地中海型の食事は精子に良い | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

地中海型の食事は種々の慢性疾患のリスク低下が報告されています。本論文は、地中海型の食事は精子に良いことを示しています。

Hum Reprod 2015; 30: 2945(スペイン)
要約:2010~2011年に男子大学生215名(18~23歳)について、食事と精液所見についての横断調査を行いました。大きく分けて、地中海型(野菜、フルーツ、シーフード)西洋型(加工食肉、フライドポテト、スナック菓子)の2つの食事パターンが認められました。地中海型の食事は、総精子数と正の相関を、西洋型の食事は正常形態精子と正の相関を示しました。しかし、肥満男性では西洋型の食事は精子濃度と負の相関を示しました。

解説:近年、男性の精液所見が悪化しており、1934~1996年の間に、欧州では2.3%、米国では0.8%の精子濃度が減少しています。欧米の食生活も悪化しており、高カロリー、高糖質(炭水化物)、高脂肪食が進んでおり、精液所見悪化の原因ではないかと考えられています。一方、地中海型の食事は健康に良いという報告が多数あります。しかし、これまで地中海型の食事が精子に良いか否かについてはこれまで明らかではありませんでした。本論文だけでは結論的なことは言えませんが、本論文は地中海型の食事は精子に良いことを示しています。

生殖医療の分野に限らず、食事調査は欧米のものばかりであり、日本からの報告は全くありません。日本食は健康に良いと欧米でブームになっていますが、果たして本当に良いのかについては、日本からの情報を発信していく必要があります。地中海型の食事は日本人向きだと思います。一方でオランダの食事はあまりに質素(簡素)で味気ないものですが、妊娠に向いているとされています。

下記の記事を参照してください。
2012.11.8「☆妊娠中の栄養と出生児の健康:Barker仮説、DOHaD」
2012.12.23「妊娠を目指す女性にはオランダの食事」
2013.3.19「お魚は内膜症の方にもお勧め」
2015.5.4「☆子宮内環境は食事で変わる」