元サッカー日本代表監督「岡田武史」さんのお話から | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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新年明けましておめでとうございます。

新年の挨拶として「何事もプラス思考で、今できることをやる」というお話をご紹介させていただきたいと思います。

 

株式会社今治.夢スポーツ 代表取締役会長「岡田武史」さん

愛媛県今治市にあるFC今治は、2019年からリプロがオフィシャルパートナーになったサッカーチーム。今年、2020年、JFLからJ3(Jリーグ)に念願の昇格を果たしました。FC今治の代表はかつて日本代表監督を務めた岡田武史さん。先日、岡田さんのお話を聞く機会がありました(メモを取っていた訳ではありませんので、私の解釈も含まれています)。

 

1 生物的組織

「生物と無生物のあいだ」という本を書かれた生物学者の「福岡伸一」さんから学んだのは、「今日の身体と明日の身体は違う。古い細胞が死んで新しい細胞が入ってきて、そして一緒のものを作る。しかし、このときに脳は全く命令をせず、細胞同士が隣の細胞と連絡し折り合いをなして、まったく一緒の形を作っている」ということ。脳=監督はいなきゃいけない。しかし、監督は試合中には何も手助けできないから、ピッチでは選手同士が折り合いをなしてプレーする。いちいち「こういう場合はこうしろ。こういう場合はこうしろ」って命令しなくても、選手同士で折り合いをなしていく組織。そういう組織が一番強いんじゃないかと思います。この際に一番大事なのは個々(選手)の共通認識です。共通認識があれば、皆同じ方向に向かっていけます。共通認識が持てない方(選手)は自然に脱落して行きますから、最終的にはまとまった組織ができます。

 

2 困難は与えられた試練、それを乗り越えると次のステージにいける

人生全て思い通りに行く訳ではありません。職場にも顧客にも面倒臭い方が必ずおられます。このような時「厄介だな、面倒だな」と思わず「神様が今乗り越えるべき課題を与えてくれたのだ」と考えて、前向きに対処してください。そうすれば、それを乗り越えた時に次のステージの自分が誕生します。選手には調子の良い時も悪い時もあります。調子の悪い時こそ、頑張って乗り越えると道が開けます。どんなに苦しい状態が続いても、それは必要なものなんです。逃げ出さないで必死にやっていれば、必ず次の高い場所が待っています。

 

3 ブラックパワー

これまでのW杯サッカーで日本がベスト16に入ったのは、2002年日韓大会(トルシエ監督)と2010年南アフリカ大会(岡田監督)と2018年ロシア大会(西野監督)の3回しかありません。日韓大会は開催国のアドバンテージがあるため(予選突破に強豪国が当たらない配慮があるらしい)除外して考えると、南アフリカ大会とロシア大会はどちらもスター選手がいない「弱いチーム」とされていたチームです。このようなチームはマイナスの力をはねのける瞬発力を爆発させることがしばしばあります。火事場の馬鹿力みたいなものです。私はそれを「ブラックパワー」と呼んでいます。でもその欠点は、効果が長続きしないことです(ベスト16止まり)。

 

4 今できることをやる

当たり前ですが、今の自分にできること以上はできないし、今の自分の全てを出す以外にやれることはありません。勝負の鉄則に「無駄な考えや無駄な行動を省く」ということがあります。考えてもしょうがないことを考えてもしょうがない。「負けたらどうしよう」負けてから考えろ。「ミスしたらどうしよう」ミスしてから考えたらいい。できることは足元にある。それをやらないと、目標なんか達成できません。

 

5 自分で山を作れ!そうすれば遺伝子にスイッチが入る

今の日本は、何でも至れり尽くせりで、衣食住ともに満ち足りた生活が当たり前のようにできます。平和な社会、冷暖房完備、24時間営業のコンビニ、救急外来、ネット検索、ネットショッピング、、、何の苦労もなく生きていけます。いわば人間が家畜化しているような状態です。このような社会では、緊張感もなく、堕落した人生を歩む若者が増えても致し方ないのではないでしょうか。昔は、人生普通に生きて行くだけで、苦労の日々、毎日が試練の連続でした。今は、試練を自らの手で作らなければ「乗り越えるべき山」ができません。昔から、生きるために必要な遺伝子はちゃんと存在しているのですが、危機的状況にならなければその遺伝子は活躍しません(働きません)から、スイッチが常にオフになった状態です。このスイッチをオンにする一つの方法が、自然界に自らを放り出すことです。私達は実際に、海山川での自給自足生活(野外学校)のサポートも行っています。また、自らが自分の手で乗り越えるべき山を作ることも重要です。リーダーの資質で最も大事なのも「自分が登るべき山を持つ」ということです。どうマネジメントしようかとか、ハウツーを考える前に、必死になって山を登り、その姿を見た人たちが惹かれて付いていくのだと思います。

 

コメント:妊娠治療を長くされている方にはマイナス思考の方が少なくありません。また、ずっと先のことを考える傾向があるように思います。反対に、すぐに卒業される方は、プラス思考かつ先のことを考えない方が多いようです。「今回妊娠しなかったけれども、次は大丈夫、自分が妊娠する番だ」と前向きになることが大切だと思います。

 

下記の記事を参照してください。

2019.3.6「最近読んでよかった本その64」「天使は奇跡を希う」七月隆文の舞台はまさに今治