抗精子抗体陽性の場合の妊娠治療 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、抗精子抗体陽性の場合の妊娠治療に関する検討です。

 

Hum Reprod 2020; 35: 1288(イタリア)

要約:1994〜2017年男性の抗精子抗体が陽性(>50%)だった方108名を対象に、フーナー検査の成績とその後の妊娠予後について後方視的に検討しました(電話インタビュー)。84名(78%)のデータが獲得でき、抗精子抗体(MARテスト)55〜99%の40名と100%の44名の2群に分けて検討しました。結果は下記の通り。

 

MARテスト       100%      55〜99%    P値

自然妊娠での出産率  4.5%(2/44)  30.0%(12/40) 0.00001

人工授精での出産率  36.8%(14/38) 26.9%(7/26)  NS

顕微授精での出産率  46.7%(7/15)  83.3%(5/6)   NS

 

なお、自然妊娠での出産率に有意に寄与する因子は、MARテストが100%でないこととフーナー検査の成績でした。

 

解説:抗精子抗体出現のメカニズムについては明らかにされていませんし、抗精子抗体が陽性の取り扱いについても様々な見解があります。男性の抗精子抗体は、精液検査の際にMARテスト直接イムノビーズテストで検査され、治療方針も定まっていませんでした。本論文は、男性の抗精子抗体陽性(MARテスト>50%)の場合の妊娠治療に関する検討を行ったものであり、自然妊娠とフーナー検査との相関人工授精の有用性を明らかにしています。後方視的検討ですので結論は導き出せませんが、MARテストの有用性(活用性)に期待が持てます。

 

下記の記事を参照してください。

2016.4.6「Q&A1052 男性の抗精子抗体陽性
2013.8.17「抗精子抗体」