Q&A1141 約20回移植してうまくいきません | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 第2子希望
夫の精子の運動率が低く(平均25%程度)、それまで人工授精5回不成功で体外受精に進むも、良好胚を3回以上移植しても着床しませんでした。Th1/Th2比検査をしたところ高いことがわかり、タクロリムスを試し、その周期初めて着床(凍結初期胚2個移植し2個とも着床)、両方とも心拍確認できたものの、一人は成長が止まってしまい、一人は無事出産に至りました(39歳)。

第2子を考え始め40才で通院再開し、第1子を妊娠した時と同じ方法で体外受精を繰り返したものの全く着床しません。2回程ホルモン補充を行いましたが、内膜が厚くなりにくいようで、一度は移植中止、一度は着床せず。他の原因をつぶしたいと考え、別の病院でエンドトキシン検査を行うも陰性。転院し新鮮初期胚、凍結胚盤胞移植するも着床せず。元の病院に戻り子宮鏡検査をした所、慢性子宮内膜炎の所見があるとのことで、抗生物質を服用し、内膜炎治癒後移植も着床せず。恐らく20回近く移植して、タクロリムスの服用量も第1子の時より倍以上増やして試し続け、うっすらとでも反応があったのは1回だけです。

先生のブログを拝読し、亜鉛、ビタミンDのサプリも自主的に摂取しておりますが、着床には至りません。ホルモン値などは特に問題なさそうで、採卵もセロフェン5日間服用とゴナールエフ225を1日おきに3回か4回程で、コンスタントにG2程度の受精卵が毎回4~6個は出来ます。内膜損傷は試していないため、通院先に行って頂けないか聞いてみたところ、主治医はあまり効果を認めていないようで、積極的には行っていないようです。基本的に8分割胚移植です。今週期胚盤胞で試しましたが、グレードも悪く、陰性に終わってしまいました。高齢のため、そろそろ治療を諦めなければと思っていますが、なかなか諦めきれず、悩んでおります。諦めるためにも、出来る策は全て打って挑みたい気持ちがありますが、先生は内膜損傷の他に原因不明の着床不全で何かアイディアはございますでしょうか。

A 下記の4つを検討してみてください。当院ではオプション検査と称しています。
1 まず、慢性子宮内膜炎は、子宮内膜のCD138細胞を染色しなければ診断がつきません。つまり子宮鏡で治療の可否を判断することはできませんので、まず慢性子宮内膜炎検査のやり直しが推奨されます。
2 銅亜鉛およびビタミンDについては、濃度の調整が必要ですので、ただ単に服用しただけでは足りているかどうかわかりません。採血をしてください。
3 子宮収縮検査を着床期に行ってみてください。本来は着床期には子宮収縮がないはずですが、ある場合には妊娠成績低下になります。
4 不育検査は着床障害の検査ではありませんが、着床後早期の受精卵の拒絶の可能性を潰すために行います。

また、妊娠率アップのオプションとして、内膜損傷(スクラッチ)以外に、SEET、G-CSF、エンブリオグルー、2段階移植などがありますので、こちらもぜひトライしてみてください。