イノシトールと亜鉛の関係について質問がありましたので、論文を検索してみました。
J Trace Elem Med Biol 2014; 4: 414(米国)doi: 10.1016/j.jtemb.2014.08.011.
要約:世界の人口の1/5の方は亜鉛欠乏症に悩まされています。これはシリアルやレギューム(マメ科植物のさや)にフィチン酸が多く含まれているためです。フィチン酸過剰摂取による亜鉛不足を認識せずに、亜鉛摂取を続けている場合には、隠れ亜鉛欠乏症の診断は容易ではありません。血清亜鉛濃度よりも鋭敏な指標は血清フェリチン濃度(<20μg/L)です。米国で隠れ亜鉛欠乏症の症例報告がなされましたが、どちらもシリアルなどのフィチン酸摂取量が多い食事が原因でした。また、どちらも除脂肪体重、思考力、記憶力、免疫力の低下が顕著に認められました。採血だけではわからない部分を見極めるために、食事摂取調査の重要性を認識させられます。
解説:フィチン酸は、ミオイノシトールに六つのリン酸基が結合した化合物であり、植物のリンの貯蔵庫として機能し、未精製の穀物や豆類に多く含まれます。フ ィチン酸は金属イオンのキレート(除去)作用が強く、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛を始めとして多くの金属イオンと強く結合します。これは、ミオイノシトールにも共通して認められる作用です。フィチン酸は、金属イオンのキレート作用により、腸管での酸化ダメージを減らすことで大腸癌の予防に寄与する可能性が指摘されています。なお、大豆や玄米にはフィチン酸が多く含まれ、亜鉛などのミネラルをキレート結合して吸収を妨げます。つまり、イノシトールと亜鉛の同時服用は、亜鉛の吸収を妨げる可能性が否定できませんので、別々の時間帯で服用する(イノシトール毎食後、亜鉛就寝前)のが良いでしょう。
下記の記事を参照してください。
2017.8.14「☆銅亜鉛と着床の関係」
2015.9.19「Q&A824 玄米食はミトコンドリアの毒?」