ターナー症候群の卵巣凍結 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、ターナー症候群の卵巣凍結を調査したものです。

 

Fertil Steril 2019; 111: 1217(デンマーク)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.02.003

Fertil Steril 2019; 111: 1124(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.03.018

要約:デンマーク、英国、オーストラリアの3カ国でターナー症候群の女性15名(5〜22歳)を対象に、卵巣凍結を実施し、卵胞の有無を後方視的に検討しました。悪性腫瘍により卵巣凍結を実施した女性42名(1〜25歳)対照群としました。ターナー症候群の女性の60%(9/15)で卵胞が確認でき、78%(7/9)で対照群と同程度の卵胞密度がありましたが、異常形態卵胞が多く存在しました。卵胞に特徴的な6個の蛋白の発現は対照群と同程度でしたが、透明帯に発現する蛋白は異常でした。卵胞液中のE2とテストステロン濃度は低下し、AMHは増加していました。1名の卵巣組織から得られた卵胞31個を培養したところ、5個(16%)が成熟卵になり、6個(19%)が変性卵でした。

 

解説:ターナー症候群は、およそ1/2000の頻度で認められる性染色体異常です。45,Xが47%と最も多く、45,X/46,XXが17%と続きます。このうち15〜30%の方では、月経(生理)が自然に起こり思春期が訪れます。しかし、卵巣機能は著しく低下しており早発閉経に至ります。一方で、2〜7%の方では自然妊娠があります。ターナー症候群の方の卵胞は15/47〜8/9で存在したとの報告があり、モザイクの場合に月経(生理)が自然に起こることが多いとされています。卵胞がない可能性が高いのは、45,X、低AMH、高FSH、思春期欠如であることが知られており、最終的にはドナー卵子の治療になります。本論文は、ターナー症候群の卵巣は6割で卵胞が確認できますが、異常卵胞が多いことを示しています。コメントでは、ターナー症候群の患者さんへの対応策のフローチャートを提示しています。

 

下記の記事を参照してください。

2019.3.30「ターナー症候群:卵巣刺激による採卵
2016.12.2「Q&A1292 娘がターナー症候群です

2016.4.25「ターナー症候群の自然妊娠率は?

2013.7.25「ターナー症候群とAMH」
2013.6.25「ターナー症候群の妊娠」