食事と精子の関係については、これまでにもいくつかの論文をご紹介してきました。本論文は、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取量が多い食事、不飽和脂肪酸摂取量が少ない食事では精子の運動率が低下することを示しています。
Fertil Steril 2015; 103: 190(イラン)
要約:2012~2013年に妊娠治療のため病院を訪れた107名の男性(20~40歳)と対照群235名の食事調査を行いました。精子無力症(精子運動率低下)は、総飽和脂肪酸(1.85倍)、総トランス脂肪酸(2.53倍)、パルミチン酸(1.90倍)、ステアリン酸(2.13倍)摂取量が多い場合に有意に高く、オメガ3不飽和多価脂肪酸(0.68倍)、DHA(0.53倍)が多い場合に有意に低くなっていました。
解説:不健康な食生活として、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取量が多い食事、不飽和脂肪酸摂取量が少ない食事があります。このような食生活では、肥満、心血管疾患、糖尿病、癌の罹患率が高くなり、オメガ3不飽和多価脂肪酸、DHA、EPAの多い食事ではこのような疾患のリスクが低下します。本論文は、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取量が多い食事、不飽和脂肪酸摂取量が少ない食事では精子の運動率が低下することを示しており、精子の運動率にも全く同じ原則が成り立つことになります。食生活は健康のみならず、精子にも極めて重要な要因と言えます。
脂肪酸の摂取と精液所見については、下記の記事を参照してください。
2014.4.11「トランス脂肪酸は精子に悪い」
2012.11.11「オメガ3脂肪酸は男性にもお勧め」
2013.2.6「☆精子によい食事」