で検査が可能です。こちらは男性不妊外来(泌尿器科)でご相談ください。精子のDNA損傷の修復には、抗酸化剤サプリが有効である可能性があります。

 

「着床促進」については、下記の記事を参照してください。

2015.1.10「☆新しい不育症の考え方:着床促進 その2

2014.12.13「☆新しい不育症の考え方:着床促進

 

精子の状態と流産の関係については、下記の記事を参照してください。

2020.5.25「☆精子のDNA損傷は卵子が修復する

2019.7.27「☆精子の状態が流産に影響する その2

2019.7.25「精子の状態が流産に影響する その1

2019.4.23「☆精子のDNAフラグメントが胚発生に及ぼす影響

2016.2.27「精子にはやはり抗酸化剤が有用

2014.2.26「☆精子にはやはり抗酸化剤が有効:これまでのまとめ」

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。