自然周期融解胚移植における黄体補充 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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自然周期融解胚移植における黄体補充について、hCGの有用性を検討したものです。

 

Hum Reprod 2017; 32: 1130(香港)

要約:2013〜2015年自然周期融解胚移植(day2胚)を行う方450名を対象に、day2とday8にhCG1500単位を投与するhCG群と、day2とday8にに生理食塩水を投与する対照群の2群にランダムに分け妊娠成績を比較しました。妊娠率、着床率、流産率は両群間で同等であり、有意差は認めませんでした。なお、day8でのE2とP4濃度は、両群間で有意差を認めませんでした。また、多変量解析により、妊娠率との関連を唯一認めた項目は、移植胚の個数でした。

 

解説:刺激周期の新鮮胚移植において、黄体補充が出産率を有意に改善することが、Cochraneレビューに明記されています。また、その際の黄体補充として、hCGと黄体ホルモンの有用性は同等であることが報告されています。採卵周期では卵胞を吸引するために、体内から供給されるホルモンが低下することが、その理由であると考えられています。一方、自然周期融解胚移植における黄体補充については賛否両論があり結論が出ていませんでした。本論文の研究はこのような背景の元に行われ、自然周期融解胚移植における黄体補充としてのhCGの有用性は否定的であることを示しています。