子宮内膜症の痛みには経口アンタゴニスト製剤が有効 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、子宮内膜症の痛みには経口アンタゴニスト製剤が有効であることを示しています。

 

N Engl J Med 2017; 377: 28(米国)doi: 10.1056/NEJMoa1700089

要約:2012〜2014年にカナダと米国の151箇所で実施したEM1スタディーと、2013〜2015年に5カ国187箇所で実施したEM2スタディーでは、それぞれ2種類の経口アンタゴニスト製剤の6ヶ月投薬(Elagolix 150mg/日および200mgx2回/日)とプラセボ群を用い、疼痛に関する治療効果を投薬終了後6ヶ月まで前方視的に検討しました。EM1とEM2スタディにはそれぞれ872名と817名の方がエントリーし、653名(74.9%)と632名(77.4%)の方が全ての調査を網羅しました。3ヶ月投薬後の段階では、EM1スタディのElagolix 150mg/日投与で46.4%の方、200mgx2回/日投与で75.8%の方の月経困難症(生理痛)が改善し(プラセボ群では19.6%)、EM2スタディのElagolix 150mg/日投与で43.4%の方、200mgx2回/日投与で72.4%の方の月経困難症(生理痛)が改善しました(プラセボ群では22.7%)。また、生理期間以外の疼痛は、EM1スタディのElagolix 150mg/日投与で50.4%の方、200mgx2回/日投与で54.5%の方の月経困難症(生理痛)が改善し(プラセボ群では36.5%)、EM2スタディのElagolix 150mg/日投与で49.8%の方、200mgx2回/日投与で57.8%の方の月経困難症(生理痛)が改善しました(プラセボ群では36.5%)。なお、痛みの減弱効果は6ヶ月間持続しました。また、プラセボと比べElagolix投与群では、軽度から中等度のホットフラッシュ、脂質増加、骨塩量低下を有意に認めましたが、子宮内膜への影響はありませんでした。

 

解説:経口アンタゴニスト製剤(Elagolix)による月経困難症の治療は、Phase 2スタディーまで終了しており、本論文はPhase 3スタディーです。Elagolix 200mgx2回/日投与では完璧なエストロゲン低下を招くことが知られています。本論文は、Elagolix 150mg/日投与で十分な疼痛緩和作用があることを示しています。

 

下記の記事を参照してください。

2018.4.22「子宮腺筋症の治療について:薬物療法