Q&A494 胚盤胞のグレードと染色体異常 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

2014.9.3「☆胚盤胞のグレードと染色体異常」の記事は、極めて反響が大きく、沢山の質問を頂きました。

Q1 染色体正常胚のみを選択して移植できるということですか。凍結胚の着床前診断が可能ということでしょうか。

Q2 44才、染色体が正常な卵子がもうひとつも残っていない可能性もあるのでしょうか。もちろんすべてを取り出して調べるわけにはいかないので、100%の正解は分からないことは承知しております。しかし、何か手がかりになる情報はないのでしょうか。AMHが年齢の割りに高ければ遺伝子の正常な卵子が残っている可能性が高いとった論文はあるのでしょうか。

Q3 形態学的評価の高い胚盤胞は染色体正常率が高く、最良56.4%、不良25.5%と約25%の差があるということは、成長スピードは関係なくとも、AAに比べるとCCはやはり妊娠に辿り着かない可能性が高いということですか。

Q4 形態学的評価のいかなる項目も着床能には影響しないとは、ICMとTEを指していると考えて良いですか。一般的にはTEが重要と考えられていますが、その考えが覆されるという事でしょうか。

A1 胚盤胞のTE(胎盤になる部分)による着床前診断は、技術的に可能です。米国などでは実施できますが、日本では行われていません(産婦人科学会が個別に審議して認められた場合のみに着床前診断を実施してよいとされていますが、胚盤胞のTEを調べているのではなく分割胚の割球診断だと思います)。

A2 44才でしたら、染色体が正常な卵子がもうひとつも残っていないことはないと思います。しかし、もともと染色体異常の卵子が受精して異常胚になる場合と、染色体正常な卵子が受精の段階で異常胚になる場合があります。このため、あくまでも胚での診断が必要になります。

A3 その通りです。AAの方がCCより染色体が正常である確率が2倍になりますので、妊娠に結びつく可能性も2倍になります。重要なのは、CCでも妊娠すれば大丈夫であるという事実です。

A4 統計学的な有意差が得られなかったのだと思います。もっと多くの症例で分析すれば、おそらくTEとの関連が出るのではないかと思います。