☆☆着床率を上げる方法(NSAIDsとCOX) | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

胚移植が反復不成功の場合に着床環境を改善するために試みられている方法として、下記のものがあります。

1 SEET法
2 エンブリオグルー
3 G-CSF子宮内注入法
4 スクラッチング


このうち1と2に関しては、既に下記の記事で紹介していますので、そちらを参照してください。
1 2013.6.2「SEET法」
2 2013.9.19「☆エンブリオグルー」

3と4はまさにNSAIDsとCOXからみた着床率改善策になります。キーポイントは、子宮内膜の局所的な炎症反応を起こすことです。

3 G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)子宮内注入法
 本法は、胚移植の前に炎症性サイトカインであるG-CSFを子宮内に注入する方法です。G-CSFそのものが炎症性サイトカインですから、当然ですが子宮内に軽い炎症を惹起させることができます。本法は、子宮内膜を厚くする効果も報告されています。したがって、子宮内膜が薄い方も本法の対象になります。

4 スクラッチング
 スクラッチングは、胚移植の前に子宮内に器具をそっと挿入することで、子宮内に軽い炎症を惹起させる方法です。紹介した4つの方法の中では最も簡便で安価な方法であり、最近世界中で行われるようになりました。しかし、スクラッチング法がなぜ有効か、いつ、どんな方法で行うのが最適なのかについては、明らかにされていません。

また、2段階胚移植法も着床環境を改善する方法のひとつで、これが「着床率を上げる方法」の元祖といってよいと思います。ただ、この場合は胚が2個子宮に入りますので、ふたごの確率が高くなります。そのため、1回目から行なわれることはありません。初めに入れた胚が子宮内の環境を整え、後に入った胚の着床を助けるのではないかと考えられています。この考え方が、SEET法に発展したわけです。つまり、最初に入れる物は胚でなく培養液で良いのではないかという発想に基づいています。

スクラッチングは一番新しい方法ですが、スクラッチングの有効性が確実にあるとすれば、SEET法もG-CSF子宮内注入法も2段階胚移植法も、胚盤胞移植前に子宮内に器具が入ることが重要ではないかという考え方ができます。つまり、それぞれ培養液やG-CSFや胚が必須なのではなく、機械的な刺激が必要なだけかもしれません。少しでも着床率をアップさせるために、(デメリットがなければ)様々な方法を取り入れていきたいと思うのは、患者さんも私たちも一緒です。そのためには、最新情報に常に目を光らせていることが必要ではないでしょうか。

NSAIDsとCOXからみた着床率改善策である理由については、下記を参照してください。
① 2013.11.3「☆NSAIDsとCOXとは? 基礎編」
② 2013.11.5「☆NSAIDsは着床を妨害するのか?」
③ 2013.11.6「☆アスピリンを飲むのが心配です」