HMG製剤の比較についての論文が発表されましたのでご紹介します。大変参考になると思います。
Mebio 2016; 33: 94(日本)国立医薬品食品衛生研究所
要約:現在、日本で市販されているHMG製剤には次のものがあります(FSH:LH比):テイゾー(1:1)、フェリング(1:1)、富士(3:1)、TYK100(1:1)、TYK75,150(1:0.005)ゴナピュール(1:0.0053以下)、フォリルモン(1:0.0053以下)。また、FSH製剤には、ゴナールエフ(1:0)、フォリスチム(1:0)があります。HMG製剤の蛋白質含有量、SDS-PAGEによる不純物プロファイリング、ELISAによるFSH、LH、HCGの濃度測定を行いました。結果は下記の通り(どの製剤がどれであるかは実際の論文でもブラインド表示になっています)。
HMG製剤 A B C D E F G
FSH(IU/mL) 123 105 262 142 180 129 132
LH (IU/mL) 0.098 0.135 0.014 13.7 0 0 0
HCG(IU/mL) 5.9 5.4 7.6 17.8 0.029 0 0
蛋白濃度(μg/mL) 100 11 44 358 241 11 11
不純物 ++ - + +++ ++ +- +-
解説:HMG製剤は閉経後の女性の尿から精製されたものであり、日本薬局方の規格に適合していれば、品質は製薬会社に委ねられています。日本薬局方では、バイオアッセイによるFSHとLHの活性の測定と、FSH活性に対してLH活性は1以下とされていればOKです。このような大雑把な取り決めであるため、各社のFSH:LH比が異なるわけです。本論文は、各種HMG製剤の蛋白質含有量、不純物プロファイリング、FSH、LH、HCGの濃度測定を行ったところ、驚くほどの違いがあることを示しています。FSH 100 IU/mLが表示された活性単位に相当しますので、100に近いほど活性と濃度に差がない、つまりFSHの純度が高いことを意味します。逆に100から多いほど濃度はあるけれども活性が弱いわけです(CE製剤)。また、ABCD製剤にはもともとLHが含まれているのですが、HCGも含まれています。特にD製剤にはかなり大量のHCGが混入しています。したがって、ABCD製剤の使用中にHCG採血をするとわずかに検出されます。不純物の量は蛋白濃度と比例しており、余分な蛋白質が含まれている製剤は、HMGそのものではないアレルギー反応が懸念されます(ADE製剤)。なお、当院で使用している製剤は、測定されたFSH:LH比から、アレルギー反応の少ないBCFG製剤だと思われます。当院では、その方の年齢とAMHをベースに、その時のFSHとLH値からFSH:LH配合比をバランスよく組み合わせた薬剤を選択しています。
FSH製剤とHMG製剤については、下記の記事を参照してください。
2017.7.27「☆FSH製剤 vs. HMG製剤」
2015.4.8「体外受精の卵巣刺激にはFSH製剤よりHMG製剤」
2015.2.14「☆卵巣刺激にはLHが必要」
2015.1.7「卵巣反応不良の方へ新しい刺激の試み」
2014.12.30「☆最適な刺激(LH/FSH=0.3~0.6)」