松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。


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時間はかかったもの、「亜鉛と不育とプロテインS」について調べた甲斐がありました。この調査のきっかけになった質問をご紹介したいと思います。こちらも、たいへん示唆に富んだ内容です。新たな発見はこいうところから生まれるのではないかと思います。

Q 妻37歳、夫44歳、原因不明、治療歴2年
最初の質問
1回目の採卵:低刺激、4つ採卵、2つ授精、新鮮胚移植で失敗、凍結できず終了。
2回目の採卵:中刺激、10個採卵、7個授精、全部胚盤胞凍結目指しましたが2個凍結(4BCと3AB)、残りは8分割1つと桑実胚4つで破棄でした。
顔だけのアトピーを持っていること、日光過敏、まれに関節が痛いなどから、SLEかと思い、念のため不育症の一般検査をしましたら、プロテインS活性が45%で基準値以下でした。その他にはNK活性細胞が17%で基準値以下でした。膠原病関係は念のため内科でも検査しましたが異常値はありません。その後のプロテインS活性は51%でした。
もうひとつ気になるのが、内科で検査した値です。ALP 83(基準値は115~)、中性脂肪、Cl、血色素量、ケトン体(+)が低く、NT-pro BNPが高くなっていました。ALPは調べたら140未満で亜鉛不足 低値でマグネシウム不足 細胞の再生不良 とありました。また中性脂肪や血色素量が低く、ケトン体が+というのは、栄養不足というのも見かけました。亜鉛が不足してたんぱく質が作れないからでしょうか。
①ALPはたんぱく質の生成にかかわるそうですが、プロテインSと関係があるのでしょうか。
②亜鉛を摂取して、もしくはその他の方法で、プロテインS活性の値がよくなるということはありえますか。
③ALPが低い=亜鉛欠乏、が不妊の原因となりますか。
④日本国内で亜鉛のサプリは10mg~15mgが主流のようですが、海外では30~50mgというのもあります。亜鉛欠乏ということを考慮して摂取するとしたらどれぐらいまでOKですか。
*1回目と2回目の採卵の間にマルチミネラルのサプリ(亜鉛10mg含む)を3ヶ月服用しています。

2回目の質問
2013.11.7「☆亜鉛と不育とプロテインS その1」の記事を見て
 新横浜の杉先生に診ていただき検査をやり直しましたが、プロテインS活性については70%で異常は見られませんでした。うれしいことですが、本当に理由がまったくなくなりました。改善されたのか以前の検査値が間違えだったのか分かりませんが、キチンとした検査をされているところだと思うので、信用していいと思っています。
 溝口クリニック(栄養専門のクリニックです)で検査を受け栄養療法を受けています。その時の検査結果が、血清亜鉛 76 μg/dL、血清銅 224 μg/dL、亜鉛/銅比率が0.33と異常値でした。松林先生の記事を元にwilson病について調べたところ、他の数値は正常値なのでwilson病ではなさそうですが、銅と亜鉛については似たような数字が出ています。やはり、何かありそうなニオイがしますね。今栄養学の先生にみてもらっていますので、数値が正常化するのを待つしかないでしょうか。サプリだけではなくキレーション療法というのも試してみたいなと思っています。
 なお、先日融解胚移植をしましたが、5ABの良好胚で陰性に終わりました。
 西洋医学の先生ならなおさらかもしれません、栄養療法なんて眉唾物と思っていましたが、一概にそうとも言えないのかもしれないですね。主治医は割と淡々と治療をこなすタイプで栄養のことを話してみましたが自分は専門外、いいと思うならやってもいいんじゃないというテイでしかとりあってくれませんでした。近くであれば松林先生のところに通いたいぐらいです。治療がコツコツと長くなりそうですが、裏付けが多少でもあれば、希望を持って頑張って続けられそうな気がします。

A 亜鉛の血中濃度 76 μg/dLは若干少ないです。亜鉛はALPと連動しますので、ALPを測定することで、亜鉛の増減を推測することができると思います。プロテインS活性は正常になっていますが、亜鉛が不足するとプロテインSの直接経路が働かなくなりますので、血液凝固抑制作用が減弱し、血液凝固に向かいます(2013.11.11「☆亜鉛と不育とプロテインS その2」を参照してください)。また、妊娠中はプロテインS活性が低下します。30~50ポイント減少しますので、現在70%だからといって安心できる数値ではありません。
亜鉛が不足していますので、サプリメントで補うメリットがあると思いますが、どの程度必要かについては、血中濃度を測定しながらの調節が必要でしょう。栄養素の吸収力には個人差があるからです。

サプリメントの類いについて、一般に医師は否定的見解あるいは無関心の方が多く見られます。私の学生時代、医学部の授業にサプリメントに関するものは一切ありませんでした(現在もないように思います)。つまり、単に知識が欠如しているからではないかと思います。今でこそ私も、このような論文に関心があり読んでいますが、単純に美味しい食事や栄養に興味があるからであって、私のような存在はかなり特殊なのではないかと思います。しかし、食事や生活習慣など私たちにできることは限られています。「知識がないからできなかった」というのは悲しいですので、これからも多くの論文に目を通して何でも貪欲に吸収していきたいと考えています。その内容については、勿論ブログを通じて皆様に還元していきますので、これからもおつきあいの程、宜しくお願い致します。

なお、中性脂肪、Cl、血色素量、ケトン体、NT-pro BNPがわずかに変化したとしても、毎日の変動の範囲内ではないかと考えます。これらの検査データと不妊、不育についての論文は、現在のところありませんでした。
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