男性は加工肉を控え鶏肉を食べましょう | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、男性の肉食と体外受精の成績について検討したところ、男性の鶏肉食は受精率増加、加工肉食は体外受精の受精率低下くになることを示しています。

Fertil Steril 2015; 104: 972(米国)
要約:2007~2014年に体外受精を行った141組246周期について、肉食調査を行い、体外受精の成績との関連を前方視的に検討しました。鶏肉食は受精率と正の相関を認めました(下位1/4は65%、上位1/4は78%)。体外受精の場合のみ、加工肉食は受精率と負の相関を認めました(下位1/4は82%、上位1/4は54%)。しかし、顕微授精では加工肉食摂取と受精率に一定の傾向は見られませんでした。全体の肉食、個別の肉食の程度と着床率、臨床妊娠率、生産率には有意な関連を認めませんでした。

解説:男性の食事が精液所見に影響を与えることについては、多くの報告があります。特に、肉食が精液所見を低下させることが知られています。お肉には飽和脂肪酸が多く含まれること、環境汚染物質(化学物質)が含まれることが知られています。本論文のグループは、加工肉食による健常男性の精液所見の低下を報告しています。これまで肉食と体外受精の成績に関する論文は発表されていませんでした。本論文は、男性の鶏肉食は受精率増加に働き、加工肉食は体外受精の受精率低下に働くことを示しています。なお、顕微授精では精子を選ぶことができるため、加工肉食による受精率低下がみられなかったものと考えます。

脂肪酸と精子については、下記の記事を参照してください。
2015.2.19「脂肪酸の採り方で精子の運動率が変化する」
2014.4.11「トランス脂肪酸は精子に悪い」