高校生の意識調査 その2 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、不妊症の知識がスウェーデンの高校生にどの程度あるか調査したものです。

Reprod Health 2012; 9: 6
要約:スウェーデンの247名(女性101名、男性146名)の高校生に不妊症についての質問に回答してもらいました。将来子供が欲しいと考えている女性は97%、男性は95%で、女性は2~3人欲しいと考えていますが、男性は2人欲しいと考えていました。女性の年齢が何歳頃から妊娠率が低下するかという問いには、男女とも37.5歳と回答しましたが(正解は35歳)、妊娠の可能性が現実的でなくなる女性の年齢はという問いには女性が44歳、男性が47.5歳と回答しました(正解は43歳まで)。体外受精の成功率はどれくらいあるかとの問いには、女性は45.2%、男性は49.5%と回答しました(正解は30%)。種々のライフスタイルが妊娠に及ぼす悪影響について尋ねたところ、「淋菌感染•運動不足が要因となり得る」で正答率が低くなっていました。人工授精を許容するのは、10点満点で尋ねたところ、女性が6.6、男性が4.3養子縁組を許容するのは、女性が6.2、男性が3.4子供を諦めるのもありと答えたのは、女性が1.8、男性が3.4でした。

解説:本論文は今年発表されました。このような研究が今なされ、論文が掲載される背景には、どの国でも若いうちからの生殖教育の必要性を認識し始めたからだと考えます。スウェーデンの高校生はかなり不妊症の知識があると思います。残念ながら、日本では性教育というと避妊の教育がメインです。女性の方が男性よりも子供を持つ事を強く望み、現実的であるというのは、どの国でも同じ傾向があります。高校生の頃から、人工授精、体外受精、養子縁組、子供を持たない選択、そして将来の人生設計について議論する機会を設けることが大切ではないかと思います。